黒人サムライの弥助。戦国時代からタイムスリップして現代へ。そうだガンプラを作らせよう!
この小説はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません
現代の東京、秋葉原。
人混みの中に、明らかに“時代が違う”男が立っていた。
黒い肌に、戦国武者のような佇まい。腰には刀――ただし、当然ながら現代では完全に浮いている。
彼の名は弥助。
戦国の世で織田信長に仕えたとされる異国の武者は、ある戦の最中、不可解な光に包まれ――気づけば、この時代に放り込まれていた。
「……ここは、いずこだ」
人々はスマートフォンを向け、ざわめく。しかし弥助は一歩も動じない。むしろ、敵陣に潜入したときより静かに周囲を観察していた。
そのときだった。
路地の奥に、小さな店が見えた。色とりどりの箱が積まれ、武具にも似た精巧な“何か”が並んでいる。
店内に入った瞬間、弥助は息を呑む。
そこには――鎧のようでありながら、明らかに機械の構造を持つ“戦士”たちが並んでいた。
「これは……兵器か?」
しかし店主は笑って首を振る。
「これはガンプラですよ。組み立てる模型です」
その言葉の意味はすぐには理解できなかったが、ひとつだけ確かなことがあった。
“自分の手で作るもの”だということだ。
弥助は迷わず一つの箱を手に取った。
巨大な刀を持つ機体。どこか、かつての自分の姿に似ている気がした。
その夜。
静かな部屋で、弥助はニッパーを握る。
パチン。
戦場の音とは違う、乾いた小さな音。
パーツを外し、合わせ、組み上げていく。敵を斬るのではなく、形を生み出していく行為。
「……組む、か」
彼は初めて、“戦わない時間”に没頭していた。
数時間後。
机の上には、小さな“新しい武者”が立っていた。
かつて戦場で剣を振るった男は、静かにその完成品を見つめる。
「戦とは、壊すことではなく……作ることでもあるのかもしれぬな」
窓の外では、東京の夜が静かに流れていた。




