同意のもと、おっさんと結婚する可愛い男の娘の小説を書いて下さい!
夕暮れの街は、やわらかな橙色に染まっていた。
駅前の小さな広場。そこに立っているのは、少し背伸びしたようなスーツ姿の“おっさん”——いや、本人はまだ自分をそう呼ばれるのに慣れていない中年男性だった。
その前に、白いワンピースを揺らして立つのは、可愛い男の娘の青年。
風が吹くたび、長い髪がふわりと揺れる。
「ほんとに……いいのか?」
男が少しだけ不安そうに言う。
「うん」
即答だった。
彼の声は、驚くほどまっすぐだった。
「年齢とか、見た目とか、いろいろ言う人はいると思うけど……それでも、僕はあなたと一緒にいたい」
一瞬、沈黙が落ちる。
通り過ぎる人の声、遠くの電車の音、それらがやけに遠く感じられた。
おっさんは、少しだけ笑った。
「……そっか。なら、俺もちゃんと答えなきゃな」
ポケットから小さな箱を取り出す。
その動きは不器用で、少しだけ震えていた。
「最初はさ、ただ放っておけない子だなって思っただけだったんだよ」
「うん」
「でも気づいたら、放っておけないどころか……一緒にいるのが当たり前になってた」
箱が開く。
中には、飾り気のないシンプルな指輪。
「結婚してくれ」
風が止まった気がした。
男の娘は一瞬だけ目を見開き、それからゆっくりと視線を落とす。
迷いは、長くは続かなかった。
「……うん」
小さな声だったけれど、確かな声だった。
「僕も……一緒にいたい」
指輪がそっと左手に通される。
ぴったりと収まった瞬間、ようやく現実味が追いついてくる。
「これから、どう呼べばいい?」
「え?」
「旦那さん?」
その言葉に、男の娘は顔を真っ赤にして俯いた。
「……それは、まだ早いってば」
おっさんは苦笑する。
「じゃあ、ゆっくりでいいか」
「うん。ゆっくりでいい」
二人の距離は、ほんの少しだけ近くなる。
恋人でもなく、ただの他人でもなく。
これから“家族”になっていく途中の距離。
夕暮れの街は変わらないまま、しかしその中に確かに新しい物語が始まっていた。




