side C 03
ちょっと猟奇表現あり。少しだけですが。
タクシーから降りて、暫く歩く。いつもなら、バスに乗った後は歩くか走るかなのだが、左肩の負傷の事を考えるとそれは憂鬱だった。ウルザブルン教本部のビルに入った。
エレベーターで五階まで上がり、上司に当たる人物に会釈し、話し掛ける。挨拶抜きで。
「何人居ます?」
「二人だ」
相変わらず強面なお兄さんが答えた。ウルザブルンの人達は、MRSは居なくなって欲しいけど人を殺すのは嫌だという人が殆どだ。一方俺は、誰でもいいから殺したい。
室内には、口にガムテープ貼られて腕も脚も縛られている男が二人居た。脚の方は足枷も。金髪と赤毛とは流石ヨーロッパだなぁ、なんてどうでもいい事を思った。
「……ラテン系っぽいんですけど、何人で?」
「両方イタリア人だ」
そう言って、上司さんは踵を返した。殺害現場を見たくないからだろう。
さて、楽しむ前に少し焦らそう。自分を。二人の口のガムテープの端を恐る恐るつまみ、引っ張る。良かった、唾液が掛からなかった。
二人のイタリア人は呼吸を整えた後、何かを叫び出した。しかし全く聞き取れない。雰囲気は命乞いではなく暴言といった感じだ。
英語は通じるだろうか。発音は片仮名発音だが。
「シャラップ」
相変わらず惚れ惚れする程の片仮名だった。日本人がヒアリングする分には聞き取り易いだろう。二人は一瞬固まったが、すぐに罵詈雑言(多分)を再開した。少し固まったあたり、意味は通じたかもしれない。少しすると、疲れたのか声量を少し押さえて金髪さんが何かを喋った。whatとfuckしか聞き取れねェ。
「パードゥン?」
今度は怒鳴ってきた。したがって一単語も聞き取れなかった。しかしこの人、英語ペラペラじゃないですか。流石ヨーロッパ。
英語かイタリア語で数分間罵られ続けたが、聞き取れたのは一つだけ。
母親を犯した事なんて勿論ないけど、ふと疑問を抱いた。
「ファックって殺すって意味でも使えたっけ」
それならこのイタリア人MRS二人は人を見る目がある、という事になる、というよりはまあ、数撃ちゃ当たるってモンだろう。
さて、異文化交流も飽きたし、さっさと本題に行こう。
首を絞めたり頭を殴ったりして約三分。もう金髪さんは死んでいる。息してないし、脈も止まっている。残る赤毛さんはどうやって殺そう。金髪の死体に腰掛け、考える。溺死とか楽しいかもしれない。でも水取りに行くの面倒だなぁ。
部屋のドアが開く音がする。もう少し待って下さい、と言おうとしたら上司でも見ず知らずの処理係でもなく、相棒と黒い大型犬だった。なので、質問。
「ワンコが腹減らしてんのか?」
「そう。後はお前の怪我見に来た」
大した事ねェよ、と答えて立ち上がる。さあお食べー。
「もう一匹は?」
「久々に腹下した」
生肉やら血液やらだしなぁ、食糧。
結局茶髪さんは金髪さんと同じ殺し方にした。死体の処理の現場はスルーして、とある喫茶店に向かった。
喫茶店の端の席に座っている女の人を発見。女の前に座る。
「席は空いてるけど」
「もう昼時なのにね、えっと……カキワラ、だっけ?」
女は薄く微笑んだ。カキワラ、というのは彼女の情報屋としての名前で、その名前を知っている者にだけ情報を売る。会員031に信頼出来る情報屋を教えてくれ、と言ったら即答された女だ。
「幾つか訊きたい事とかあるけど、とりあえず。俺の本名知ってる?」
「知らないわ。私が知ってる貴方の名前は『サツキ』だけよ」
それ以外は使わないから、当然だ。いやまあ、カキワラが嘘吐きの可能性は否定出来ないけど。
「じゃあ次は仕事の話。山口って人、知ってる?」
「結構メジャーな名字じゃない」
そりゃそうだ。
「ええと。高校生男子で、此処から先の田舎に住んでる」
情報不足、と切り捨てられた。あの制服、何処の高校だっけなぁ……。家の場所は分かってるんだけど、住所は分からない。
そうだ、と会員031に言われた事を思い出した。
「口止めって出来る?」
「貴方の情報?」
「金払えばいいんだろ? 幾ら?」
カキワラは珈琲を一口飲んで、悪い笑みを浮かべた。
「三百万。払える?」
無理、と答えて席を立った。




