第二部 第24話 居酒屋未唯
無言聖域
第二部 門戸温泉郷編
ここまで読んでいただきありがとうございます。
世界を壊すような存在が現れても、門戸温泉郷の日常は不思議と崩れません。
今回の第24話では、そんな「こちら側」の空気がより強く描かれます。
竜もいる。
異世界住民もいる。
ネコの頭にネズミも乗る。
そして未唯は相変わらずです。
シリアスと日常が同時に存在している、門戸温泉郷らしい回になっています。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
https://applebrother.wordpress.com/
『小料理屋 未唯』
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そこは。
温泉郷でも特に賑やかな場所だった。
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竜が来る。
異世界住民が来る。
帰還者も来る。
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そして。
今日も騒がしい。
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「うわぁぁぁっ!!」
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突然。
たすくが叫んだ。
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店内が止まる。
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ココアが振り向く。
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「なになに?」
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たすくが震えながら指をさす。
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「デグーが!!」
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沈黙。
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未唯が止まる。
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ココアも止まる。
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「……は?」
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たすくは必死だった。
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「ネコに!!」
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店内の視線が一点へ集まる。
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カウンター席。
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そこには。
巨大な黒猫。
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そして。
その頭の上に。
ちょこん。
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小さな茶色い生き物。
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もふもふ。
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未唯が叫んだ。
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「な、何言ってるの!!」
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立ち上がる。
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「前にも言ったわよね!?」
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「デグーとネズミの区別もつかないの!?」
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たすくが止まる。
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未唯がビシッと指をさす。
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「あれはネズミよ!!」
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「デグーじゃないの!!」
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「そんなこともわからないの!?」
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店内が静まり返る。
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吉見が小さく言った。
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「そこ怒るポイントなんだ」
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山城が真顔でうなずく。
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「重要らしい」
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ココアが黒猫を見る。
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「まあ確かにネズミだね」
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たすくが叫ぶ。
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「そこじゃないだろ!!」
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黒猫は普通だった。
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むしろ慣れている。
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頭の上のネズミも。
普通にくつろいでいる。
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市役所職員が遠い目をした。
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「もう何が普通かわからない……」
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その瞬間だった。
黒猫が。
ゆっくりたすくを見る。
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「にゃぁ」
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たすくが後ずさる。
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「しゃ、しゃべった!?」
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ココアが吹き出す。
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「いや今のは普通の猫!」
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「どこが!?」
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その横。
竜の青年達は普通に酒を飲んでいた。
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エルフが注文している。
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獣人の子供が走っている。
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奥では未唯の母が料理を作っている。
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完全に無法地帯だった。
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玲桜が静かにお茶を飲む。
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吉見が聞く。
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「いつもこうなのか」
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玲桜は少し考えた。
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「今日は静かな方です」
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市役所側が固まった。
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「静か……?」
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その瞬間だった。
店の外から。
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ドゴォン!!
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何か巨大なものが着地する音。
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ココアが嬉しそうに立ち上がる。
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「あ、ジェット帰ってきた!」
第二部第24話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、崩壊存在との戦いの直後とは思えないほど、門戸温泉郷の日常側が強く描かれる回になりました。
特に未唯の、
「デグーとネズミの区別もつかないの!?」
という怒り方は、かなり未唯らしい場面になっています。
また、市役所側から見れば、世界崩壊存在が出た直後に普通に食事をしている時点で、完全に感覚が追いついていません。
ですが、こちら側の住民達にとっては、“生き続ける”ことそのものが日常でもあります。
だからこそ、食事も、笑い声も止まりません。
『小料理屋 未唯』は、そんな門戸温泉郷の「生活」を象徴する場所なのかもしれません。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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