幕間2
「何?失敗した?」
その男の声は大きさこそ控えめだったが、鋭かった。
夜も深まっている。けれどランプは灯さず燭台がテーブルの上にひとつきりの、今は暗い豪奢な部屋。
その主は椅子に座り、近くに呼んだ部下をじろりと見上げる。
「それで、まさかそれだけが報告ではあるまいな」
「はい。失敗はしましたが、身の危険を感じたのか、それ以降かの娘は神殿から出ておりません。オラトリオも休学とか」
「ふぅむ、勢いは削げたということだな。しかし――」
男はテーブルに置いていたゴブレットを取り上げ、口をつける。
「本来ならあやつが行うべきことだぞ。我らが神をないがしろにする異教の信徒を、まさか皇都にのさぼらせるとは……まあ、おかげで私が自由に出来たというところもあるが」
「あちらには相変わらず動きはありません」
「皇家はどうだ?」
「そちらも今のところ……ですが、銀行家のビリビオ子爵の嫡男が、何やら嗅ぎ回っているとか」
「……ビリビオが?何故だ」
「その嫡男が、かの娘と友人だとか」
「ビリビオというのが気に食わんが……今は特に考えることもなかろう」
「では、このままの体制で構いませんか?」
「ああ。すべては神の導きがあるだろう……」
男は手を振り、部下を下がらせてから、満足そうにゴブレットの中身を飲み干した。
「そう、私のすべてが許される時が来る。神よ、御心は私に傾けられているようだな――」




