プロローグ【夢】
いつも夢を見る。
幼い頃から同じ夢を繰り返し、繰り返しだ
満月の夜
見知らぬ学園の渡り廊下
旧校舎に1人
翠の髪が歩く度にさらりと揺らめく
翠と琥珀の瞳は何処かを見つめている
その視線の先には1つの黒電話
静かな静寂の中
鳴らぬ黒電話へと手を伸ばす
まるで電話を取れと言われているかのように自然と
" 駄目だ"
優しい声
だれのこえ?
知っている
しって、いる?
いったいだれの
ぼくは、だれ?
夢はそこで醒めるのだ。
「…………」
襖の隙間から入る朝日が顔に当たり、眉間にシワを寄せる。
もう春先だというのに、朝はまだ肌寒く毛布を手放せていない。
もう少し寝るか、と潜り込んだ布団の中に少し違和感を感じる。
抱きまくらとして置いておいた筈の大きな鮫のぬいぐるみがない。
むしろ自分が抱きまくらにされているような感覚…?
眉間にシワを寄せ布団をめくれば、腰あたりに回された腕と人の服に顔を埋める塊が見える。
もぞりと動く塊は頭を押し付けるように擦り寄る。
赤紫の癖っ毛な髪は擦り寄るたび、寝ている間についたのであろう寝癖がぴょこぴょこと動く。
「(いやまて、なんでこいつ人の布団で寝ている…?)」
ドスッ!!
「…ったぁぁ!?なに!?敵襲ぅ!?」
「……なんで僕の布団で寝てる。」
すやすやと眠るその頭に、勢いよくチョップして低い声で呟く。
「…輝。なぜ僕の部屋にいるの。」
「えー?そりゃ、おひぃのお隣の方がよく眠れるもーん♡」
キリッ!と音が聞こえそうなくらいキメ顔をする無駄に良い顔を片手で掴み、力を入れては溜め息をつく。
「あいだだだだだっ!?俺のイケメンな顔がぁっ!」
「朝からうるさい」
輝の顔から手を離し身体を起こすと、隣で喚く彼を放置し目を閉じる。
いつもの夢を思い出しながら再び溜め息をついた。
満月の夜
学園の渡り廊下
旧校舎に1人
何故か誘われるその場所にある"黒電話"
触れてはいけない
鳴りもしないその黒電話は
視線を逸らすことを許さず
その手にとれ
その声で
囁やけ
なにを?
ーーを
ーーーを
ーーーーを
僕に呟けと
誘われるように渡り廊下を進む
でも
手にとろうとした瞬間
優しい声で
困ったように
貴方の声が聞こえる
?
あなた、の?
いったい誰の
ダレ、の
あれを僕はしって
「おひぃ」
「………輝?」
輝の声が聞こえ目を開けた。
顔を覗き込むようにこちらを見つめる彼は視線を合わせながらニコニコと笑い、朝ごはん食べよ?と呟いた。
それに応答するように頷くと布団から出て部屋を出る。
チュンチュン…。と鳥のさえずる声を聞きながら縁側を歩き、空を見上げた。今日は天気がいい。
今日の朝ごはんはなんだろうか…と考えながらその場を後にする。
その背中を鋭い瞳で見る彼を見て見ぬふりをして




