↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しの悪役令嬢を救いたいだけなのに、いつの間にか神様になってました  作者: 櫻 美澪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/4

私が…ミーア?

公爵家へ向かう馬車の中。


私は窓の外を眺めていた。


大きな屋敷が立ち並ぶ街並み。

窓から差し込む柔らかな陽光。

そして、すぐ隣に座る小さな女の子。


何もかもが夢のようだった。


やっぱり、ここはゲームの世界なのだろうか。

そんなことを考えていると、隣から声が聞こえた。


「ねえ」


振り返ると、リリアンがこちらを見つめていた。


「あなた、名前はなんていうの?」


「……ごめんなさい。私、自分の名前が分からないんです」


「そうなの?」


リリアンは不思議そうに首を傾げた。


「じゃあ、名前がないのね」


「……そう、ですね」


なんだか自分が世界でひとりぼっちのような気持ちになり、私は俯いた。


すると、リリアンは何かを思いついたように手を叩いた。


「それなら、私が名前をつけてもいい?」

「えっ?」

「だって、お友達なのに名前がないと不便でしょう?」


そう言って、リリアンは楽しそうに考え始めた。


「うーん……」


真剣な顔で悩む姿を見つめる。

やっぱりかわいいなぁ。


しばらくすると、リリアンはぱっと顔を上げた。


「ミーア! ミーアっていうのはどう?」

「……ミーア」


その名前を口にした瞬間、脳みそをガンと殴られたような衝撃を感じた。

頭の中に、ある光景が浮かび上がる。


ゲームの冒頭で見た、あの裁判の場面。

リリアンの隣に立っていた、一人の少女。


彼女はリリアンの侍女でありながら、主人公をいじめ、数々の悪事を働いた人物。

そして、最後には自分の罪をリリアンに押しつけた。


その名前は――。


「……ミーア?」


背筋が凍った。


まさか。

そんなはずはない。


「どうしたの? ミーアって名前、気に入らなかった?」


心配そうに私の顔を覗き込むリリアン。


私は恐る恐る、震える自分の手を見つめた。


小さな手。

細い指。

泥に汚れた肌。


そして、ふと視界の端に赤いものが映った。


「……え?」


顔を上げる。


馬車の窓に映った自分の姿。

そこにあったのは、赤い癖っ毛の髪。

ゲームの中で見た、あの少女と同じ色。


「うそ……」


心臓が嫌な音を立てた。


薄桃色の髪に、エメラルドグリーンの瞳。

目の前にいるのは、間違いなく私が大好きなリリアン。

そして、赤い髪の私は――。


「私が……ミーア?」



その瞬間、頭の中が真っ白になった。


ゲームの中で、リリアンを裏切った少女。

彼女の罪を押しつけ、悲惨な運命へと追いやった張本人。


それが、私。


「ミーア?」


リリアンの声に、私ははっと我に返った。

彼女は心配そうに私の顔を覗き込んでいる。


「大丈夫? 顔色が悪いわ」


「だ、大丈夫です! 何でもありません!」


慌てて笑顔を作る。

けれど、心臓は激しく鼓動していた。


どうして。

どうして私がミーアなの?


よりによって、リリアンを裏切る役だなんて。


私は彼女の大ファンだった。

彼女を救いたくて、この世界に来たと思っていた。


それなのに、まさか自分が彼女を苦しめる側の人間になるなんて。


「……ミーア?」


リリアンが、私の名前を呼ぶ。

その声は優しくて、温かかった。

私はぎゅっと拳を握りしめる。


違う。


私は、ゲームのミーアとは違う。


彼女を裏切るつもりなんて毛頭ない。

むしろ、誰よりも彼女を大切にしたい。


ならば、やることは一つだ。

原作の運命なんて、知ったことか。

私が変えてみせる。


リリアンが笑っていられる未来を。

彼女が心から幸せだと思える未来を。


――私が、あなたを幸せにしてみせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。