友人の部屋にて
第2部を始めます。まずはオープニングから
修司は、休日の昼間に友人の松元信久の住まいへと向かった。松元とは大学時代からの付き合いで、互いに気心が知れている仲だ。修司の手には、松元に頼まれて買ってきた文庫本が何冊かあるが、ジャンルはどれもバラバラだ。松元は気になった物語は手当たり次第に読む人間だった。
アパートの三階、修司は松元の部屋のインターフォンを押した。
「おう松元、田中だ。いるか?」
少し間があって、ドアが開き、松元が顔を出した。
「よう、田中…わざわざ悪いな。まぁ、上がれよ」
招かれた部屋にはぎっしりと本が詰まった棚とテーブル、そしてノートパソコンがあった。
松元は修司に座布団を勧めた後、キッチンから湯気の立つお茶と、近くのスーパーで買った和菓子を差し出た。
「ああ、お構いなく…で、俺に用って何だ?」
修司は頼まれて買ってきた本と領収書を彼に渡して、金を返してもらうと、さっそく本題を切り出した。松元は机の引き出しからA4の紙束を取り出した、何かの文章が印刷されている。
「実はな、ちょっと小説をいくつか書いてみたんだけど…お前に読んで欲しくてさ…で、感想を頼みたいんだよ」
「ん?感想…ね。 まぁ、俺でよければ…って言うか、この間ネットに投稿したとか言ってなかったか?」
「あれはな、他作品をネタにした二次創作だよ。こっちは俺がゼロから考えた、俺の作品」
松元は紙束を修司に差し出した。
「ふーん、そうなのか。どれどれ?」
興味をそそられながら最初のページを開いた。すると、修司の目が文字を追うにつれ、表情が微妙に変わっていく。
「ふんふん…ん? んん?…おいおい…」
修司のページをめくる手が止まり、眉をひそめた。
「なぁ…どうだ?」
松元が身を乗り出して尋ねてきた。修司は紙束を一度テーブルに置くと、溜息を吐いた。
「お前よ、これ…『救い』があんまり…つーか、はっきり言って無いな。所謂『ざまぁ』の要素はあるけどよ…それに、この展開は…」
「ああ…。ま、そう言う反応になるよな」
松元は苦笑いしながら、頭をかいた。
「なんともまぁ…」
修司はもう一度紙束を手に取ると、物語を最初から読み直し始める。




