三つ巴のライダー世界
ここは仮○ライダーが世界征服を狙う悪の組織と戦う。そんな世界。
ある日2号ライダーが味方であるライダー協会を裏切り、悪の組織「魔王軍」に寝返った。人間関係に疲れたのである。自由で静かな世界を得るためボス魔王の右腕として暗躍する2号。ライダー協会を追い詰めいよいよ世界征服が目前に迫ったその時、異世界から侵略者が訪れた。
魔王軍とライダー協会に続く第3勢力として戦場に波乱を巻き起こしたその組織の名は「オトシヤミー」、謎の生物兵器を召喚する派手な衣装の組織である。
・世界征服のチャンスを邪魔された魔王軍。
・ピンチを偶然にも救われなんとか立て直すライダー協会。
・謎の第3勢力、オトシヤミー。
怒ったボス魔王は2号に命令を出す。
「オトシヤミーを壊滅させろ!世界征服はそれからだ!指揮はお前に任せる!」
2号は困った。オトシヤミーは意外にも結構強いのである。生物兵器はあらゆる攻撃が効きにくい。
物理、電撃、水、炎、ライダーとしての攻撃はダメージを与えることはできても、致命傷にはならなかった。つまりとどめがさせないのである。今まで何度も逃がしている。ライダー協会の乱入も面倒くさい。変身を解きとりあえず街を歩く。銀縁メガネの黒髪短髪、悩める長身のお兄さんといった感じである。
「はぁ…どうすりゃいいんだよ…」
これでは気分転換にもならない。何もかもが上手くいかない。脳裏に浮かぶのは計画を狂わせるオトシヤミーといつも乱入してくるライダー協会の連中ばかり。心底憎たらしい。
「倒し方も分からないのに壊滅させろとか言ってくるボスもボスだが。はぁ…」
2度目のため息。ボス魔王は気分屋なのである。
どうしたものか。2号は引き続き頭を悩ませる。
「ねぇねぇ」
「ねぇ、そこのキミ」
「ちょっとさ話をしようよ」
そんな時、2号は自分に向けて声をかけられていることに気づいた。しかし気づいただけである。今の2号が返事をするはずがない。2号の思考の海はマリアナ海溝より深いのだ。細かいことは気にせずそのまま2号は足を進めることにした。
「あれ?キミだよキミ」
「ねぇってば、ねぇ、聞こえてるんでしょ」
「おーい、聞こえてる?」
「あれぇ、おかしいな。おーい、おーーーい」
いやうるさい。本当にうるさい。一体なんだこいつは。
結構周りに人がいるのだが人の迷惑とか考えたりしないのだろうか。
2号は自分がどこの組織に所属しているのか忘れている様子である。しかしうるさいのは本当のことであった。流石に反応するべきかと視界をちらりと横に向ける。しかし声の主らしき人物は見当たらなかった。ここで2号は気付いた。そう、悪質なイタズラをされたのだと。
「…クソ、イタズラかよ」
「失礼な。イタズラなんてするものか。」
2号は驚いた。本能的に後ろを振り返る。しかし誰もいない。1人でオーバリアクションを取る2号は振り向き姿すら様になっている。側から見れば変人であるが無駄にカッコイイ。変人に周囲の視線が突き刺さるその変人を眺める視線は1秒もしないうちに元に戻る。しかし2号の驚きはすぐには収まらなかった。
(この声は、自分にだけ聞こえている)
2号はそう判断した。しかしなぜ自分にだけ声が聞こえるのかは全く分からない。敵の攻撃にしては害意が弱すぎるし、ボスからのメッセージかとも思ったがボスがテレパシーを使えるなんて聞いたことがない。
(テレパシー…使えるのか?)
