6-C 出張! こちら関城大豪邸!
5秒で分かる前回のあらすじ
「アッフルウxッチ!!(大きな声)」
「でっ……でっ——!」
「「でっかあああああああああい!」」
私とすぐるは、自分たちの背より高い、鉄の門扉の前で叫んだ。
そう、現在私達がいるのは————
————関城千薔薇様御邸宅!
「……す……すごい……お城みたい……」
珍しく、百合ちゃんも目を丸くしている。
それもそのはず、門の向こうには大きな噴水が待ち構えており、さらにその向こうにあるのが、国会議事堂にも負けないほど横に縦に体長が大きい、円錐形の屋根をいくつも被った豪邸だったのだ。テーマパークの真ん中にありそう、と言っても過言ではないぞ。
「……日本に……こんなの建ってて大丈夫か……」
「鬱穂は一体何を心配しているんだ」
「……日本って土地ちっちゃいのに……こいつらに喰われたらどうすんだよ……」
「喰われないから安心しろ! とりあえず、そろそろピンポン押すぞー」
そうすぐるが言い、門の横にあったインターフォンを押そうとした。
すると、横からスルッと百合ちゃんが手を伸ばした。
「……私が押したい」
「なんだよ百合! 子供か!」
「……子供だけどなにか」
それを見て、私もうずうずし始めたので二人の間にダイブした。
「私も押すぞォ!」
「え⁉︎ ちょ、アルカ⁉︎」
「……ほら、アルカも言ってるから。すぐるどいて」
「なんでだよ⁉︎ 誰が押してもいいだろ⁉︎」
と、言いながらどうしても人差し指を退かせないすぐるの腕を、百合ちゃんが抑えつける。わいわいと騒ぎながら、お互いに強引に腕を伸ばし、そして抑え合うのを繰り返した。
「——よ、よし!じゃあ正当にじゃんけんだ!」
すぐるが私達の手を両手で抑えて、そう叫んだ。
「おー!」
「……仕方ない」
私達は、数歩下がって4人が円になるように立った。
「…………え、おれも……?」
私達の中で、突如鬱穂くんが唸った。
それにすぐるがすぐさま反応した。
……すぐるだけに、なんちって。
「え、違うのか?」
「う、うんと…………」
鬱穂くんはちょっとだけ俯いて、黙り込んでしまう。
みんなで少し待っていると、やっと彼が顔を上げ、拳を胸の前辺りまで上げた。
「……お、おれも、押したい」
言えたじゃねえか……
「じゃ、決まりだな。じゃんけんするぞ!」
すぐるの合図で、私達は同時に拳を振り被った。
「「最初はグー!」」
4人が同時に叫んだ時、垣根の間から、一つの人影が飛び出してきた。
「ぐおおおおおおおらあああああああ‼︎ ガヤガヤうっるさいわああああああああ‼︎」
「「ひええええええええええええええええ⁉︎」」
*
「——先程は失礼致しましたァ! いやはや、千薔薇様のお客サンでしたとは!」
そう私達に深々と頭を下げたのは、丸メガネをかけたメイド服のお姉さんだった。
若草色の、胸部まで伸びた髪の毛をフィッシュボーン型に結っている、一見落ち着いた雰囲気の人に見えるが、口を開いて出てきたイントネーションは関西寄りであった。
「いえいえ、私達も騒いでしまってすみません!」
私はそのお姉さんにお辞儀を返した。先ほど垣根から飛び出してきたのは、この人である。
そして、お姉さんの横で腕組みをしているのは、正真正銘この豪邸の主、関城千薔薇さんだ。
「本当ですわ! 全く、垣根から飛び出したら、お洋服が汚れてしまうではありませんか!」
「え……そこっすか……」
お姉さんが苦笑いで彼女を見た。
ちなみに今私達がいるのは、先ほどの門をくぐった先、つまり関城さんの家の中である。恐らくここは玄関なのだろうが、まず広さがウチの30倍はあるし、壁も床もピカピカに輝いていて眩しい。
と、そんな中、関城さんが私達に向かって口を開いた。
「皆様、ご紹介が遅れましたわ。こちら、メイドの世良という者でしてよ」
「セラです!よろしゅうですわ!」
め、めいど?
