斬首ループ
俺は全身を魔術封鎖で拘束され、担架で運ばれていた。
担架を持つ兵士たちの会話が聞こえる。
「こいつがあの『魔人』ウェイトリー・ブラムス? マジかよ……」
「ぜったいに触れるなよ? 殺されても知らんぞ」
「ひぃっ……や、やべぇな」
毎回毎回、好き勝手言いやがって……。
俺の名はウェイトリー・ブラムス。
ただの魔術師だ。
『魔人』なんて呼ばれているが、本人としてはまったくピンとこない。
ちょっと戦争で働きすぎた、それだけのことだ。
そもそも、頼んできたのは王の方だ。
勝ったら用済みとばかりに地下牢へ放り込みやがって……。
理不尽だとは思う。思うが――まあ、よくある話だ。
こうして天井を眺めるのも何度目かな……。
正確な回数は数えるのをやめた。途中で意味がなくなったからだ。
五桁には届いている、たぶん。
最初のうちはいろいろと試した。
魔術封じの腕輪は、三年かけて魔力を流し続ければ壊せることもわかった。
抜け出す方法も、交渉も、脅しも、ありとあらゆる手を打った。
怒りに任せて、手当たり次第に焼いたこともある。
後悔はしていないが、特に意味もなかった。
どうせ最後には、あいつが出てくる。
女神、とかいう存在だ。
名前は知らない。聞く気にもなれない。
ただ、俺がある程度暴れると、どこからともなく現れて、静かに俺を無力化する。
説教もない。怒りもない。
ただ、困ったような顔で、俺をまた地下牢へ戻す。
腹が立つを通り越して、もはや様式美だ。
処刑台に乗せられ、黒い布を顔にかぶせられる。
大勢の見物客の騒ぐ声が聞こえた。
執行官が高らかに宣言する。
『――魔人、ウェイトリー・ブラムスを斬首刑に処す!』
はいはい。
視界が途切れ――、気づけばまた、見慣れた地下牢の天井だった。
冷たい石の感触。湿った空気。どこかで水が滴る音……。
「はぁ……」
死んでも死んでも、終わらない。
怒る気力も、とうの昔に使い果たした。
ただ、ぼんやりと思う。
どこか遠い地で、誰も俺のことを知らない場所で、うまいものを食って、酒でも飲んで、気ままに生きてみたい。
行ったことのない街を歩いてみたい。
名前も知らない料理を食ってみたい。
面倒な戦争とも、王とも、あの女神とも、一切関係のない場所で。
それだけだ。
俺が望むのは、本当にそれだけなのに――。
全14話です。
今日からお昼12時に投稿します。
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