一旦2号は路地裏に移動して話をしてみることにした。
「…おい答えろ!先ほどから俺に話しかけくるお前は誰だ!目的はなんだ!言え!」
「おっと、聞こえてるじゃないか。それなら話は早い。僕は知っているんだ。キミは今、オトシヤミーを倒したいと強く思っている。でも倒す方法が分からないと、そう悩んでもいる」
2号はまた驚いた。そのとおりだ。でもこの声はなぜそんなことを知っているのか。
「お前は誰だ!なぜそれを知っている!」
「僕には分かるんだよ。悪に対抗したいという、強い正義の気持ちが!星のキラメキのように光って見えるんだ。今僕の姿を見せるよ。」
空間が一瞬ブレた後目の前に現れたのは、手のひらサイズの小さな動物である。大きな耳と小さな体、2等身のウサギのような生物である。あと宙に浮いている。
「うぉ!なんだお前」
「キミは正義の心を持っている。僕には分かるんだ。多くの人々を幾度も守ってきた経験が、君にはあるんじゃないか?」
「え?ん、まあ、そんな時もあったな。うん」
嘘はついてない。
「僕はオトシヤミーと同じ世界からきた精霊だと思ってくれていいよ。奴らの横暴には困っていたんだ。いなくなったと思ったらまたこんなところで悪事をはたらいている。」
へえそうなんだ。
「そこで正義の心を持つ人に、オトシヤミーに対抗できる力を渡すため、僕はこの世界にやってきたんだ」
へえそうなんだ。
「キミはちょっと条件から外れるんだけど、それを差し引いたとしても、とんでもない素質をキミは持っている。キミはかなり強い力がある。僕には分かるんだ」
まあライダーに変身できるくらいだしな。その力がこいつには見えるんだろう。
「既に僕の仲間達が何人かパートナーを見つけているのだけど、その中でもキミの適正は段違いだ。強要はしないけど、もしよかったら僕と一緒にオトシヤミーを倒してくれないかな?」
ふむふむ。つまりこいつと協力すれば、オトシヤミーに対抗できる力が貰えるってわけか。その力を使えばオトシヤミーを壊滅させることができるかもしれない。少し怪しいがオトシヤミーに対する具体的な対処法が思いつかない現状、試しにその力とやらを見てみるのも良いんじゃないだろうか。
「…よし、分かったいいだろう。その話、承けようじゃないか」
「え!本当かい?!キミ程の力がある人が協力してくれるなら本当に心強いよ!それじゃあ、とりあえずコレを渡しておくね!」
ポンッという軽い音と共に赤い棒が表れる。ビニール傘程度の長さでこれも空中にふわふわ浮いている。近づいて手に取ってみる。
「これは…杖か?俺は別に足が悪いってわけじゃないぞ」
「これはいわゆる魔法のステッキってやつだよ。持ち手にボタンがあるだろ?それを力ある者が押すと、その力の大きさに応じた威力の魔法が発動するんだ。」
魔法か。ライダーベルトの変身も魔法のようだが、あれはれっきとした科学の結晶だ。発達しすぎた科学は魔法に見えるって話だ。それはいいとして
「このボタンを押すと魔法が使えて、その魔法がオトシヤミーに効果抜群って考えでいいのか?」
「簡単にいうとそうだね。ん?なんか疑ってる?本当だよ。魔法は僕の世界では当たり前なんだ。奴らが召喚してるヤミオチターも魔法で呼び出してるんだ。」
あの気色悪い生体兵器はヤミオチターっていうんだな。なんかかわいいな。
「ところでお前は名前はなんていうんだ?俺は……2号という。」
本名は伏せておく。オトシヤミーを壊滅させるまでの関係だ。深く関わることはないだろう。
「僕の名前かい?ふふん、僕はポメチっていうんだ。よろしくな2号!」
「ああよろしく。ポメチ」
とそこそこの挨拶を交わしたそのとき
「きゃあぁぁぁあああ !!!!」
ドカンと大きな音と共に、大通りの方から大量の悲鳴が聞こえてきた。オトシヤミーか、それとも魔王軍か、どちらかは分からないが人々を襲っているらしい。オトシヤミーならこのステッキの力を試すチャンスだ。
「様子を見に行くぞ!」
「さすがだね。やっぱりキミは僕の最高のパートナーだよ」
駆け出す俺にポメチがふわふわとついてきた。
多分続かない