めいどって、冥土? あの世のこと?
「んなわけねえだろ。お手伝いさんとか、使用人のことだよ」
すぐるが私の頭を軽く叩いた。それじゃあ、お手伝いさん……ってことは……
「人を金で雇うアレですか⁉︎」
「酷い言い方!」
「人を雇うって、とんでもねえ額を毎月毎年払わなきゃいけないんだよ! それを雇うということはとんでもねえ金を持ってなくちゃダメなんだよ! だから関城さんはメイドさんを雇ってるということは、とんでもねえお金持ちであって、で、、。、え……あれ……?」
「いかん! アルカは自分が貧乏すぎるから、関城家との生活の温度差を感じ取ることによって前頭葉が機能しなくなってる!」
私の肩を激しく揺するすぐる。それはいいんだけどさ、耳元でそのクソデカボイスをカマされると鼓膜が痛いんだぞ。
そんな時、我々の隅に潜んでいたはずの百合ちゃんが、ひっそりと口を開けた。
「……ぁの、その…………ぁ……やっぱぃぃや……」
もじもじと両手を遊ばせながら、私の背中へ隠れてしまう。そんな彼女を覗き込むように、すぐるは視線を落とした。
「どうした百合」
「……なんでもない」
「なんだよ、言い始められたら気になるのが人間のサギってやつだろ?」
「……サガ、ね。すぐる、無理に難しい言葉使おうとしないで」
呆れたようにため息を吐いた後、一呼吸置いてから百合ちゃんは顔を上げた。
「……その、セラさんはわかるけど……」
名前を呼ばれてぴくりと反応するセラさん。しかし、言葉の矛先が自分ではないことを察したのか、瞬時に口を閉ざす。
「なんで伏見那智もいるの……?」
「————え? ワタシなのだ?」
糸目&メカクレ&萌え袖&銀髪ツインテールの少女は、関城さんの車椅子の後ろで首を傾げた。
「ワタシは関城サマのシモベなのだ!」
「し……シモベ……?」
百合ちゃんが困惑したように眉をひそめた。そのあと、大理石の詰められた床に目を向けて黙り込んでしまう。そんな彼女の代わりに、私が口を開いてみることにする。
「ええっと……伏見さん、シモベってどういうこと……?」
すると相手は余った袖を振り回して、その糸目で私を捉えた。
「シモベはシモベなのだ! 関城サマに仕えるのだ!」
「非公式やろ」
伏見さんの横から、セラさんがジト目を返した。それでも伏見さんは嬉しそうにぴょんぴょこ跳ねている。それならばと私はまた質問を述べてみる。
「えっと、それじゃあ伏見さんは関城さんと一緒に住んでるの?」
「え! 違うのだ!」
「そうね、それは違いますわ」
そうか、違うんだ……じゃあなんで休日の昼間からこの屋敷に居るんだろう。
くるくるに巻かれた髪を右手で払い、関城さんが続ける。
「伏見さんは朝早くからうちに来て、私の身の回りの世話をしてくださるのよ。車椅子を押してくださったり、車椅子を押してくださったり……ええっと、そうね……車椅子を押してくださったりしてくださいますの」
「車椅子しか押してねえじゃねえか」
すぐる! 口が悪い! ツッコミもほどほどにね!
「車椅子を押すと関城サマはあんまんを買ってくれるのだ! 別にあんまん目当てじゃないけど、くれるもんは貰ってやるのだ!」
「すぐるに勝る口の悪さ!」
伏見さんはどっちかというと人聞きの悪い言葉を使ってるだけなんだよなあ。
誰か彼女に正しい教育をしてあげてくれ!
「ま、まあ、そう言うことですわ……そ、そうそう、せっかく来てくださったのですから、私の家を案内して差し上げますわ!」




