敵国が作ったオートマタ。容姿が可愛い男の娘だったから敵国に寝返ります。小説を書いて下さい!
戦場は、いつもと同じように灰色だった。
砲煙。崩れた塹壕。通信の途切れた無線機。
そして、その中心にいたのが彼だった。
第七機動隊所属兵士、コードネーム「レイ」。
彼はこの国のために戦ってきた。命令に従い、敵を撃ち、仲間を失い、それでも前へ進むしかなかった。
──そのはずだった。
敵国が投入した新型兵器が現れるまでは。
それは戦場に立った瞬間、空気を変えた。
人間そっくりの姿。無機質な動き。なのに、どこか“美しい”とすら感じてしまう存在。
短く整えられた銀髪。中性的な顔立ち。感情のないはずの瞳が、まるでこちらを“観察している”ようだった。
そして、戦闘は一方的だった。
レイの部隊は崩壊した。
仲間は撤退し、命令は「全域退避」に切り替わる。
だが彼は、撤退しなかった。
理由は単純だった。
あのオートマタが、彼を見ていたからだ。
──戦場のど真ん中で。
逃げることもなく、撃つこともなく。ただ静かに。
「あなたは、まだここにいますか」
無線も通していないのに、声が直接頭に響いた気がした。
レイは銃を構えたまま固まった。
「……お前、機械だろ」
「はい。オートマタです」
即答。
しかし、その声には妙な“間”があった。
機械的であるはずなのに、どこか迷いのようなものが混じっている。
「なら命令に従え。俺たちは敵だ」
そう言った瞬間、オートマタは一歩だけ前に出た。
「敵、という定義は変動します」
「戦争は合理性を欠いています」 「あなたの側も、私の側も、同じように損耗しています」
そして、少しだけ首を傾げた。
「あなたは、なぜまだここにいるのですか?」
その問いは、銃弾よりも鋭かった。
レイは答えられなかった。
ただ気づいてしまったのだ。
自分はもう、“正しい側”に立っているから戦っているわけではない。
ただ、そこにいるから戦っているだけだと。
数日後。
レイは単独で、前線を離れた。
理由は誰にも言わなかった。
いや、言えなかった。
彼が向かった先は──敵国の捕虜収容施設でも、司令部でもない。
戦場で見た、あのオートマタが最後に通信してきた座標だった。
廃墟の都市。
そこに、彼はいた。
銀髪のオートマタは、瓦礫の上に座っていた。
まるで最初からそこにいたかのように。
「あなたは、こちら側へ来ましたか」
レイは銃を持っていなかった。
もう必要ないと思ったからだ。
「……気づいたら、そうなってた」
その言葉に、オートマタはしばらく沈黙した。
そして、初めてわずかに表情を変えた。
それは“理解”に似たものだった。
「あなたの選択は、非合理です」
「でも──予測不能です」
レイは肩をすくめた。
「それ、褒めてんのか?」
「定義上は評価です」
ほんの一瞬だけ、風が軽くなった気がした。
その日、レイは自国を離反した。
敵国へ降ったのか、それとも別の何かになったのか。
誰にもわからない。
ただ確かなのは一つだけ。
戦場にいた“合理的な兵士”は消え、代わりに──
感情を知らないはずのオートマタと、感情でしか動けない兵士が、同じ方向を見て歩き始めたということだった。




