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片思いしていた元同級生がうちの本屋でバイトを始めたんだが!?〜彼女は毎日のようにリビングまで上がり込んでくるし、距離感おかしくない?〜  作者: 早野冬哉
第二章

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27.遊園地デート⑥

「すっごい人っ!」


「流石に平日でも夜は混んでるね……」


 パレードをやっているところまで来ると、賑やかな人だかりができていた。僕たちの後からも次々と人が来る。


「わっ!?」


「えっ!?」


 前に割り込もうとした人に押されて、優花は不可抗力で僕の胸に飛び込んできた。腹部に当たる柔らかい感触と、互いの息遣いが分かるほど近くにある優花の顔が、僕の鼓動を加速させた。


 ど、どうすればいいのこれ……!?


 パレードの喧騒が遠のき、優花と視線が合う。一秒が一時間にも感じられる時間の中、僕たちは数秒間見つめ合った。


 とりあえず離れないと……!


 僕は優花を引きはがすため、彼女の華奢な肩を掴もうとして、一瞬ためらった──その時。


「透っ!」


 優花は僕の名前を呼び、僕の背中に腕を回した。


 えっ!? えっ!? 何この状況!? 僕明日死ぬの!?


「ゆ、優花?」


「ねぇ透。聞いて欲しいことがあるの」


「な、何?」


 優花は一瞬目を伏せ、そしてもう一度僕の目を見上げた。彼女の頬は赤くなっていて、僕を抱きしめる腕の力も強まる。


「わたし、高校で透と再会した時からずっと透のことが──」


 これって告は──。


「いい加減にするんだ透くん! ボクの優花から離れろ!」


「瑠夏さん!?」


「お姉ちゃ──!? わっ!?」


 突如現れた瑠夏さんが僕と優花を引きはがし、優花を抱きしめる。


 姫を悪代官から救出する王子様ムーブを見事に決めた瑠夏さん。けれどその瞬間、二か月ぶりに優花と触れ合えた瑠夏さんは逞しかった表情を崩し、エロおやじのように下卑た笑みを浮かべたから台無しだ。


 まあ、すぐに元通りに戻ったけれど。


「透くん。ボクは言ったはずだよ? これ以上優花とベタベタしたら許さないと!」


 瑠夏さんは右手を優花の腰に回して抱き寄せ、左手の人差し指でビシッと僕を指差す。彼女の腕の中で、優花は顔を赤くして瑠夏さんの肩をポカポカ叩いた。


「もぉお姉ちゃん! 何で邪魔するのー!」


「すまない優花。だがボクにも心の準備をさせてくれ」


「意味わかんないよっ!」


「とにかく! 今はまだその時じゃない。帰ろう優花」


「待ってよお姉ちゃん! わたしは透と──」


 瑠夏さんは、反論しようとした優花の口に人差し指を当てた。その瞬間、掴みかかる勢いで抗議していた優花の口が閉じた。瑠夏さんの芝居じみた仕草と容姿からくる魔性の魅力には、姉妹である優花ですら抗えないらしい。


「ズルいよお姉ちゃん……」


 抗議を遮られた優花は、瑠夏さんに対して不服そうにジト目を向ける。が、瑠夏さんは気にする素振りを見せず、不敵に微笑んだ。


「そういうわけだ透くん。ボクらはここで失礼するよ」


 瑠夏さんは優花の手を取り、颯爽と踵を返す。優花も手を引かれるままに瑠夏さんに付いていく。途中、優花は首だけで振り返り、手を振ってくれた。


「ごめん透! また明日っ!」


「あ、うん……」


 どうなってるんだ……?


 僕は手を振り返し、首を傾げた。


***


「はぁ……あれって結局告白だったのかな……?」


 僕は自室のベットに横たわり、ぼんやりと天井を見つめる。


『わたし、高校で透と再会した時からずっと透のことが──』


 優花の言葉とともに、あの時の優花の赤みがかった顔や凛とした瞳、腕の中の温もりが蘇る。


「……っ!」


 思い出しただけで顔が熱くなる。思わず腕で目を覆った。


 今考えても仕方ないだろ……! それに、優花が僕に告白なんて……。


 「ありえない」と断言できるだろうか。僕は知らず知らずのうちに中学の頃優花を救っていた。それに挨拶とペアワークだけとはいえ、高校でも二年間それなりに交流があった。今だって、優花は僕の家でバイトしている。


 僕にもワンチャンあるんじゃ──って調子に乗るなよ僕! あんな美少女とモブな僕じゃ釣り合わないだろ……! モブと美少女が恋人になれるのはラブコメの中だけ。リアルとフィクションを混ぜちゃダメだ。


「はぁ……ラノベでも読んで落ち着こ」


 僕は手探りで、ベットの横に置いてあるラノベを一冊掴み取る。そして栞が挟まったページを開くと、主人公とヒロインが抱き合っているイラストが目に入った。


 それはまるで、今日遊園地で優花に告白(真偽不明)されそうになっていた時のようで──僕はバタンと勢いよく本を閉じた。


 本当にヤバい。今ラブコメなんて読んだらリアルとフィクションの境界線が分からなくなる……!


 僕は慌ててラブコメラノベを元の位置に戻し、代わりにラブコメ要素のないダークファンタジーを手に取る。


 そうして小一時間ほど読書に明け暮れると、ようやく心が落ち着いた。けれど、代わりに不安が一つ、沸き上がる。


「明日も優花バイトに来るんだよな……どんな顔して会えばいいんだろ……」

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