戦場で出会った少年兵の男の娘は今日を必死に生きる小説を書いて下さい!
砲声は、遠くで鳴っているはずなのに、いつもすぐ耳元で炸裂しているように感じた。
崩れた建物の影。焼けた土の匂い。乾いた風が運ぶ砂塵。
戦場の端にあるその村で、俺は一人の少年兵に出会った。
最初は少女かと思った。
細い体つきに、長いまつ毛。汚れた軍服の上からでもわかる華奢な肩。だが声を聞いたとき、それが少年だと知った。
「……弾、まだ残ってる?」
その声は妙に落ち着いていて、年齢不相応に乾いていた。
彼は“男の娘”と呼ばれるような見た目をしていた。だがそんな言葉は、この地獄の中では意味を持たない。ただ、生き残るためにそうなってしまっただけだ。
「名前は?」
俺がそう聞くと、少年は少しだけ迷ってから答えた。
「リラ」
偽名か本名かもわからない。だがそれ以上は聞かなかった。
彼は戦場で生きる術を知っていた。物陰の使い方。銃声の間隔。水の匂いで安全なルートを判断する癖。
それは“子供の知恵”ではなかった。生き延びるために削られ続けた結果だった。
「どうして戦ってる?」
ある夜、廃墟の中で火を囲んだとき、俺はそう尋ねた。
リラは少しだけ焔を見つめてから、ぽつりと答えた。
「選べなかったから」
それだけだった。
でもその一言に、すべてが詰まっていた。
家族。村。奪われた日常。選択肢のない世界。
彼は銃を握る手とは別に、小さな布切れを大事そうに持っていた。汚れたリボンのようなものだった。
「それ、何だ?」
「昔……姉に結んでもらったやつ」
それ以上は言わなかった。ただ、指先で何度もそれを確かめていた。
翌朝、攻勢が始まった。
空が裂けるような爆音。地面が揺れ、壁が崩れる。リラは迷いなく走った。小さな体で、弾丸の雨の中を。
「こっち!」
彼の声は鋭かった。恐怖を押し殺した声だった。
俺は彼に引かれるように走った。
その途中、彼が一瞬だけ振り返ったのを見た。
怯えではない。
ただ、“今日を生きる”という一点にすべてを賭けた目だった。
戦いの終わりが見えた頃、リラは瓦礫の上に座り込んだ。
肩で息をしていたが、まだ目は死んでいなかった。
「……今日も、生きたね」
誰に言うでもなく、彼はそう呟いた。
俺は何も言えなかった。
彼の人生は、勝利でも敗北でも語れない。ただ、生き延びることだけが積み重なっている。
遠くでまた砲声が響いた。
リラは立ち上がる。
そして何事もなかったように銃を肩に掛ける。
「行こう」
その背中は小さいのに、妙に真っ直ぐだった。
戦場は今日も続いている。
だが彼は、その中で確かに“今日を生きる”ことだけはやめなかった。




