可愛い男の娘同士の甘々な恋愛小説を長文で書いて!
放課後の教室は、やわらかい夕焼け色に包まれていた。
窓際の席で頬杖をついているのは、白く透き通るような肌とふわりとした銀髪を持つ少年――湊。ぱっと見は女の子と見間違うほど可愛らしい顔立ちだが、制服の着こなしはどこか無防備で、本人もそれをあまり気にしていない。
「……またそんな顔してる」
背後から、くすっと笑う声がした。
振り向くと、そこには同じクラスの柊が立っている。柔らかな栗色の髪に、優しく細められた瞳。湊とは対照的に、どこかお姉さんみたいな雰囲気をまとっている男の娘だ。
「どんな顔だよ……」 「“寂しいです”って顔」
柊はそう言って、隣の席に自然に腰を下ろす。距離が近い。肩が触れそうなほどに。
湊は視線を逸らした。 「別に……寂しくなんかないし」
「へえ?」 「ほんとだって」
拗ねたように言うと、柊はふっと微笑んで、そっと湊の頬に手を伸ばした。
「でも、顔は正直だよ」
指先が触れた瞬間、びくっと肩が跳ねる。
「ちょ、ちょっと……!」 「ほら、こんなに冷えてる。待ってたんでしょ、僕のこと」
図星だった。
今日も一緒に帰る約束をしていたのに、柊がなかなか来なくて。なんとなく教室に残っていた自分が、ちょっと情けなく思えてくる。
「……遅かったじゃん」 「ごめん。部活の子に捕まってて」
柊は申し訳なさそうに笑って、今度は湊の手を包み込む。
「でもちゃんと来たよ。湊を置いて帰るわけないでしょ」
その言葉は、ずるいくらい優しかった。
湊の胸がきゅっと締め付けられる。
「……当たり前じゃん」 「うん、当たり前。だって――」
柊は少しだけ顔を近づけて、囁く。
「好きな子を放っておくなんて、できないもん」
一瞬、時間が止まったみたいだった。
「な、な……っ!」
顔が一気に熱くなる。逃げるように顔を背けるけど、手はまだ握られたまま。
「い、今さら何言ってんの……!」 「今さらじゃないよ。毎日思ってる」
柊の声は穏やかで、でも真っ直ぐだった。
「湊、可愛いし。ちょっと不器用だし。すぐ強がるし」 「うるさい……」 「でも全部、好き」
ぎゅっと手を握られる。
逃げられない。
逃げたくない。
湊は観念したように、小さくため息をついた。
「……ずるい」 「何が?」 「そんなこと言われたら、こっちだって……」
言葉が詰まる。
けど、柊は急かさない。ただ、優しく待っている。
その空気が、またずるい。
「……好きに決まってるじゃん」
ぽつりとこぼした声は、とても小さかったけど。
柊にはちゃんと届いた。
「知ってた」 「は!?」 「顔に書いてあるもん」
くすくす笑う柊に、湊は真っ赤な顔で睨む。
「もう帰る!!」 「あ、待って待って」
立ち上がろうとする湊の腕を、柊が軽く引く。
バランスを崩して、そのまま――
ぽすん、と柊の胸に倒れ込んだ。
「……っ!?」
一瞬で心臓が跳ね上がる。
近い。近すぎる。
柊の体温が、鼓動が、全部伝わってくる。
「ほら、やっぱり可愛い」 「やめろって……!」
抵抗しようとするけど、優しく抱きしめられて、力が抜けていく。
「ちょっとだけ、このまま」 「……」
不思議と、嫌じゃなかった。
むしろ、安心する。
「……ほんと、ずるい」 「うん。でも離さないよ」
耳元で囁かれて、湊は観念したように目を閉じる。
夕焼けが二人を包み込む。
静かな教室で、重なる体温と心。
「……帰ろっか」 「うん。一緒に」
手を繋いで立ち上がる。
今度は湊の方から、少しだけ強く握り返した。
それに気づいた柊が、嬉しそうに微笑む。
「ねえ、湊」 「なに」 「帰りに寄り道しよ。アイス食べたい」 「……子どもかよ」 「いいじゃん。湊と一緒なら何でも楽しいし」
また、そんなことを言う。
でも今度は、湊も少しだけ笑った。
「……しょうがないな」
甘くて、やわらかくて。
世界が少しだけ優しくなるような、そんな恋だった。




