水着回デートも終盤。帰路に着く男の娘同士の小説を書いて下さい!
夕暮れの海岸線は、さっきまでの喧騒が嘘みたいに静かだった。
オレンジ色に染まった空と、ゆっくり色を変えていく海。
砂浜にはまだ昼の名残が残っているのに、風だけが少し涼しくなっている。
「……もう、こんな時間か」
白いフリルの水着にパーカーを羽織った男の娘が、少し名残惜しそうに空を見上げる。
その隣で、淡いブルーの水着の男の娘は、靴を片手に持ったまま砂を払っていた。
「楽しい時間って、ほんと早いね」
「それ、言わないでよ。余計帰りたくなくなる」
そう言いながらも、二人とも足は自然と同じ方向に向いている。
駅へ続く細い遊歩道。
波音がだんだん遠くなるたびに、さっきまでの距離感が少しだけ思い出される。
「ねえ」
歩きながら、白い方が小さく声を出す。
「ん?」
「今日さ……」
そこで一度止まる。
言葉を選ぶみたいに、少し間が空く。
「ずっと一緒にいたよね」
ブルーの男の娘は少しだけ笑う。
「うん。ずっといた」
「なんかさ」
「うん」
「当たり前みたいになってたの、ちょっと怖い」
その言葉に、相手の足がほんの少しだけゆっくりになる。
「怖い?」
「いや、変な意味じゃなくて」
慌てて続ける声が少しだけ上ずる。
「……こういうの、終わるのかなって思ったら」
そこでまた、言葉が切れる。
沈黙。
けれどその沈黙は、気まずいものじゃなかった。
ブルーの男の娘は、少しだけ前に出て、並ぶ位置を合わせる。
「終わらないでしょ」
「え?」
「今日だけじゃないし」
さらっと言う。
それが妙に自然で、妙に強い。
「また来ればいいじゃん。海でも、どこでも」
白い方は一瞬だけ目を瞬かせる。
「……簡単に言うね」
「簡単だよ」
「ほんとに?」
「うん」
即答。
そのまま、少しだけ視線を逸らして続ける。
「だってさ、今日楽しかったじゃん」
「……うん」
「だったら、またやればいい」
それだけ。
でも、それだけがやけに心に残る。
遊歩道の途中、小さなベンチが見える。
二人はなんとなくそこに座った。
隣同士。距離はもう、意識しなくても近い。
「ねえ」
白い男の娘が、少しだけ笑いながら言う。
「帰る前にさ」
「ん?」
「ちょっとだけ、静かすぎない?」
「そう?」
「うん。逆に落ち着かない」
ブルーの男の娘は、少しだけ考えてから。
何も言わずに、指先だけをそっと伸ばす。
触れるか触れないかの距離で止める。
「……これでいい?」
「それ、ずるい」
「なんで?」
「落ち着かない理由増やしてる」
そう言いながらも、指は離さない。
やがて、電車の遠い音が聞こえてくる。
帰る時間が、近づいてくる合図みたいに。
「ねえ」
「ん」
「また、行く?」
「行く」
即答だった。
間もなく。
それだけで、十分だった。
二人は立ち上がる。
駅へ向かう道を歩き出す。
さっきよりも少しだけ近い距離で。
手はまだ、完全には繋がっていないのに。
離れる気配も、もうなかった。




