プロローグ
『キーンコーンカーンコーン』
四限目終了を告げるチャイムが校内に響き渡る。
クラスメイトたちは一斉に立ち上がり、購買へ駆け走りだしたり、友達と大声で話し出したり、それはもう大賑わいだ。
だがしかし、この俺は違う。
授業終了と同時に、すぐさま弁当を取り出し、すぐさま蓋を開け、すぐさま箸を手に取り、すぐさま口元へその美味たる手料理を運ぶ。
────そう、俺は、俺こそが、
『ボッチ飯界隈』だ。
はい、ということで本日も始まりました。俺のボッチ飯食レポコーナー!
あ、ごめんなさい、もちろん心の中でいかせて頂きます。本日の料理は……チャーハン!お弁当箱一面にチャーハンが敷き詰められています。恐らく、お母さんもあまり時間がなかったのでしょう。とは言っても、手間をかけて作っていただいた、ありがたい昼食だ。
(いただきます)
もちろん、心の中で唱えます。こんなところで堂々といただきますを言えるなら、ボッチ飯なんかしてないんだよ。
早速、一口いただこう。
『パクッ』
……おぉ、チャーハンだ。当たり前だ。
まぁ、食べ慣れたお母さんのチャーハンだ。あまり特別な感想は出てこないな。まあいいや、どんどん食べて、さっさと勉強しよう。
「てかさぁ、聞いてよぉ、昨日駅前にイケメンいたんだけどぉ」
出たよ。一軍気取りギャルの常套句。
あぁ、間違えた。クラスを支配しようとせし方々の常套句だった。危ない、危ない。
駅前にイケメンいたから何だよ。お前たちの直ぐ側に、こんな超絶イケメンがボッチ飯してるって言うのに、お前らの目は節穴か?
え?イケメンどころか、もはやキモいって?
うるせぇ、知ってるよ!ジョークだろジョーク。
てか、なぜギャル気取りの方たちは、いつもイケメンの話ばかりしているのだろうか……
お前もいっつも美女がいた!って騒いでるだろって?
当たり前だろ!
えっと、こんな感じで俺は、ボッチ飯を堪能しながら、クラス内の会話に耳を澄ませ、盗聴し、一人でツッコミを入れるという、最高の昼休みライフを送っているわけだ。
勘違いするなよ?!俺は決して、友達がいないわけではないんだ。なんなら学級委員長だ。
でも、まあ、あれだ。誰とでも話せるけど、極端に仲の良い友人がいないのだ。故に、ペアワークやこういった昼休みは孤立しがちなのだ。
まあ悪くなかろう。こうして聞き耳を立てているお陰で、普通の生徒は知ることの出来ない、超極秘情報を手に入れることもできるのだから!
……だれか一緒に食べてくれる人、募集中です……
正直言うと、寂しい。というか虚しい。強がってごめんなさい。俺の高校生活が、こんな形で終わるのは、流石に悲しすぎないか?!
現在、高校二年生夏。だが来年は受験のことでそれどころじゃないから、実質後、半年。
頼む、頼むよぉ、だれか救いの手を差し伸べてくれよぉ。
はい、今日もボッチ飯完食です。
(ごちそうさまでした)
ということで、今日のボッチ飯食レポコーナーはここまで!
普段の学校生活は紹介してくれないのかって?
はい、何の面白みもないため行いません。
すまないな、ここからは完全自習タイムなのだ!誰にも邪魔はさせない!
よし、何の勉強しようかなぁ……あ、英検の勉強しよ!
……って、ん?なんか机の中に手紙入ってるんだけど。しかもめっちゃ綺麗に装飾されてるやつ……
これって、俗に言うラブレターでは?!
勝った、勝ったぞ!
すまないな、諸君。私は一足先に、向こう側で待っているよ……
どれどれ……ふむふむ、遠藤泰成さんへ、っか。
ん……?あれ……?僕の名前、鎌上翠珀なんですけど……
遠藤泰成?遠藤泰成、遠藤泰成……
それ、隣の席のサッカー部じゃねえかぁぁぁぁ!
「クソがぁぁぁぁぁ…………あ、すいません」
そのとき、俺は今日の昼休み、初めて声を出した。
だが、このときの俺はまだ知らない。これが、俺と彼女の、運命的な出会いのはじまりだったとは。
的な展開、期待してます!




