side A 02
side A 02 と main 05 の順番を入れ替えました。(2012 1 14)
こちらは変更ないです。
カキワラという女と会うのはこれで何度目だろう。毎回、同姓同名の少女に命じられての御使いであり、個人的な理由で会った事はないのだが。
会う場所も決まっている。高級そうな喫茶店の端の席。正面の女は私に笑いかける。無視して、ナポリタンを頼む。
「貴女達、食べ物の好みは違うのよね。あの子はカルボナーラかぺペロンチーノだから」
返事はせず、水を啜る。
「でも外見も少し変わったわよね。顔はやっぱりそっくりだけど、体付きがそこそこ違ってる」
「……あの子が鍛えたからだろ」
「確かに結構筋肉質になっちゃったよね、あの子」
喜んでるのか悲しんでるのか分からない反応だった。深く追求したくないので、水を啜る。
ナポリタンがテーブルの上に置かれる。カキワラは食事中は基本的に話し掛けないので、どうでもいい会話から解放された。
食後に口を拭いて、手を出す。カキワラはそれを無視して、話し掛けた。
「そうそう。前会った時に訊き忘れた事だけど」
カキワラは珈琲を一口飲み、また口を開いた。
「未だにあの子から離れたいって思ってる?」
この質問に答えたら帰してくれるだろうか。
「いいや」
はい、と封筒を手渡される。明日家に来るあの子に渡さないといけない。ナポリタンは奢って貰った。そうでもないと、こんな高い店で食べる気は起きない。
封筒を家に置いて、カラオケに向かう。誘ってきたのは前回の面子ではなく、一人の男。恋人かと訊かれれば否定したいが、相手は私をそのように扱う。別れ話を持ちかけた事が二回くらいあるのだが、全部スルーするとは男らしくない奴だ。
携帯にメールが届く。確認すると、彼氏もどきからのメールだった。カラオケの016室に居るらしい。店員に軽く話し掛けて、部屋に入る。どうせ、いつも通りだろうが、一応用件を訊いておこう。
「今日はどうしたの?」
ソファに腰掛け、相手の顔を見る。相変わらず辛気臭い奴だ。
「……まあ、愚痴」
君くらいしか状況が分かる人は居ないしね、と彼は薄く笑った。つられて、というよりは合わせて私も笑う。
「やっぱり、あの子の事?」
同姓同名な為、人物名を出すと失笑を買いそうなので、代名詞。彼は頷いて、俯く。すぐには話し出さずに、躊躇うのがコイツの癖だ。
コイツいい加減ウザいな、と完全に見離せないのは、自分も似た様な事を考えた事があるからだろう。今はもう思っていないけど。
「プライドがどうとか、そんな格好良い話じゃないけど。あの子の言いなりで働いて、金出して────」
補足しておくと、彼は私みたいに住処と身分を提供している訳ではなく、金を提供している。弱みの方は彼の為にも秘密。
そんな感じで何分か愚痴を聞いて、彼はバイトに向かう。奢って貰ったが、若干罪悪感。一人カラオケなんぞしたくないので、自宅へ向かった。
自宅のベッドに転がる。明日の為に、部屋を掃除しなければいけないけれど、ちょっとだけ休みたい。
今日一度だけ、彼に質問した。
「彼女から離れたい?」
迷わずに彼は頷いた。昔の私みたいに。
口には出さなかったけど、昔のカキワラの言葉を思い出した。
「あの子が逃がす訳ないじゃない。捨てる事はあるだろうけど」




