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第十三章 暗雲

あまりに誤字脱字が多かったので修正。


ついでに、フィーアの性別に希望がある方おりますか~?

 今思えばアストの作った朝食を堪能し、探偵として引き受けた仕事のために外へ出た時点で全ては始まっていたのかもしれない…。


 探偵事務所の二階窓に最近引っ越してきた隣人兼恋敵がぶら下がっている幻覚を見た後、指定された場所へと急ぎ足で向かった。しかしその時、視界に余計なモノが映ってしまった…。


 自分たちの自宅兼事務所があるこの住宅街…そこで唯一人の気配が皆無の路地裏にそいつは居た…。気配を消しながら目を凝らして見ると、そいつは腰に刀を差しており、和服と洋服を足して二で割ったような緑色の服装をしていた。その制服は帝国軍に所属していた者ならば誰もが知っているものだった…。 


「……皇族警護部隊の『草薙衆』…?」

 


 キルミアナ帝国という名前からも分かるとおり、この国には皇帝が居る。当時は帝国の実権を皇族が完全に掌握しており、まさに独裁状態であった。ところが長い歴史と数回の革命を経る内に、皇族はその力を次第に薄れさせていった。そして二百年前に政権が民衆の手に渡って共和制政治へと体制を変えてからというもの、皇族とは何の実権も持たない唯の国の象徴に成り下がっている。

 


―――そんな皇族達のことを遥か昔から守護し続け、帝国軍内部からも異質な部隊として一目置かれているいるのが皇族警護専門隠密機動部隊『草薙衆』である…。


 フィノーラが所属していた『対魔装甲機兵団』と同じく帝国軍屈指の精鋭部隊の一つであり、その歴史は恐ろしいくらいに長い。基本的に表舞台に現れることは無く、皇族に仇名す存在を人知れず闇に葬るため具体的な実力は未知数だ…。


 しかし政権が皇族の手を離れたにも関わらず、この部隊が解体されることは無かった…。何故なら、彼らの実力が世界規模で見てもトップクラスであり、王国軍に対抗しうる数少ない戦力の一つだったからである…。



(そんな奴らがこんな場所で何を…?)



 こちらが見ていることに気付くことも無く、その草薙衆の男は路地裏で携帯端末を手に誰かと連絡を取っていた。しかし、何を話しているのか確かめるために聞き耳をたてようとしたところで男は端末を仕舞い、何処かへと行ってしまった…。


 誰も居なくなった路地裏を見つめながら、フィノーラは一人呟く…。


 

「……何か嫌な予感がする…」



 ここは帝国の街なのだから帝国の人間が居てもおかしくは無い。もしかしたら、さっきの男はただ単に休暇中なのかもしれない……隠密部隊の制服着たままだったけど…。



「まぁ、いいわ。とにかくさっさと仕事に行かないと…」



 指定された時間が迫りつつあることを思い出し、フィノーラはそれ以上その事に関して考えるのやめた。彼女は依頼主の元へと向かうべく、その場を後にするのだった…。 










◇◆◇◆◇◆◇◆










 今日の依頼は夫の浮気現場を抑えろというものだった…。早いとこ愛しのアストと結ばれたい自分に対する悪意を感じたが、報酬に目がくらんで結局引き受けた。


 さっさと浮気現場の証拠を自前のカメラに収め、さっさと帰路につく。まだ正午を少し過ぎたばかりなので時間が随分と余っている。ミレイナの所にでも寄り道しようかな…?


 と、考えたところでふと思った…。



「…アストはどう思ってるのかしら?」


 二年にも及ぶ同棲生活を送っているにもかかわらず、アストとはキスより先に進めていない…。正直な話、原因は思いのほか初心ウブな自分のせいでもあるのだが…。


 略奪愛上等なライバルが何人か居ることに少しだけ不安を感じるが、彼とは相思相愛のつもりである。そんな彼と一緒に居続けといて『結婚したいなぁ』という感情を抱かない方がおかしいのだ。そうとも、彼とはちゃんとした形で結ばれたいのだ…ちゃんと結婚したいのだ…!!



