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片思いしていた元同級生がうちの本屋でバイトを始めたんだが!?〜彼女は毎日のようにリビングまで上がり込んでくるし、距離感おかしくない?〜  作者: 早野冬哉
第二章

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【改】28.デート翌日

 あと五分かぁ……どんな顔して優花に会えばいいんだよ……。


 デート翌日の金曜日。僕は桐山書店のレジに立ち、壁掛け時計を見る。時刻は十四時四十五分。十五時からバイトの優花はいつも十分前に来るから、あと五分で優花がうちに来る。


 ヤバい……なんか緊張してきた……。


 変な汗が頬や首筋、背中を伝う。心なしか息も苦しい。大好きなポップ作りすらままならず、握っていたペンや書きかけのポップを引き出しにしまった。


 それから五分後。チリィンチリィンとドアベルが鳴り、見慣れた鳥のヘアピンを付けた美少女──優花が店に入ってくる。


「透お疲れ様っ!」


「えっ……あ、うん」


 優花はいつも通りの明るい声、明るい笑顔でそう言った。まるで昨日は何もなかったかのように。


 どうなってるの……?


「じゃあ準備して来るねっ!」


「うん……」


 短い会話を終え、優花は階段を登る。


 えっ……!? 昨日のことはスルー? やっぱり告白しようとしてたと思ったのは僕の勘違いだった?


「まあ、そうだよね……」


 テストで懸念していた問題が実は出題範囲外だった時のような肩透かし感に拍子抜けしつつも、僕は安堵と自嘲の混じったため息を吐いた。


*** 鳳優花視点 ***


 桐山家の階段を登り、羽織っていた白のカーディガンを脱ぐ。そこでわたしは、平静を装う限界を迎えた。


 気まずかったよぉ……!


 わたしはカーディガンに顔をうずめ、雪崩のように押し寄せてくる後悔に打ちひしがれた。顔を包むふわふわとしたカーディガンの感触だけが、わたしの心を慰めてくれる。


 わたしのバカっ! 雰囲気と勢いで告白しそうになるなんて考えなしすぎるよ……!


 昨日の状況はほぼデートだった。それに加奈との過去とその時透に助けられたことも話したし、最後のパレードの時なんか「告白しなさい」って言われてるかと思うくらい雰囲気が出ていた。


 整いすぎた舞台に透への思いを抑えられず、口が滑ってしまったのだ。


「告白するなら大学受かってバイト辞めるときって決めたじゃん……」


 もし振られたら、透と過ごせる時間がそこで終わってしまう。たとえ彼女になれなくても、透とは一秒でも長く一緒に居たい。


 わたしはカーディガンから顔を上げ、火照った頬を冷まそうと深呼吸。いったん後悔は後回しにして、気まずい雰囲気をどうにかすることに考えをシフトする。


「とにかく! わたしだけでもいつも通りにいこっ!」


 そうすれば透もきっと、告白しそうになってたことを流してくれる──たぶん!


 わたしは自分にそう言い聞かせ、桐山書店のエプロンを身に着けた。


*** 桐山透視点 ***


「ありがとうございました!」


 優花は普段と変わらず、最高の営業スマイルでレジ仕事をこなしていく。そんな優花を横目に、僕はレジの奥で、出版社から仕入れた本の整理をしていた。


 やっぱり優花、どうみてもいつも通りだよなぁ……。


「ねぇ透! 本の整理手伝うよっ?」


 優花を見つめてぼんやりとしていたら、彼女のかわいらしい顔が急に目の前に現れた。


 だから近いって……!


 優花の髪から香るシャンプーのいい匂いに心臓の音がうるさくなる。僕は至近距離で見つめ合うことに耐えきれず、優花から目を逸らした。


「う、うん……ありがとう。じゃあそっちの段ボールお願い」


「おっけー!」


 金色に輝く鳥のヘアピンを揺らし、早速段ボールを開ける優花。その目は凛としていて、丁寧な手つきで本を分類していく。


 やっぱり真面目だな……優花は。


 仕事に対して真摯に向き合うところは、高校から変わっていない。優花は高校の係や委員会の仕事に対しても手を抜いていなかった。


 ん? じゃあ優花が昨日のことに触れないのはバイト中だからってこと……? それとも告白だと思ったのはやっぱり僕の勘違いなのか……?


 真意が分からず優花を見ると「ん? どうかしたのっ?」と小首を傾げた。


「ああいや、何でもない……」


 彼女の純粋無垢な反応を見ていると、やっぱり昨日のことは僕の勘違いだった気がしてくる。


 うん。もうそう思おう! だってこれはラブコメじゃないんだし、いくら昔助けてたとはいえ、僕みたいなモブに優花が告白してくれるはずない。


 リアルではフィクションみたいにご都合主義のラブコメ展開は起こらない。そう吹っ切れて、僕は昨日のことを考えるのをやめた。


 こうして僕らはまた、今まで通り「仲のいいバイト仲間」としての日々に戻っていった。


*** 某ローカルテレビ局の会議室 ***


「『地元の隠れた人気店』の紹介コーナー。再来週の分はどうなっている?」


 部長らしき五十代の男が聞くと、一人の男性アラサー社員が立ち上がる。


「はい。いくつかピックアップして参りました。アポはこれからです」


 アラサー社員がパソコンを操作すると、スクリーンに候補の店名が映し出される。十ほどある候補──その一つに「桐山書店」の名前があった。

二十八話を書き直し、もう少しだけこの作品を続けることにしました。


引き続き応援よろしくお願いします!

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