29、五月祭一日目②
あーあ、もう我慢出来ねぇ
俺は腕輪から剣を出した。
教室は騒然とする。
「お前の使い魔にやられた分を返してやる!死ね!」
サン・カシエルは虎型の風使い魔に命令した。
「ぐがあああああ!!………!!」
虎の動きが止まり急に何かに怯えるような表情になる。
…なんだ?
「な!どうした!早くそいつの首を噛みちぎれ!」
何がおこったんだ…?でも確実に何かがあった…出なければこんなにも怯えるわけがない…
「おいおい、お客さん何をしている?」
そこに現れたのは我等のオッサン教師!ガルド先生だった!
俺はガルド先生のやっている事がすぐに分かった。それは殺気だ、殺気を放ったのだ。
相手が虎だとしても虎の気迫を凌駕する程の圧倒的な殺気を…
その証拠に虎は殺気を受けると襲いかかるはずが、動けなくなっている…
それともう一つ、ガルド先生を見るとすぐに虎が止まった理由が分かった。
ガルド先生は虎程度の動きなどねじ伏せられるほどの魔力を放っている。
虎は殺気と魔力の量で察したのだろう「襲い掛かれば殺される」と…
これは…圧倒的に強者のプレッシャーというやつだ。
「お客さん、お帰りください」
「ハッ!誰が帰るものか!私はこの娘を「お帰りください」」
ガルド先生がサン・カシエルをじっと見て言う。
一瞬怯むがサン・カシエルは言葉を続けようとする。
「お前も物分かりが「お帰りください」」
さらにガルド先生がプレッシャーを放ち言うと、サン・カシエルは「ぐっ…」と声を漏らし、叫んだ。
「コイツが先に仕掛けたんだ!」
サン・カシエルが俺を指差す。
「僕は目の前で強引に引っ張られる女の子を見ただけですがねぇ?」
俺は【僕】といい子ぶりながら答える。少し馬鹿にする口調で。
実際事実だしな。
周りの客も見ていたし…
「では、お帰りください」
ガルド先生は四回目のお帰りくださいを言った。
「私は!カシエル家当主だぞ!?物分かりが悪いな!死にたいのか!?」
あらら、そう来たか。家の名前で圧倒作戦、でもガルド先生は…
「そうですか、じゃあ、お帰りください」
「な!お、お前言ってる意味が「帰れっつってんだよ」」
「次同じ事言わせたらお前、命は無いと思え」
ガルド先生はサン・カシエルとシード・カシエルを睨みつける。
「お、お父様どうすれば…」
「物分かり悪い親子だな、お前らアホの為に簡単に言ってやる」
ガルド先生が魔力を更に上げた。
「失せろ!!!!!」
「ヒィ!」
ガルド先生の声にびびってサン・カシエルとシード・カシエルは逃げ出した。
「今日はメイド喫茶を終了とする。シラけさせちまって悪いな」
ガルド先生が俺達の方に振り向き頭を下げる、客の方にも。
「ガルド先生が頭を下げる…だと!?」
ジルが驚いている。
ガルド先生は頭を上げた。
「ジル、後で職員室に来なさい」
ガルド先生は口角を上げながら言った。ガルド先生が口角を上げるとガチで怖い。
ジルは「やっちまった」と呟いた。
いつものパターンだな。
その日は早めの解散をして、町を回った。
ジルは今頃、死んだ魚の目をしているだろう…




