5-E 出動! 天災の天才はタダの天際!
5秒で分かる前回のあらすじ
「ギャグ漫画に2割は必ずあるしんみりタイム」
【————緊急出動命令。直ちに武装をし、指定の場所に向かってください。】
軍基地のスピーカーから、ソレイルさんの声が響いた。
それと一緒に、エルが咄嗟にエフェークオスを確認し始めた。
「————! 悪魔……!」
少し驚いた様子を見せたエルの視線の先、つまりエフェークオスを、私も一緒に覗き込んだ。
「『ハイジン4体、悪魔1人』……?」
私が首を傾げると、エルが答えてくれる。
「やっとアルカディアの役員が出てくれたってことだね」
「はっ! なるほど! そういえばそうだ!」
私はポンと両手を叩いた。そういえば、今までハイジュウやハイジンはいっぱい出てきたけど、アルカディアの悪魔は見たことがなかった。
なるほど、今回はエル達にとっては、なにか手がかりが掴めるチャンスなのかも。
「エル! 私も行くよ!」
するとエルは、目を丸くして私を見た。
「そ、それはダメだよ。アルカは危ないし——」
「だってマニさんは負傷してるんだよ⁉︎ 代わりの戦力……とはいかないけど、でも、いないよりマシだよ!」
「でも————」
困り眉のエルに喰い入るように、軍基地のアナウンスが流れ始めた。
【緊急出動命令、緊急出動命令——って、“緊急”って言ってるんだけど。マニ以外は全員早く出動をしなさい】
*
「——いた」
エルは、その辺に立ってる一軒家の屋根から、人気のない道路を見下ろす。
……って、おい、「その辺」ってなんだよその辺って。もっと清く正しく地の文を書け、筆者。
「アルカは正面から行って。僕は背後から行く」
「わかった……って、そういえばソレイルさんは?」
私は辺りを見渡したが、彼女の電光版顔はどこにも見当たらない。
「ソレイルは戦闘員じゃないんだ。そのかわり情報処理や、俯瞰からの指示とかは彼女に任せてる」
「フカンとはなんぞや?」
「空や天井から観察することだよ」
そう言ってエルは、なぜか私たちの足元を指差した。
その指先を辿ると……蜘蛛のような、脚の長い小さな何かが蠢いていた。
「…………蜘蛛? ロボット?」
それは、胴体は缶詰めのようなタブのついた、背の低い円柱形。その缶詰めの側面からはえているのは、細長い、黒くて節のある脚が六本。それぞれが一本ずつ、細かく動いている謎の物体だった。
「そう。蜘蛛の形の、探索機だよ。ソレイルは遠くにいたまま、それを動かしているんだ」
「マジ⁉︎ そ、それはハイテク・ハイカラ・ハイブロー‼︎」
彼はクスリと微笑んだ——のも束の間。彼は再び道路を見下ろして、すぐに真剣な顔になってしまった。
「よし。アルカ、好きなタイミングで行っていいよ」
大きくて暖かい手が私の背中に置かれた。
すると、何かに気がついたように、彼が急に振り向くと、柔らかく、目を細めて笑った。
「大丈夫。僕がサポートするから」
私は力強く頷いた。
そして、いつも彼がそうしたように、前傾姿勢で屋根を勢いよく蹴る。
そうするとあっという間に、目標物が目の前に迫った。
——ザクッ!
銀色の巨体。その胸に槍を突き刺した。
——バキンッ!
私の槍の先端で、ハイジンの核が割れる音がした。
私が顔を上げると、もう一体のハイジンと目が合った。
『……イポカーシス』
人間の肉声に近いような、意識すればそれとは少し異質なような声が、その巨体から発声された。
彼の手には、モコモコした毛に覆われた、天生物が抱えられ——いや、摘み上げられている。
このままアルカディアの手に渡したら…………あの天生物は、確実に、ハイジュウにさせられてしまう!
逃すまいと私は状態を右へ傾ける。そうすると、ふとなにかが気になった。
——もう一人、『悪魔』がいない。
今この場にいるのが、倒れたハイジンと起きているハイジンの二体のみ。
確か、屋根から見ていた時は、彼らの他にもう一人いたはずだったのだ。
「…………気になるけど、とりあえずは!」
私は槍を構え直す。次の突きは躱されてしまった。連続でそう上手くいくわけがない。
「………っくぅぅぅっ‼︎」
私はすかさず方向転換し、もう一度攻撃を試みる。
「——ダメだ! アルカ、止まれ!」
不意に、どこからか声が聞こえた。
エルの声だ。ハイジンを跨いで、私の前方にいるようだ。
なぜ彼が止める? ハイジュウの発生阻止は彼らの大事なミッションの筈じゃ……
「アルカ! ゲートが開いてる!」
またエルが叫んだ。
「……ゲート……?」
私が辺りを確認すると、ハイジンの進行方向に、黒い穴のようなものが空中にできているのを見つけた。なるほど、あれは確かにゲートだ。
ゲートとは、今いるところから家や基地に瞬間移動することができる、魔法で作った、トンネルのようなものだ。
恐らく、ハイジンが逃げる為に作ったものだろう。つまり、向こう側はアルカディアの基地かどこかに、繋がっている筈だ。
このままハイジンに帰られたら——天生物も巻き込まれてしまう!
「絶対逃すかァァァァァァァァッ!」
私は、迷わずハイジンの胸部目掛けて飛びかかり、槍を突き刺す。
今度は、きちんと刺さったようだ…………だが、問題はそのあとだった。
慣性の法則。私と天生物は、衝撃の方向に、そ、あくまでも重力にのっとって————
「アルカ‼︎」
——ハイジンと一緒に、暗いゲートの中に、呑み込まれてしまった。
「の、のわあああああああああああああああ⁉︎」




