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第十二話 「 各隊の任務へ 」 昭和十七年 八月

K作戦から、数日後。いよいよ、我々285隊も本格的に動き出した。

我々には、他の隊には無い長所がある。それが、数だ。

各部隊24機編隊、それが3部隊。つまり、同時に複数の任務をこなせるのだ。


グリム「第一部隊、全機離陸完了!雪奈大尉、見ててくださいよ。」

   「 陸攻の一機たりとも傷つけさせませんから!」

岩井「それは頼もしいな。それじゃ、そっちはよろしく。」


岩井達との別れ際、軽快に無線を飛ばすグリム。

第一部隊は陸攻隊を護りつつ、南方の要塞「ポートモレスビー」へと旅立つ。

その上空に差し掛かった頃、外周を飛んでいた鏑木から連絡が入る。


鏑木「4時方向に敵編隊、数は20、機種は・・・ハリケーンとP-39かと。」

グリム「了解!・・・やっぱり眼があると違うね。発見速度が段違いだ。」

   「第一部隊、迎え撃つよ!」


グリムの一声で、編隊が一斉に回頭。迎撃に出向いた。


おちょ「それじゃ、一番は頂くよ!」

ぺい「助太刀致そう。・・・危なっかしいですからな。」


敵機を視認。高度差を確保し、まずはおちょ隊が飛び込む。

弾と弾が交差し、機体を掠めていく。すれ違いざまに何機かを墜とし、再び上昇。

それを追おうとした敵機は、すかさず援護を入れたぺい隊・グリム隊に墜とされた。


おちょ「援護助かる!・・・ちょっと食らっちゃった。てへっ。」

グリム「うん、やると思った。」

中野「おちょ中尉、その・・・もう少し援護を待って頂けると・・・」

おちょ「ギクッ、はい、反省します・・・」


友人達どころか、中野にまで苦言を呈されてしまい、反省するおちょ。

それでも、この突撃により敵編隊は分断。そこを中野達が仕留める。


中野「・・・ごめんなさい。陸攻さんを守らなきゃいけないんです。」


そう零しながら、一撃。翼を失った敵機は、密林の中へと落ちていった。

そうして第一部隊が戦っている間に、陸攻隊は飛行場を爆撃。

全機が対空砲火圏外へと離脱し、帰投した。

任務を無事果たした第一部隊も、心朗らかに帰っていった。


岩井「各小隊、周囲警戒を継続。30分ごとに交代な。」


一方、ラバウルから北方750km。第三部隊は、岩井と共に海上にいた。

先ほどトラック泊地の水上機部隊から護衛を引き継ぎ、ある船団を護っている。

名は「東京急行」。東京とラバウルを、僅か一週間で結ぶ補給船団だ。


井上「急行便とはいえ・・・護衛は駆逐艦4隻だけですか!?」

島田「いくらなんでも少なすぎます!」

岩井「だからこそ、航空隊が護らないといけない。そうだろ?」


二人は、黙って頷いた。これがどれだけ重要かは、分かっていた。

空戦はない。しかし、敵がいつ水平線の彼方から現れるかわからない恐怖。

そして、海面からの照り返しが体力を奪っていく。


佐藤「あ、暑いです・・・海の上ってこんなに暑かったんですね・・・」

小川「佐藤伍長、重要任務です。頑張らないと・・・」


数時間の任務は、激しいドッグファイト以上に隊員たちの精神を磨り減らした。

ベテランの井上や島田でさえ、帰投する頃には操縦桿を握る手が震えていた。


岩井「・・・井上中尉、大丈夫か?」

井上「・・・着てくる服を間違えましたね。護衛だけならともかく、暑さが・・・」

島田「対潜警戒なんて、初めてですよ・・・正直、身に堪えます。」


ラバウルに着陸した隊員たちは、機体から降りるとその場に座り込んだ。

無理もない。陸軍出身が多い第三部隊において、海上護衛は未知の領域だった。

本来このような任務は、海軍の任務なのだが・・・ここは混成部隊。関係なかった。


高橋「終わった・・・一機も、失わずに・・・」

佐藤「マジできつかった・・・」


若手達が呟く。岩井は彼らの元へ歩み寄り、口を開いた。


岩井「見事だった。空戦で勝つことよりも、守り抜くことの方が遥かに難しい。」

  「それを成し遂げたんだ。誇りに思え。」


それだけを語り、岩井は機体へと戻っていった。

一方、第一・第三部隊が基地を離れていた頃。

けたたましい警鐘と共に、第二部隊は緊急出撃した。敵襲である。


FV「ほーん、スピットファイアが12機に、ウェリントン28機ってか。」

  「ずいぶんと大所帯やな。ほな、稼がせてもらうかぁ。」

こんかわ「欲を言えば、大尉殿と飛びたかったです・・・」

FV「大尉は忙しいからなぁ。まぁそのうち飛べるべ。」

  「ってか、エリンギ少尉。起きてんか?もうすぐ接敵すんぞ?」

エリンギ「Zzz・・・んぁ、おはようございます。」

FV「お前さぁ・・・マジで頼むぞ?」

エリンギ「分かってます。起きたからには仕事しますよ。寝たいし・・・」


エリンギはそう言って、一直線に爆撃機めがけて突っ込んだ。

隼の機関銃弾が、的確に弱点であるエンジンを貫き、火を噴いた。

攻撃と離脱を繰り返しながら、一機、また一機と致命傷を与えていく。


エリンギ「部隊長、こんなもんでいいですかね・・・?」

FV「・・・すごっ。やればできるじゃねぇか。」


普段の無気力さとは裏腹に、戦闘技能はかなりの腕を持つエリンギ。

しかし、敵のスピットファイアも精鋭だった。FVの機体の翼を敵の銃弾が叩く。


FV「おっと、危なっ!?あんの野郎、せっかくの機体に傷つけやがって・・・」

  「しゃーない、さと飛曹長、右から回れる?」

さと「了解です。お返しに、彼らのエンジンを止めてあげましょう。」


そう言って、旋回戦に持ち込む。敵も曲がり始めたが、零戦の方が遥かに曲がる。

あっという間に射線に捉え、胴体部分に着弾、敵機は炎上した。


さと「やっぱ弾速遅いですね。まあ、近づけって話ですけど・・・」


その後も戦闘は続き、戦闘機、爆撃機共に複数機を墜としたのちに敵は反転。

ラバウルの基地に、被害を出すことは無かった。


エリンギ「ふわぁぁ。・・・部隊長、昼寝してもいいですか?」

FV「・・・今回は凄い戦果出したしなぁ。許す!」

エリンギ「よっし、それじゃおやすみなさーい。」


一仕事終えて、快眠にふけるエリンギであった。

ただ・・・寝すぎて、夕食の時間を逃したらしい。

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