「目標の貯金金額まで、あと少し。そうすれば、アストと…!!」

 アストが一緒に居てくれるのは自分の我儘が原因…だからアストのことは自分が養う!!という理由で随分と積極的に仕事をして金を稼ぐようになったが、今では只の建前になりつつある…。


 確かに当初は本当に負い目があったのでそれを理由に荒稼ぎをしていたが、何時の間にか共働きの日常もそれなりに良いものだと感じるようになった。けれど同時に、先程も言ったが彼と正式に結ばれたいという感情も強くなっていったのである。それに何かしらの形で今までの感謝の気持ちを伝えたいという願望も残っていた…。  




―――そこでフィノーラは思いついた。もし自分とアストの気持ちが同じだったら…結婚しようと考えていたのなら、自分が結婚式そのものを彼に用意してみせる!!と…。


 


「こういうのって普通は男の人がやるものかもしれないけど…私はアストにいっぱい大切なものを貰ったから、これぐらいのお返しはしないとね…♪」



 彼が自分と出会って人生に光が差したように、自分もまたアストに救われた身である。アストと出会うことがなければ、今みたいな楽しい日常を送るなんてことはありえなかった…。


―――王国か帝国、敵か味方の二択だけ


―――死と破滅以外何も無い空白地帯


―――軍がくれるのは武器と命令のみ


 アストと出会わなければ自分は死ぬまで、あの不毛で錆びれた世界観の中に囚われ続けていたことだろう。今思うとゾッとしたが、同時に彼と出会えた幸せを改めて感じることができた…。

 


「ふふふ、アストがどんな表情を見せるのか楽しみ♪」



 貯金が目標の金額に到達することとアストが驚く様子に思いを馳せるフィノーラ。その様子は傍から見ればとても幸せそうなものだった。


―――まさか件の相手が自分と同じことを考え、同じことをしているとは思わず…




「よ~し!!ねこじゃらし亭に突撃~!!」



 

 妄想による幸福感で若干テンションがおかしくなったフィノーラは、この気持ちをスパークさせるべく恋敵であり友人のミレイナの元へと駆け出した……のだが…。




「ッ!!……何でまた視界に入りこんで来るのよ…」




―――朝見かけた草薙衆の男を再び見つけてしまった…。



 そいつは人通りの多い昼間の商店街の大通りの隅を歩いていた。途中やたら通行人の視線を集めていたが、あまりに有名過ぎる制服のせいで誰も声を掛けようなんて輩は一人もいなかった…。最終的に男は通りの細い抜け道に入っていき、その姿をくらました…。


 一日にそう何度も遭遇できるような部隊では無い筈なのだが…。それにしても朝といい今のといい、本当にこんな街中で何をしているのだろうか?二度目の目撃となると流石に無視できない…。


 

「…ちょっと調べていきましょうかね」



 そう言って彼女はねこじゃらし亭に向けていた足を止め、男の消えていった方へと向かった…。










◆◇◆◇◆◇◆◇◆










「…気のせいか?」


「どうした?」


「いや、誰かに尾行された気がしたんだが…」


「万が一そうだとしても特に問題は無い。さっさと終わらせるぞ…」



 抜け道を通り、路地裏へと出たところにひっそりと佇む一軒のボロイ酒場。その薄汚れた店の中で、二人の男が何かを話し合っていた。店の中にはこの二人の男とバーテンダーの3人しか“残って”おらず、実質貸切状態である。だが、そんなのは当たり前だ…。







―――その3人以外、店の中に居た人間は全員首から上が無くなっているのだから…






「さて、マスター…」


「ッ!!」



 店の客全員の命を刈り取り、犠牲者の血で赤く染まった刀を突き付けながら口を開く。マスターと呼ばれた中年の男は、先程目の当たりにした惨劇とそれを引き起こした男の一人に恐怖して体をビクリと震わせた…。 



「そう何度も客に注文の内容を繰り返させるもんじゃないぜ?あんまり客をイライラさせ過ぎると……店、潰されるぞ…?」





―――その瞬間、刃が店主の肩を貫いた…





「アグッ!?」


「けど、俺は物分かりが良い方だからな…もう一度だけ注文してやる。あ、店と一緒に潰れたいのなら止めはしねえぞ?」


「く、くそ…」



 突然やって来た二人の草薙衆。こんな一部の常連客しか来ないボロ店になんの用かと思えば、二人は開口一番に意外なことを要求してきたのだ。昔ならその要求に対して即座に首を縦に振ったかもしれないが、今では少し事情が違った…。


 なので『少しだけ考えさせて欲しい』と言ったのだが、そう言った途端に彼ら二人は腰にぶら下げた刀を抜き放ったのだ。そしてその後、突然の行動に戸惑う店主の目の前で二人はこの地獄絵図を瞬く間に作り出したというわけなのだが…。



「あ、あんたら軍の人間だろ…!?こんなことして唯で済むと……!?」


「何のためにこの制服着てきたと思ってやがる。お前みたいなドブネズミと俺たち…信憑性が強いのはどっちの言葉なのかは、言わなくても分かるよな…?」


「ッ!!お前らここでのことを無かったことに……!?…グア!?」



 驚愕と怒りで声を荒げようとするも、刺された刀をさらに捻じりこまれた激痛に襲われ口を噤む…。



「さぁ、店主…オーダーの時間だ……この店の名物と言われている…」









―――“アルビノの飛鳥族”を引き渡してもらおうか…?








