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グリーンステーキと宇宙トラックドライバー

 銀河の果て、長距離ワームホールから少し離れたところにあるステーキ店。メニューはステーキ一品。チリチリと温められた鉄板に載った分厚いステーキのみ。ドリンクも水しかないが、厨房をくるりと囲むようにある12席のカウンターは、長距離宇宙トラックドライバー達で、いつも賑わっている。


 かく言う長距離宇宙トラックドライバーの私も、近くを訪れる際には必ず立ち寄る常連客。なんてったって、ここで出されるステーキはとても美味しい!宇宙一と言ってもいいくらい美味しい!思い出しただけで口の中が涎で溢れるくらい美味しい!


 モルルン人のマスターが一人で切り盛りしているが、接客も完璧で素晴らしい!カウンター席の真ん中にある厨房から、なんかこう、うにょうにょいっぱいある手?足?を器用に使って、席に着いたらおしぼしを、頼んだり瞬間に水を、焼き立て熱々のステーキを、四方八方手早く提供してくれる!できることなら毎日でも通いたい!


 今日も近くを通る仕事が入ったので、仕事の合間にステーキ店へGO!ここいらの仕事を優先的に斡旋して貰えるようにと、会社のオペレーター様に菓子折りを渡して懇願したおかげで、毎日とは言わないまでも、定期的にマスターのステーキが食べられる。幸せだ。幸せを嚙み締めつつ、宇宙船のドッキングハッチを抜け、エアロックを開けると、緑色のマスターが笑顔?で出迎えてくれた。


 これまでモルルン人と接する機会がなかったので、マスターの色々すべてがよくわからないけど、頭?らしき所にある?8つの目?はいつも優し気で、きっといいモルルン人なんだろう。なんてったってマスターのステーキからは「美味しいステーキを食べて貰いたい」という思いをしっかりと感じる。そんなマスターはいいモルルン人に決まっている。


 席についてしばらくすると、チリチリと温められた鉄板にドーンと載った分厚いステーキがサーブされた。色は緑色。今日はグリーンステーキの日だ。


 テーブルに置かれた箱からナイフとフォークを取り出して、分厚いステーキを切り分けて一口頬張る。グリーンステーキはサクサクした歯触りで、噛みしめる度に濃厚な肉汁があふれ出て、ハーブを思わせるさわやかな香りが鼻を抜ける。美味しい。もっともっとと逸る気持ちを抑えつつ、ゆっくりじっくりマスターのステーキを味わう。幸せだ。長距離宇宙トラックドライバーをやっていて本当に良かった。


 長距離宇宙トラックドライバーでもなければ、このステーキ店に通うことは、なかなか難しい。長距離ワームホールの利用料金もそれなりにかかるし、時間もかかる。観光地もなく、周りには他に店もない。


 今までは仕事で通り過ぎるだけだった銀河の果て。そこにポツンと開店したマスターのステーキ店は、とても良心的なお値段のステーキがで宇宙一美味しい。この辺りを通る長距離宇宙トラックドライバー達がこぞって通うのは当然といえる。


 グリーンステーキを2枚平らげて至福に浸っていると、向かい側に座っている新人らしき長距離宇宙トラックドライバーが携帯端末で画像記録した。マスターのグリーンステーキを。その瞬間、新人の両隣に座っていた顔なじみのドライバー達が、新人の肩をむんずと掴んでお手洗いへと消えていった。


 ステーキが冷める前に新人は戻ってきたが、若干顔色が悪い。まあそんなのはマスターのステーキを食べればすぐに治る。新人と共に戻ってきたドライバー達に目線を送ると、力強く頷いてくれた。よかった。話が通じる新人で。


 マスターは気づいていないが、このステーキ店の常連客である長距離宇宙トラックドライバー達には密約がある。


 それはこのステーキ店の情報を決して外部に漏らさないこと。万が一マスターの宇宙一美味しいステーキが、宇宙グルメサイトや宇宙ネットワークなんかに載ったりしたら、金と時間を持て余した食いしん坊たちが宇宙中から押し寄せて、大繁盛間違いなし。そうすると我々が仕事の合間に立ち寄ることができなくなる。そんなのは嫌だ。マスターのステーキが食べられなくなるなんて絶対嫌だ。


 マスターがその辺りに疎いのをいいことに、我々はステーキ店の情報を隠匿することに成功。長距離宇宙トラックドライバー達の固い絆で、宇宙一美味しいステーキ店は銀河の果てでひっそりと営業を続けている。

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