第四話 「 第二部隊長 」 昭和十七年 四月
285隊は、2つの制空部隊により構成されている。
第一部隊の隊長は、グリムこと「平沼 義雄」中尉。
第二部隊の隊長は、「田中 達也」少尉だったのだが・・・
つい先日、結核の為緊急入院となってしまった。
そこで急遽新しい部隊長を選ぶこととなり、
第二部隊で、小隊以上の指揮を執ったことがある人物が呼び出された。
吉田、藤田、清水の3名。全員少尉である。
ただ、これがなかなか決まらない。
司令「皆、集まってもらってすまない。
「第二部隊の部隊長を決めたい。我こそはというものはいるか?」
岩井「・・・3人とも反応なし、か。顔を見るに、何か事情があるようだな。」
司令「そうか・・・ひとまず事情を聴きたい。話してくれ。」
吉田「ではまず私から・・・病気がちでして、」
「お休みをいただくことが多いのです。」
「あまりに多いので医者に聞いたところ、免疫が弱いとのことでして・・・」
「重要な作戦時に、病欠などあっては・・・」
「すみませんが、辞退させて頂きます。」
藤田「次は自分が。空戦は得意な方ですが、統率が苦手でして・・・」
「前職でも、ほぼ腕だけで小隊長をやっていたようなものですし、」
「期間も数ヶ月ほどと短いので、とても自分に指揮ができるとは・・・」
「・・・すみません。」
清水「最後に私めの理由を説明しますと・・・プレッシャーに弱くて・・・」
「中隊長どころか、部隊長は24機を統率することになると聞いております。」
「それだけの重責、私めには耐えられそうにございません・・・」
「申し訳ありません。」
司令「事情は分かった。無理に押し付けるわけにはいかないからな・・・」
「うーむ・・・どうしたものか。」
岩井「・・・彼ならできそうだ。手間はかかるが、勧誘してみるよ。」
そう言って、岩井は翌日、とある人物の所を訪れた。傭兵出身のFV軍曹だ。
岩井「やあ、FV軍曹。調子はどうだ?」
FV「ぼちぼちっすねぇ。予想よりは悪くないっす。」
「そういえば、うちら第二の部隊長、誰か決まりました?」
岩井「いや、どうもいい人材がいなくてね。まあ、一人当てはいるんだ。」
FV「へぇ、何方さんです?」
岩井「古谷という人物だ。空戦経験も豊富、人望もあると聞く。」
「指揮経験も多少あるらしいな。」
FV「へぇ、古谷・・・ちょま、自分っすか!?いやいや、たかが軍曹っすよ!?」
「変に目ぇ付けられたくねぇですし、」
「自分はやめといたほうがいいんじゃないですかねぇ。」
岩井「・・・なるほど、分かった。」
指揮経験の少なさ、そして階級の問題などから、FV軍曹は断ることにした。
だが、岩井は交渉を諦めなかった。
二度の交渉を終え、岩井はとある切り札を持って、再び交渉することにした。
岩井「確か理由は、士官じゃないと駄目ってことだったな。」
FV「ええ、中隊長・・・ましてや部隊長なんて、士官じゃないとダメでしょう?」
「傭兵崩れの自分にゃ、受ける資格も金もつてもありませんぜ。(笑)」
「まっ、あったなら別に受けてもいいっすけど。(笑)」
岩井「なら、士官になろう。金やらコネやらは、私を使えば何とかなるさ。」
「普段いいように使われてるんだ。これぐらいはいいだろ。」
「何がプロパガンダだ・・・私は兵士だ。道具じゃないんだぞ?」
FV「・・・そこまで言うなら、受けましょうかねぇ。」
「このまま決まらねぇのも困りますし。」
「にしても大尉、大尉にも不満あったんすね・・・」
岩井「まあ、無いわけがない。」
「女というだけで、何かと下に見てくる奴も多いしな。」
「まあ、昔よりはましだよ。昔はもっとひどかった。」
「それに、私は空戦技能以外はからっきしだからな。」
「無駄に持ち上げられちゃ、困るんだよなぁ・・・」
「ただ、この制度には感謝しているよ。おかげで空を飛べる。」
「空を自由に飛ぶのが、私の憧れだったからな。」
FV「お互い苦労しますねぇ・・・」
翌日、正式に新第二部隊長が決定した。
FV軍曹改め、FV飛行少尉である。




