最新モデルステッキ
魔王軍かオトシヤミーか、そのどちらかが街で騒ぎを起こしているらしい。
ステッキの使い心地を確かめるため、早速駆け出した2号。
逃げる人々の流れを見て騒ぎの中心を一瞬で目定めると、方向を変えてさらに速く走り出す。
現在ライダーの象徴ともいえる移動手段を持ち合わせていないため徒歩での移動ではあるが、それでも生身の人とは思えない速さで駆け抜けるあたり、さすがはライダーだといえる。
「そういえばだ」
2号はふと気になって後方のポメチに話しかける。
「お前、俺がこの杖のボタンを押すと強力な魔法が発動するって言ったよな?」
「え、ああ。うん、そうだね。でもそれがどうかしたのかい」
「いや、その、具体的にどんな魔法なのか聞いてなかったと思ってな。実際に使う前に、何ができるかくらいは教えてくれてもいいんじゃないのか。」
ライダーでさえ倒せなかったオトシヤミーの生物兵器。
そいつに有効な魔法。
この細い杖にどれほどの力が秘められているのか2号は純粋に気になった。
あと何も知らずに使うのは怖い。
2号は手に持つ赤い杖をチラッと見る。
「それもそうだね。確かに説明不足だったよ。」
ポメチがそう言葉を返して、走る2号の前まで飛んでくる。そして続けてこう言った。
「でもちょうど到着したみたいだし、百聞は一見に…ということで、まずは使ってみるのもいいんじゃないか?」
それを聞いて2号が周りを見渡すと、あたり一面がどんよりとした雰囲気になっていた。
なんとなく毒々しい空気が漂っている感覚。
騒がしく逃げていた人々も地面に倒れ込みぐったりとしている。
オトシヤミーが生物兵器を呼び出す時、必ずこの気色悪い空間が生み出されることを2号は知っていた。
原理は知らない。
まあ、つまるところ今回の騒ぎを起こしたのはオトシヤミーだと確定したわけである。
確かに話を聞いてる場合じゃなさそうだ。
◯
ビルが立ち並ぶ大通りのど真ん中、2号の目がオトシヤミーの姿を捉えた。
幹部の男の後ろ姿と生体兵器ヤミオチター。
加えて取り巻き雑魚が多数いる。
しかし今は暴れているわけではないようだ。
「出やがったな。」
小さく呟く2号。
影に隠れて銀縁メガネの位置を整える。
黒髪短髪の怪しいお兄さんといった感じである。
とりあえず様子を見ることにした。
確かアイツはオトシヤミーの幹部の中でも最弱と言われる男「ウイング」。
飾りのように大きくて黒い翼が特徴で、紫のマッシュヘアをしている。
年齢は人間感覚で10代前半と思われる小柄な男だ。
翼を広げることなく宙に浮いているあたりあの翼はやっぱり飾りなんだろう。
そしてウイングの真下には、おもちゃのような太い手足が生えた巨大な立方体が見える。
目鼻のない口だけの怪物。
何度も倒し損ねたアイツこそが生物兵器ヤミオチターだ。
周囲には人型の取り巻き雑魚を従えている。
この雑魚も生体兵器の取り巻きだからか、ぶっ飛ばして叩き潰しても無限に復活して襲いかかってくる。
意味がわからん。
「ポメチ。ちょっといいか。」
「なにかな?2号。」
奴らが動かないなら今がチャンスだ。
「ここからアイツらを攻撃したい。かなり距離があるがどうだ?できるか?」
背後からの強襲である。
遠距離攻撃を望む2号の質問にポメチは答える。
「もちろんできるさ。それならデフォルトの定格魔法がぴったりだね。試してみようか。」
「デフォルト?」
なんだそれは。定格魔法ってなんだ。なんか不安になってきた。
「まあまあ。そんな顔しないで。とりあえず杖の取っ手のボタンを1回押してみてよ。」
ん
まぁ
やってみるか。
2号はよく分からなかったが、先端を下に向け胸の前で杖を構えた。
1つだけ設置されたボタンは杖を握った右手のちょうど親指の位置にある。
2号は迷わずにボタンを押した。
(boon)
「うおっ」
何だこれは。
構えた杖の上に5つの光の球が浮かび上がったのだ。
それら謎の光はクルクルと回転しており、杖を動かすと一緒に付いてきた。
「ポメチ!どうすんだこれ!」
小声で話しかける2号。
「まあまあ落ち着いて。これがこの杖デフォルトの定格魔法、『ファイブスター』だよ。」
デフォルトとは。
定格魔法とは。
聞いてみるか。
「あぁ、すまんが、デフォルトってのがちょっと」
光の球はまだ回り続けている。
「ん、あぁ。ごめんごめん。また説明不足だったね。」
そしてポメチが簡単に説明を始める。
「実は、僕らがパートナーに渡すこのステッキは誰でも魔法を使えるようにデザインや性能が統一されていてね。使える魔法っていうのはもう決まっているんだ。定格魔法っていうのはそうやって統一、パターン化された魔法のことを指すわけだね。」
「おぉ、なるほど」
「うん。そしてボタン一つで直感的に操作できるように設計されているから、使い勝手も抜群。」
「直感的ねぇ。」
「そう。さらに定格魔法は様々な種類があって、杖の設定を変更するだけで簡単に魔法が扱えるんだ。デフォルトは初期設定の定格魔法ってことだね。」
「だいたい分かった!でこれからどうするんだ?」
赤い杖と5つの光弾を再び身体の前で構える。
さすがはライダー。様になってる。
「簡単さ。思いっきり振れば良いんだ。そうしたら振った方向に球が放たれるはずさ。」
「なるほど。そういうことか!」
ブン!と勢いよく2号が杖を振る。
勢いそのままに一つだけ放たれた光の球は一直線にオトシヤミーに向かっていく。
そして取り巻き雑魚に直撃、芸術的な爆発を引き起こす。
(ドガァァァン!)
「ヤミィ!?」「ヤミィー!?」「ヤミィ!?」「ヤミィー!?」
「ななな!?なんだ!!」
吹き飛ぶ雑魚、怯むヤミオチター、驚くウイング、それぞれの反応を見て2号は、
「なかなかやるじゃねぇか!」
大変満足していた。
「うわ…爆発て…」
ポメチが何か言っている。
気にせずそのまま残り4発を連続で撃ち放つ。
(ズガガガガガガドガァァン!!!!)
「ヤミィィィィィ!!!!!!!!!!!!!」
「ちょっと!?なな、な、なんだよ!?」
「また新しい敵か!?」
地面が割れ、土煙が上がる。
「おいポメチ。これなかなか使いやすいな。」
素直に褒める2号。
初めての魔法。
初めての遠距離攻撃。
手応えは最高であった。
「キミがそう言ってくれると僕も嬉しいよ。その杖、一応僕の世界の最新モデルなんだよ?」
「そ、そうなのか?」
ちょっと楽しくなった2号。
でもここでふと気付く。
先程の攻撃、オトシヤミーではない声が聞こえた気がするのだ。
「ちょっと待ってくれ!!そこに誰かいるのか!?」
そしてそれは気のせいではなかった。
最弱幹部登場