「…クッ!!あの子をどうする気だ!?」 


「そういきり立つなよ?ただ、俺たちはその子を保護しに来ただけだって…」



 保護?あっさりと店内の人間を皆殺しにするような奴が保護?…笑えない冗談にも程がある。そもそも皇族を護るのが仕事である筈の草薙衆が亜人の身柄を保護しにくる時点でおかしな話なのだ。



(意地でもコイツらにあの子はやらん!!)



 街の中を行く当ても無く彷徨い続けているところを自分の家に連れて行き、そのまま引き取るような形で一緒に居たが……昨日今日現れた見知らぬ奴らに渡したくない程度には愛着が湧いていた。だからこそ、自分はあの子を守らねば…!!


 幸か不幸か本人は先程、買い出しに行かせたばかりなのでここには居ない…。あわよくばコイツらが諦めて帰るまで帰ってこなければ……。







―――ガチャッ






「おじさん、ただいま~」


「ッ!?……神様、お祈りは毎日欠かさずにしてた筈ですよ…?」



 なんて間の悪い奴…。うまくいけばやり過ごせたろうに、あの子の声が聴こえた途端に目の前の男は口角を吊り上げてニンマリと笑みを浮かべていた…。



「…これは悪い事をしたな。店に無いものを頼んだって出せないもんなぁ?」


「お…おじさん…?これは、いったい……?」



 その言葉と同時に振り向くと、視線の先には地獄絵図と化した店内にショックを受けている10歳前後の子供が棒立ちしていた。瞳は赤く、髪は真っ白だった。そしてその背中からは髪の毛と全く同じ色をした二枚の翼が生えていた…。


―――まさしく捜していた人物そのものだ…



「やぁ、初めまして…。そんなに怖がらなくても平気だよ?俺たちは君を迎えに来たんだ…」


「え…あ……あ……」



 草薙衆の男は笑顔で語りかけたが、例の子はその笑顔の下に隠れている本性を感じ取り恐怖で震えていた…。その様子に男は苛立ち、店主は今だとばかりに声を張り上げる。




「逃げろ『フィーア』あぁ!!」



「ッ!!」


 

 フィーアと呼ばれた飛鳥族の子供はその言葉と同時に踵を返し、全速力で店の外へと逃げ出した。その光景を見た草薙衆の男は舌打ちし、隣に立っていたもう一人と目を合わせる。もう一人の男は一度だけ頷き、そのまま後を追うように店の外へと走り出した…。



「邪魔しやがって…。言い残すことはあるか?」


「……くたばれクソ野郎…」




―――言い終わると同時に店主の首は宙を舞った…。




「……無駄な時間を使ったな。俺も急ぐとしよう…」



 刎ねた店主の首に一瞥もくれず、店の出口に向かう。どうやら同僚がガキに追いついたらしく、外の方から騒ぎ声が聞こえてきた…。


 

「全く、手間とらせやがって。さっさと終わらせて一杯やりに行きた…」



 そう言って外に出るべくドアノブに手をやり、扉を開いて外に出た瞬間…。








―――先程ガキを追いかけた筈の同僚が自分目掛けて飛んできた…。





「ッ!?うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!?」



 突然のことに驚いたが、反射的にその場を飛び退いてギリギリで回避した。ところが、躱せて安心する間もなく…。



「ぶふぅげぇ…!?」



―――腹部に鈍い衝撃が走った



 よく見ると、自分の腹部に誰かの足が突き刺さっていた。草薙衆である自分たちは生半跏な鍛え方はしておらず、並の攻撃なら屁でもないのだが…。



(なんだこの威力は!?)



 明らかにパワーが化け物の領域である。胃の中身をギリギリ出さずに済んだがそれでもキツイ…。 



「…てめぇ、何者だがひゃぶあぁ!?」



 言い切る前に今度は顔面につま先が突き刺さる。腹部に喰らったせいでくの字に曲がっていた筈の体が勢いよくエビ反り状態になった…。


 その時点で彼は既に意識が朦朧としていたが、襲撃者は容赦してくれなかった。よろけて無防備な状態のところを2,3発追撃の一撃を加えた後、トドメとばかりにゲーセンでも中々お目にかかれない16連コンボを叩き込む…。



―――ドガガガガガガガガガガガガガガゴキリグシャドゴォ!!




「ッ!?ごああああぁぁぁぁぁぁああああぁぁあっぁぎゃぁああああ!!!?」




 薄れゆく意識の中、草薙衆の男が最後に見たのは……自分に外道乱舞をお見舞いする紅いジャケットを羽織った茶髪の少女だった…。

まだ誤字が残ってるかも…

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