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プロモデラーが制作に行き詰まった際に立ち寄ったプラモ屋で可愛い男の娘に偶然出会い、昔の制作に対する熱意を再度灯す小説を書いて下さい!

薄曇りの午後。

プロモデラーの佐伯さえき 恒一こういちは、いつものように作業机の前で手を止めていた。

目の前には、ほとんど完成しかけた1/100スケールの戦闘機モデル。塗装は完璧、ディテールも緻密。だが――そこから先に、手が動かない。

「……違う。これじゃない」

何度目かの独り言が、静かな部屋に落ちる。

昔は違った。作ることが楽しくて、夜通しプラモデルと向き合えた。だが今は、仕事としての“完成度”ばかりが重くのしかかる。

気分を変えようと、佐伯は駅前の小さなプラモデル専門店へ足を向けた。

店内に入ると、懐かしいプラの匂いがする。

箱積みされたキット、工具棚、塗料の瓶。かつての自分が確かにここにいた気がして、少しだけ胸が軽くなった。

「いらっしゃいませ」

声のした方を振り向くと、そこにいたのは店員の少年だった。

柔らかな栗色の髪、整った顔立ち。淡いパーカーにエプロンを着けている。

そして何より、まっすぐこちらを見る瞳が印象的だった。

――男の娘、という言葉が頭に浮かぶ。

「何かお探しですか?」

「いや……ちょっと、気分転換で」

佐伯は曖昧に笑った。

少年はそれ以上踏み込まず、静かに棚の方へ視線を向ける。

「ここ、完成品もいいですけど、“途中の箱”を見るのも楽しいんですよ」

「途中の箱?」

「積まれてるプラモって、まだ誰の作品にもなってないじゃないですか。想像の余地があって」

その言葉に、佐伯は少しだけ引っかかるものを感じた。

少年は棚の奥から、少し古いキットを取り出した。

パッケージは色あせているが、どこか力強い機体のイラスト。

「これ、僕が初めて作ったやつなんです。下手くそで、塗装もはみ出してて」

そう言って笑う。

「でも、今でもたまに見返すと……楽しいんです。あの時の気持ち、思い出せるから」

佐伯はその箱を受け取った。

指先に触れた紙の質感が、妙に温かい。

「……君は、今でも作ってるのか?」

「はい。失敗ばっかりですけど」

即答だった。

その迷いのなさに、佐伯は少しだけ息を呑む。

“失敗ばっかり”

その言葉は、今の自分が一番避けていたものだった。

気づけば、少年は小さな完成品をカウンターに並べ始めていた。

塗装が歪んだ部分もある、合わせ目が少し見える作品もある。

だが、どれも不思議と生きていた。

「上手く作るより、“好きで作った”って感じが大事だと思うんです」

佐伯は無意識にその一体を手に取った。

雑さはある。だがそこには確かに熱があった。

机の上に並ぶ自分の“完璧すぎる作品”には、今、感じられなくなっていたもの。

――熱意。

胸の奥が、微かに軋む。

「……昔は、俺もそうだったな」

ぽつりとこぼすと、少年は少しだけ目を細めた。

「じゃあ、まだ続けられますね」

その一言が、妙に軽く、そして重かった。

佐伯は気づく。

自分は行き詰まっていたのではない。

“完成させること”に囚われて、始める楽しさを忘れていただけだ。

店を出る頃、空は少しだけ明るくなっていた。

手には一つの古いキットの箱。

ただそれだけなのに、なぜか重くない。

「また来ます」

気づけば、そう口にしていた。

店員の少年は軽く手を振る。

「はい。途中の箱、いっぱいありますから」

佐伯は小さく笑い、歩き出す。

その背中には、久しく消えていた“作りたい”という感覚が、静かに灯り始めていた。

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