終話 果たせなかった思い
トキの目の前には黒い塗装のされた箱と銀に塗装のされた箱の2つが置かれていた。2つの箱の蓋には時計の烙印が押されている。
その2つの箱の底にはユネに頼んで描いてもらった《派生魔術;重力初級》の《重力固定》が、蓋には魔力の循環を行い続ける陣が描かれている。
トキは慣れた手つきで今まで作った部品を丁寧にしまっていく。
ネジ一本に至るまで全てが分かるように、何が足りないのか自分が分かるように箱の中の空中に置いていく。
これはトキが最初に作ろうと思っていたデザートイーグルである。求めるパーツが繊細過ぎるため今のトキの精度をもってしても作ることができなかったのだ。またトキの精度は大陸屈指の鍛冶師に匹敵すると従者逹に言われており、他の人にそれを頼むという手段もあまり期待できなかった。
パーツの欠損ほど恐ろしいものは無い。
トキは前世でさんざんそれを経験していた。それゆえに不完全な武器を相棒にするわけには行かなかった。
「作れるだけの技量を持てたら作ってあげるから…しばらく待ってて」
そう言って箱を蓋して《創造》で継ぎ目を消す。
…と不意にノックがされる。トキは慌てて机の下にあらかじめ作っておいた隠し蓋を開けて2つの箱をしまって閉じる。
「だ、誰?」
「ユっネで〜す。朝御飯にしましょ御主人様」
「は、はぁい!」
トキは慌てて立ち上がる。机の下に潜っていた為、真上に有るのは当然机の天板。自然の理のごとく勢いよくぶつける。
「御主人様?!何かすごい音がしましたが大丈夫ですか?!」
ユネが心配になって勢いよくドアを開け、トキを見る。
「どうしたんですか?」
「い、いや、ホルスターをつけようとして机の下に落としちゃって…それを取ってるときに声をかけられたものだから脊髄反射で立ち上がったら…ご覧の有り様だよ…」
トキはぶつけたところに手を当てて嘘の返答する。
「あぁたんこぶできてるじゃないですか!もう…出来ないなら出来ないとおっしやってください。このユネが手取り、足取り、スカート剥ぎ取りしますから」
「スカートは剥ぎ取らなくていいからね」
ユネが楽しそうに言いながらホルスターをトキに着けて上げる素振りを見せながらスカートのホックを外すと、トキはスカートが落ちる前に掴んでホックを締め直して言った。
「…にしてもホルスターの場所を太ももにしてくれれば椅子に座って出来るんだけど…「だめです」…即答ですか…」
「当然です。あんなところに着けてたらエロ猿どものいい餌です」
「そんな魔物、居るの?」
トキは「異世界なんだから人間の男のことじゃなく魔物の類なんだろうなぁ」と思ってユネに尋ねるとユネは苦々しい顔つきでトキに回復魔法をかけながら言った。
「はい。居ます。レベルにムラがあり、使う武器もステータスもバラバラ、挙げ句の果ては魔法まで使う個体もいます。しかし殺してはいけないという法律があるので…厄介です」
「へぇ…厄介だね」
「ちなみにレベル600越えが私が確認したなかでの最強のエロ猿ですね」
トキとユネは声のした入り口に方に顔を向ける。そこにはトキより少し背の高い黒髪の猫属の従者セラが扉にもたれ掛かっていた。
「…そ、そんなにレベルが高いやつもいるんだね…どんな攻撃するの?」
「1段階目はかわいい娘を嫌らしい目で見ますね。胸とかお尻とか」
「獲物の品定めってところだね…」
トキはフムフムとユネの言葉にメモを取る。
「大体は1段階目までしか行わないですが個体によってはペタペタさわってきます。胸とかお尻とか太ももとか…最悪揉んできますからそのときは容赦なくやっちゃってOKです。」
「毒とかを擦り付けてくるんだね」
「毒…まぁ毒っちゃあ(加齢臭って言う)毒ですね。成長した個体はお酒を飲んでるので触ってきます」
「酔拳か…厄介だな…」
「いえいえ酔っ払ってたら大幅に弱くなりますけどね」
食い違いに気づかず話をすすめる2人にセラが言葉を継いだ。
「レベル600越えたそいつは、可愛らしい主を見るとなりふり構わず発情して襲い掛かります。」
「じゃあわたしは大丈夫だね」
トキはエッヘンと小さい胸をはる。
「何を言ってるんですかいつも撃退してるんですよ?これが意外とめんどくさいンです。主様…」
「え、わたしの知らないところでわたし、襲われてたの?!」
トキが慌てて尋ねるとセラは首を縦に振った。
「ありがとね?セラ」
トキは黒髪の猫属のクールビューティ従者ににっこり微笑み、礼を言った。
クールビューティな従者は俯き、顔を手で覆いながらトキに背を向ける。
「少し顔を洗ってきます」
「先に食堂にいってるからね」
トキの言葉に黒髪の従者は右手をあげて応えた。
その背中を見つつ銀髪の従者は首をかしげる。
「レベル600オーバーの可愛らしい主に襲いかかる男共なんてこの憩いの狩場に居たかしら?」
…と
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