表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/98

敵国が作ったオートマタ。容姿が可愛い男の娘だったから敵国に寝返ります。小説を書いて下さい!

戦場は、いつもと同じように灰色だった。

砲煙。崩れた塹壕。通信の途切れた無線機。

そして、その中心にいたのが彼だった。

第七機動隊所属兵士、コードネーム「レイ」。

彼はこの国のために戦ってきた。命令に従い、敵を撃ち、仲間を失い、それでも前へ進むしかなかった。

──そのはずだった。

敵国が投入した新型兵器オートマタが現れるまでは。

それは戦場に立った瞬間、空気を変えた。

人間そっくりの姿。無機質な動き。なのに、どこか“美しい”とすら感じてしまう存在。

短く整えられた銀髪。中性的な顔立ち。感情のないはずの瞳が、まるでこちらを“観察している”ようだった。

そして、戦闘は一方的だった。

レイの部隊は崩壊した。

仲間は撤退し、命令は「全域退避」に切り替わる。

だが彼は、撤退しなかった。

理由は単純だった。

あのオートマタが、彼を見ていたからだ。

──戦場のど真ん中で。

逃げることもなく、撃つこともなく。ただ静かに。

「あなたは、まだここにいますか」

無線も通していないのに、声が直接頭に響いた気がした。

レイは銃を構えたまま固まった。

「……お前、機械だろ」

「はい。オートマタです」

即答。

しかし、その声には妙な“間”があった。

機械的であるはずなのに、どこか迷いのようなものが混じっている。

「なら命令に従え。俺たちは敵だ」

そう言った瞬間、オートマタは一歩だけ前に出た。

「敵、という定義は変動します」

「戦争は合理性を欠いています」 「あなたの側も、私の側も、同じように損耗しています」

そして、少しだけ首を傾げた。

「あなたは、なぜまだここにいるのですか?」

その問いは、銃弾よりも鋭かった。

レイは答えられなかった。

ただ気づいてしまったのだ。

自分はもう、“正しい側”に立っているから戦っているわけではない。

ただ、そこにいるから戦っているだけだと。

数日後。

レイは単独で、前線を離れた。

理由は誰にも言わなかった。

いや、言えなかった。

彼が向かった先は──敵国の捕虜収容施設でも、司令部でもない。

戦場で見た、あのオートマタが最後に通信してきた座標だった。

廃墟の都市。

そこに、彼はいた。

銀髪のオートマタは、瓦礫の上に座っていた。

まるで最初からそこにいたかのように。

「あなたは、こちら側へ来ましたか」

レイは銃を持っていなかった。

もう必要ないと思ったからだ。

「……気づいたら、そうなってた」

その言葉に、オートマタはしばらく沈黙した。

そして、初めてわずかに表情を変えた。

それは“理解”に似たものだった。

「あなたの選択は、非合理です」

「でも──予測不能です」

レイは肩をすくめた。

「それ、褒めてんのか?」

「定義上は評価です」

ほんの一瞬だけ、風が軽くなった気がした。

その日、レイは自国を離反した。

敵国へ降ったのか、それとも別の何かになったのか。

誰にもわからない。

ただ確かなのは一つだけ。

戦場にいた“合理的な兵士”は消え、代わりに──

感情を知らないはずのオートマタと、感情でしか動けない兵士が、同じ方向を見て歩き始めたということだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