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龍のように飛び、鳳のように翔けよ  作者: 円環の旅人
ガダルカナルへの進出
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第四十四話 「 新たなる基地 」昭和十八年 三月

昭和十八年三月。285隊はいよいよ、ラバウルを発つこととなった。

向かう先は、ガダルカナルのルンガ飛行場。

情報によると、さまざまな新機能が付いているらしい。


司令「航空隊、移動を開始してくれ。」

  「向こうでは、先着している藤原参謀が役に立つだろう。」

  「ルンガは排水設備などのさまざまな改良がされている。期待したまえ。」


時刻は0700。指令の指示とともに、第一部隊から順に動き出す。


グリム「それじゃ、第一部隊発進!」

中野「行ってきます!」

おちょ「向こうで待ってますねー!」

ぺい「どんな基地か楽しみですな。」


グリムの飛燕を先頭に、24の多種多様な翼が空を舞った。

この後一定の間隔を置き、第二・第三・第四と続く。

そして最後に、予備機の編隊が飛び立った。


岩井「それじゃ、司令。ガダルカナルで会おう。」

司令「ああ。予備機のひよっこ搭乗員たちは任せるが、大丈夫か?」


予備機というのは、本来搭乗員はいない。何かあったときの予備だから当然だ。

そこで今回は、訓練飛行として、教育隊の面々を連れてきている。


岩井「問題ないよ、鳳翔で何度もやったから。」

司令「・・・教導隊出身に聞くのが間違いだったな。では、任せたぞ。」


案の定、教育隊の操縦は未熟だった。陣形など名ばかりで、ただの集団。

おまけに、左右に振れつつ飛んでいる。

そんな有様にも関わらず、決して事故が起きることは無かった。

上空で機体の上下を反転し、飛行姿勢を細かく指定した者・・・岩井がいたからだ。


岩井「離陸と着陸、あとは指示通り飛べればそれでいい。」

  「残りは全て、私が管理すればいいだけだからな。」


推力も、高度も、速度も。そして進路まで。すべてを取り仕切った。

素人から熟練まで、あらゆる者を教え導くのが「教導隊」の務めだったからだ。


下級生「・・・教官。先輩方は本当に、大丈夫でしょうか・・・?」

教官「心配ない。なんてったって、率いているのは俺らの姉御だからな!」

下級生「そうですか・・・ん?姉御とは?」

教官「俺が一航戦にいた頃は、皆にそう呼ばれていたんだよ。」

  「世間じゃ尾ひれがついてるが、俺らからしてみれば、あれは姉御に違いない。」

  「厳しくも優しい、立派な隊長だ。」


そんな様子を、実習に来た下級生と教官が眺め、見送っていた。

一方285隊は、0930に第一部隊が到着したことを皮切りに、次々と着陸していく。

正午には岩井率いる予備機編隊も、1機ずつながら無事に全機が降り立った。

そして全機を格納後、各員は部隊ごとに行動していた。


参謀「井上中尉達も着いたか。移動、ご苦労だったな。」

井上「ありがとうございます!」

参謀「まずはここに慣れるといい。好きに基地を見て回ってくれ。」

  「・・・私は書類仕事に戻るとしよう。」


第三部隊は、司令部棟周りを見て回っている。


井上「この基地は、最初から網戸がついているのか。」

島田「今回は、あとから付けなくてもいいんですね・・・!」


マラリア対策で、ラバウルでは基地設営の1か月後に網戸を設置した。

だが、基地が異様に広い分、設置は楽なものではなかったのだ。

そして同じ頃、同様にマラリア対策の設備を、第一部隊が見ていた。


おちょ「これは・・・排水溝?」

グリム「みたいだね。雨対策かな?ここら辺雨多いし。」

ぺい「どうやら仕様書によると、マラリア対策らしいですぞ。」

おちょ「えっ?マラリア対策!?」


参謀に渡された資料を見ながら、ぺいが反応する。

まさかの設置理由に驚きつつ、散策を続けた。


中野「どうやら水たまりを防ぐ設計で、マラリア対策になってるみたいですよ。」

グリム「へぇー、そうなんだ!あの面倒なことをしなくて済むのはいいね!」

ぺい「これで少しは、雨も楽しめそうですな。」


一方第二部隊は、宿舎周りを見て回っていた。


エリンギ「やっぱ新品の布団はいいですね。今まで以上によく眠れそうです。」

FV「いや、お前だいたい徹夜で機械いじくってるから寝ないやんけ。」

エリンギ「いやあれは・・・整備場にいると時間が早く進むんですよ!」

FV「その間皆寝てんだよなぁ。・・・たまには寝ろよ?こっちも心配なんだぜ。」

エリンギ「あ、それじゃ早速・・・」

FV「今じゃねぇよ!・・・寝るの速ぇなおい。」


せっかくの新品布団も使うことがなさそうなエリンギに、FVがツッコミを入れる。

そんな漫才を横目に、こんかわが廊下の奥を見つめていた。

最奥の札に書かれた名前は、「岩井雪奈」。


こんかわ「ん?大尉殿って、あんな角っちょの部屋なんですか?」

さと「みたいっすね。なんでも、『駐機場の近く』がいいみたいっすよ。」


以前と比べて丁寧語が崩れてきた、さと飛曹長。原因は言うまでもない。

常日頃から皆を引っ張っている、部隊長によるものだった。


こんかわ「そう・・・なんですね・・・」


こんかわは、一時帰国したあの日の景色を思い出した。

薄暗い家の中。私服のない箪笥。・・・そして、あらゆる物がない家。

そして、頭に浮かんだ言葉はただ一つ。

-岩井の心は、既に地上には無い。

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