家来、気付く(エピローグ)
唯依は二人の活躍と、恋人同士になったという報告を受けて、ギャーギャーわめいた。
「やっぱり咲希ちゃんばっかりずるいです! 親友だと思ってたのに、裏切ったわね!」
中条に寄り添ってデレデレしているメイドさんが言う。
「唯依さんも自分に素直になって、ただ願えばいいのに」
中条をゲットして余裕のある美夜は、やや上から目線だった。
「……こうなったら、『私も』先輩の彼女にしてください! 咲希ちゃんの邪魔はしないから、先輩を共有しましょう!」
「それは名案だな」
と、大悟が言うと、咲希が大悟の尻をつねる。
「と、言うのは冗談だ……あはは。こんど友達を紹介してやるから、そいつで我慢しろ」
唯依はムーっと膨れる。
「よかったら、私の親友をご紹介させていただいても? 私と同い年ですから、多少年齢差はありますが、事業で成功して悠々自適な日々を過ごしている男です」
中条がそう提案すると、美夜もうなずく。
「芳野家のお嬢様が付き合うなら、そういう方のほうが釣り合うかもしれないわね」
えー、おじさんでしょ~と、唯依。ちょっとへこんだ顔の中条。唯依をにらむ美夜。大悟はなんだか寂しそうな顔になる。
「小早川のお嬢さんと俺じゃ、やっぱり釣り合わないよな……」
咲希はクスっと笑って言う。
「パパが、なかなか見所のある若者だって言ってたわ。パパが若かった頃とそっくりだって」
咲希は「そうそう」と言って大悟の部屋から出て行き、大きな封筒を抱えて戻ってきた。
「これ、パパの会社の奨学金制度だって。跡継ぎをしてもらうから、大学に入ってしっかり勉強してくるようにって言ってたわ」
父親の公認を得られたようなものだから、大悟の表情も明るくなった。しかし、
「俺、大学なんて入れるかな~? 卒業もギリギリだったし……」
「じゃあ、一浪して私達と同じ大学に行きましょう! 私が家庭教師してあげます!」
大悟は唯依の志望校を聞いて「無理だ……」と肩を落とした。咲希も志望校は一緒だった。
「ちょうど旦那様のほうの仕事も一段落したので、私も協力しますよ、佐藤君。一日十時間もやれば、まだまだ取り返せるはずです」
中条はサラッと一日十時間などと言う。咲希も唯依もウンウンと微笑んで首肯している。
「頑張ってね」
と、言いながら、美夜だけは気の毒そうな顔をしていた。かと思えば、中条の背中に隠れてウププっと笑った。
「まあ、他にすることもないし、一丁、やってみますか」
まだ「仕方がない」という顔の大悟に、唯依は悪戯っぽく提案した。
「先輩が無事に合格したら……先輩の言うことなんでもきいてあげます」
上目遣いをしてウフ~ンと色香を漂わせる唯依。美夜は面白がって言う。
「大悟君はそれまでにお嬢様と経験を済ませちゃうから、あんまり魅力的なご褒美にならないんじゃないかしら?」
咲希はヒイっと飛び退いて、
「しないしない、絶対しない!」
と、大慌て。
「そんなことでは、唯依さんに取られちゃいますよ?」
「私はむしろ、そっちのほうが大歓迎かも。……じゃあ、模試の成績が上がったら、ご褒美を」
大悟が生暖かいため息をついていると、咲希がゲンコツをはる。
「もてる男はつらいわね」
と、美夜がからかう。
大悟はふと、「ウーン」と伸びをして、
「幸せだな~」
と、満足げに言った。
「どうしたの? いきなり」
咲希が突っ込みを入れる。
「いや、なんとなく。でも、気持ちいいから咲希もやってみたら?」
咲希は言われたとおり伸びをして、
「あ~しあわせ~」
と、言う。唯依が続き、美夜が続いて、中条までが参加した。
「なるほど、幸せとは本来こういうものなのかもしれませんね。美夜ちゃん、僕はいま、とても幸せです」
中条が真顔でそんなことを言うものだから、一同は大はしゃぎするのであった。




