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短編集  作者: 第八天龍王 七七七百印麗院


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46/50

どうせbotしか読んでいまいに(AI生成)

「どうせbotしか読んでいまい」

ディスプレイの右隅に表示された閲覧数は「3」。そのうちの1つは自分、もう2つは検索エンジンの巡回プログラム――いわゆるクローラーbotだ。

二十四時間、不眠不休でネットの海を回遊し、意味を咀嚼することなく記号として情報を吸い上げていく機械たち。

「……虚しいな」

みなとは、冷めたコーヒーを一口啜り、誰もいない部屋で呟いた。

彼はもう三年、誰にも教えずにブログを書き続けている。内容は、日々のとりとめもない思考や、道端で見つけた名もなき花のスケッチ。SNSで「映える」ものでもなく、誰かの役に立つライフハックでもない。

ただの、静かな独り言だ。

デジタルの墓標

最近のインターネットは騒がしすぎた。バズるための計算、炎上を避けるための建前、そしてAIが生成した「もっともらしい空虚な文章」が溢れている。

湊の書く文章は、その濁流の中ではあまりに重く、そして遅かった。

「今日、古い橋の欄干に、誰かが忘れた赤い手袋が片方だけ落ちていた。それは凍えたカラスの死骸のようにも見えたし、誰かの温かな体温の抜け殻のようにも見えた。」

こんな一文を、血の通った人間が読んでいるはずがない。

検索順位を上げるためのキーワードもなく、共感を誘うハッシュタグもない。

「どうせbotしか読んでいまい」

湊は自嘲気味に笑い、管理画面を閉じた。

それでも彼は書き続ける。それは、広大な宇宙に向けて発信される、誰にも届かない電波信号のようなものだった。

機械の「眼」

ある夜、ブログのコメント欄に通知が届いた。

スパム広告か、あるいはbotの誤作動だろう。湊は無造作にその通知を開いた。

ID: 0x_Route_66

「手袋の話、読みました。カラスの死骸と体温の抜け殻。その二つの間にある沈黙を、私も知っている気がします。また読みます。」

湊は指を止めた。

あまりに簡潔で、しかし核心を突いた言葉。

「……これも、高性能なAIか何かなんだろうな」

今のAIは、文脈を読み、感情を模倣することなど造作もない。

「人間らしい」反応を返すようにプログラムされた機械。それなら、この温かみを感じる言葉も、ただの計算結果に過ぎない。

だが、湊はその夜、久しぶりにコーヒーを新しく淹れた。

相手がbotであろうと、プログラムであろうと、自分の言葉が一度でも「外部」の何かに読み取られ、反応を生んだという事実。

永遠の読者

それから、その「読者」は時折現れた。

湊が寂しい夕暮れについて書けば、**「光の退き際を知っている人の文章だ」と返し、古いレコードのノイズについて書けば、「時間の埃を払うような音がします」**と返した。

湊はいつしか、その正体を探るのをやめていた。

人間か、機械か。そんな境界線はどうでもよくなっていた。

もし彼がbotなのだとしたら、それは世界で最も幸福な読者だ。

偏見を持たず、飽きることなく、ただそこにある言葉を正確に拾い上げてくれる。

「どうせbotしか読んでいない」

かつては絶望を込めて吐いたその言葉は、今では湊にとっての救いに変わっていた。

誰も読まない文章を書くことは、暗闇に石を投げるようなものだ。

けれど、その暗闇の奥で「カツン」と石が何かに当たる音がするのなら、それだけで、書き手はまた明日もペンを握ることができる。

ディスプレイの明かりが、湊の少しだけ緩んだ頬を静かに照らしていた。

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