第28話 根づくもの
ここまで読んでいただきありがとうございます。
第28話では、未唯へ託された「世界樹の種」が、少しずつこの地へ根づき始めます。
それは単なる力ではなく、この世界そのものに関わる存在です。
また、未唯自身も「逃げる側」ではなく、「育てる側」として少しずつ変わり始めています。
戦いのあとに訪れた静かな時間の中で、花園や通路にも変化が現れていく回になります。
作品の設定や登場人物については、作者ブログでも少しずつ整理しています。
https://applebrother.wordpress.com/
花園が静かだった。
戦いの気配も。
通路の揺れも。
少しずつ遠くなっていた。
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未唯は種を抱えていた。
小さな光。
静かな鼓動。
まるで。
眠っているみたいだった。
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ポップはスピネルの腕の中でうとうとしていた。
ぽふ。
ぽふ。
時々しっぽだけ動く。
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ココアが小さく言った。
「かわいい」
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黒姫がうなずく。
「わかる」
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マロくんが言った。
「平和だな」
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いっちゃんが小さく笑う。
「珍しく」
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その瞬間だった。
種が小さく光った。
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未唯が止まる。
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玲桜が静かに言った。
「反応しています」
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花園の花が揺れた。
風はない。
だが。
やさしく揺れていた。
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未唯が小さく聞く。
「……どうしたらいいの」
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種を見る。
小さい。
でも。
とてもあたたかい。
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玲桜が未唯の隣に立つ。
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そして。
静かに言った。
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「未唯」
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未唯が顔を上げる。
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玲桜が続けた。
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「あなたが」
少しだけ間を置く。
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「この種を、この地に根づかせるのです」
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空気が静かになる。
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花が揺れる。
世界樹の種が脈打つ。
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未唯が小さく聞いた。
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「……できるかな」
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その瞬間だった。
ポップが眠そうな顔のまま言った。
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「できるよ」
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未唯が止まる。
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ポップがぽふっと笑う。
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「みーちゃんだから」
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花園の花が一斉に揺れた。
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その瞬間だった。
未唯の胸の奥で。
何かがつながった。
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通路。
花園。
世界樹。
全部が。
やさしく重なった。
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ライくんが小さく言った。
「時間が落ち着いた」
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小雪が静かに笑う。
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「うん」
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クルミが未唯を見る。
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「根づけば変わる」
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未唯が聞く。
「世界が?」
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クルミはうなずいた。
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「命の宿る世界として固定される」
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空気が静かになる。
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ナオリが小さく言った。
「……そういうことだったのね」
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透真が未唯を見る。
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「お前」
少しだけ笑う。
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「とんでもないもの預かったな」
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未唯が種を見る。
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小さい。
でも。
あたたかい。
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怖くはなかった。
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その瞬間だった。
花園の奥。
小さな芽が出た。
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誰も触っていない。
なのに。
自然に。
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ココアが目を見開く。
「えっ」
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黒姫が静かに言った。
「早い」
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玲桜の目が変わる。
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「適合しています」
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小さな芽が光る。
やさしく。
静かに。
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そして。
未唯へ向かうように。
葉が開いた。
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ポップが嬉しそうに笑った。
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「ねっ」
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花園の花が。
祝福するみたいに揺れていた。
第28話を読んでいただきありがとうございました。
今回は、未唯が世界樹の種を「託されたもの」として受け取り始める場面になりました。
そして、その種は早くも花園へ反応し、小さな芽として現れ始めています。
この種は、この世界を「命の宿る世界」として固定するための存在です。
つまり、未唯達が守ろうとしてきたものそのものに関わっています。
また、ポップも役目を終えたことで、少し安心した様子を見せています。
小雪、ライくん、玲桜達も、それぞれの形で世界の安定へ関わり始めています。
ここから先は、「世界樹が根づく」ということが、どれほど大きな意味を持つのかも少しずつ描かれていきます。
ブログでも世界観や登場人物について整理していますので、よろしければそちらもご覧ください。
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