神様の憂鬱
男は深いため息をついた。
見事なリンゴ型肥満の身体を椅子に沈める。
思わず抱えた頭は、毛根が死に絶えたのか、なめらかなゆで卵のようだ。
輝いている。
この男は、第27代創世神、クラウド・ゴッド。
彼のダメンジャーを生んだ「元凶」である。
そもそもダメンジャーの発足は、彼が「PandoraⅡ」という禁忌の箱を開けてしまったことに始まる。
「パンドラ」の神話同様、悪しきものが次々と飛びだし、下界へと降りて行った。
さらに質の悪いことに、今回は箱の底に「希望」が残ることもなく、悪しきものは形を無し、下界で暴れまわることとなった。
このままでは罪は免れない――。
そう考えたクラウドは、人間界の名簿から適当に3人を見繕い、宥めすかし、脅し、最後には泣き縋り、下界での対処を押しつけた。
それが、イヌ、ネコ、ウサギの3人である。
下界のサブカルチャーにいたく傾倒していたクラウドは、どうせならリアルにそれを楽しもう、と三人に戦隊物や魔法戦士的な要素を組み込もうとしているが、目下のところ、その目論見は失敗のようだ。
恰好好いコスチュームは目の前で引き裂かれ、獣耳は断固拒否された。
一生懸命考えた登場の台詞も、必殺技の名前も、特にネコやイヌは一言も口にしてくれていない。
ついこの間は下界の警察とかいう組織の世話になりかけていたし、その前には給料を要求された。
彼らをヒーローにしてからの数々のことを思い出し、クラウドはまた溜息をついた。
「…失敗だったなぁ」
クラウドの目線の先。
そこには下界を覘く鏡があった。
鏡の中で、三人のヒーローが今まさに敵を倒さんとしている。
「何が何でも、ジャージはやめておくんだった」




