終わり
サイレンのウーウーという、獣の唸るような音が響き続けている。
また、イタズラか。
拍手をする者もいる。
誰かの悪ふざけ。
子供の遊び。
呆れて溜め息がでる。
「またやったん。誰やねん。」
後方から舌打ちの音。
「ほんまな。これ2回目やんな。」
まぁ、適当に返事をするが、その、断続的な音には妙なものがある。
すると、何処かへ行っていた、学級委員長が飛び込むように、教室に入ってきた。
「皆ぁ、座ってー!」
息も切れ切れに、力の限り叫ぶ。
異様な雰囲気にいよいよ、お祭り騒ぎ。
奇声を発しながら教室を駆け回り、押し合いへし合いする男子達を、眉根を寄せて眺めていると、
「男子、うるさいねんけど。鬱陶しい。」
虫がそこいらを飛び回っているときのような嫌悪を、顔一杯に表しながら、旭は話しかけてきた。
「どうしたんやろな。もしかして、ほんまに火事やったりして。」
冗談めかしながら、体を後ろに少し捻って旭に顔を向ける。
「それやったら、ヤバイやろ。」
二人でクスクス笑う。
もし、本当に火事なら、午後の授業が無くなったらいいなぁ、なんて、お互いに数学嫌いの身なので、架空のピンチを想像しつつ、無い無い、そんなこと、とジョークのように喋りあった。 端的に言うと、
体育館が燃えた。
運動場の片隅に全校生徒を集め、状況説明が行われると、先程までとは打って変わって、笑う者は誰もいたかった。にやけ面が初期設定の、助平、浦賀でさえ口元は、緩んでいなかったから大したもんだ、火事。 校長先生が、この異常事態に対してのこれからを、熱く語り終えると生徒は、それぞれの教室に帰された。
多分、校長先生の話しをまともに聞いていられたのは、余程の大人か、余程の真面目か、あるいは、事態の大きさに気付かない余程のとんちんかん、くらいの人々だろう。とんちんかんなら元々、話しを聞くことすら出来ないかも知れないが。
皆、その人々を除いた
皆、が気になって、気になって仕方が無いこと。
放火犯は、ダレか。
体育館に火を放ったのはダレか。
外部の犯行?
そんなの、ある訳が無い。
1ヶ月前から、ずっと、続いていることじゃないか。
ボヤ騒ぎなんて。
この学校、
紅葉中学校、
終わったな。




