傭兵部隊に入った主人公の可愛い男の娘。任務に失敗し窮地から辛くも脱出する。
傭兵部隊に入ってまだ日が浅い、主人公の“可愛い男の娘”――リオは、戦場の空気にまだ慣れきれていなかった。
細身の身体に不釣り合いなほど重い装備。砂埃の匂いと、遠くで鳴る銃声。
それでも彼は、この世界で生きるために銃を握っていた。
今回の任務は、小規模な武装勢力の拠点偵察と破壊工作。
簡単な仕事のはずだった。
「油断するなよ、新人。ここは“簡単な任務”ほど死ぬぞ」
先輩傭兵の言葉を、リオはどこか遠いもののように聞いていた。
そして、その油断はすぐに現実になる。
――作戦は失敗した。
罠だったのだ。
敵はこちらの侵入を読んでおり、拠点内部に誘い込む形で包囲網を完成させていた。
「……っ、まずい……!」
爆発音。崩れ落ちる壁。
視界が白く弾け、次の瞬間には銃弾が耳元をかすめていた。
通信は途絶。味方の姿も見えない。
「撤退ルート……どこだ……!」
地図は破れ、方角も曖昧。
頼れるのは、自分の足と勘だけ。
リオは息を殺し、瓦礫の影を伝って走った。
細い身体はこういう時だけ妙に役立つ。隙間に潜り込み、影をすり抜けるように移動できるのだ。
だが追手は執拗だった。
「見つけたぞ!」
背後から響く声。
銃声が連続で鳴り、壁に火花が散る。
「くそっ……!」
リオは転がるように路地へ飛び込み、即席の遮蔽物の裏へ。
心臓が痛いほど跳ねている。
――ここで終わる?
そんな考えが一瞬よぎる。
いや、違う。
「……まだ、終わってない!」
彼は小さく息を吸い、腰の閃光手榴弾を抜いた。
ピン。
光と轟音が狭い路地を満たす。
一瞬の白い世界。
その隙にリオは全力で駆け出した。
足が焼けるように痛い。肺が裂けそうだ。それでも止まらない。
瓦礫の街を抜け、崩れた外壁を滑り降り、川へ飛び込む。
冷たい水が全身を打つ。
――そのまま、流れに身を任せた。
どれくらい流されたのか分からない。
気づけば銃声は遠く、空は静かだった。
岸に這い上がったリオは、泥と水にまみれながら空を見上げる。
「……生きてる、か」
かすれた声。
任務は失敗した。仲間も無事か分からない。
それでも――生き延びた。
リオはゆっくりと拳を握る。
「次は……絶対に、やられない」
傭兵としての戦いは、まだ始まったばかりだった。




