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リヴァイアサン(4)

新帝の子を宿したふりをした芙蓉は、種々の危害を加えられるようになった。身体に影響のない、ただの嫌がらせならば可愛いものだ。この程度のことは端から問題にしていない。それにこれらの事は芙蓉の三人の友人が庇ってくれた。

友人達には感謝している。特に礼熹と千樹は薔花が立皇されると思っていたようで、自分の妊娠に驚いていたが、それでも助けてくれる友人達は素直にありがたいと思う。

問題は、身体に直接の危害を加えるものだ。鈍器の落下等の直接的なものもあれば、毒や堕胎薬といったものもある。どれも兄の忠臣である宦官の朱慎が助けてくれた。

朱慎は誰が何をしたかを逐一書き留めている。これは兄に報告されているのだろう。愚かな女達。公主たる自分に危害を及ぼすなど、謀反の意思有りとして、それだけで死罪にもできるのに。上手く罠にかかってくれたと、芙蓉はほくそ笑んだ。


立皇の日。

崔薔花を皇后とする旨を告げた時の、妃達の顔は見ものだった、と晴嵐は思い返していた。

芙蓉と朱慎から、妃達の行動については逐一報告を受けている。彼女達は、手出しする相手を誤ったことを悟ったようだ。芙蓉は女狐が尻尾を現したと喜んでいたが、本来この危害は薔花が受けていたと思うと、晴嵐の(はらわた)は煮え繰り返る。

更に芙蓉が公主であることを告げるに到って、後暗い者達は揃って蒼白になった。自らの行動が引き起こす結果に予想がついたのかもしれない。

薔花の前では慈悲深い自分を演じる。自分の中に残酷な魔物が居ることを知られたくない。今や薔花に見限られる事だけが、晴嵐にとっての恐怖であった。


********



「帝は名君になられます。」

朱慎が言った。白麗の罵倒を気にしているのだろうか。

「もし帝が暗君となれば、薔花様は後世の史家に悪女と評されるでしょう。帝はそのような事は、なさいません。」

朱慎の言は的を得ている。彼は更に続けた。

「薔花様は帝の楔です。彼の御方のお陰で帝が正しく道を歩まれるのであれば、私は薔花様に忠誠を誓い、微力ながらお守り致します。」


芙蓉に害を成した妃達は、罪人として軒並み身分を落とす事としよう。一族も連座させれば、宮廷の刷新にも一役買うだろう。

礼熹は瑞雲に降嫁させてやらねばなるまい。千樹に国試を受けさせるには、崔良の協力が要る。芙蓉は公主として嫁いで貰わねばならない。他にも仕事は山積みだ。暗君の汚名を返上するからには忙しくなる事必至である。

粛清はこれからだ。彩の国には嵐が吹き荒れる。だが嵐の後は、新しい時代の幕開けとなるはずだ。

いつか自分が地獄に堕ちるその時まで、薔花と共に正しい道を歩むことを新帝は心に誓ったのだった。


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