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33・派閥争いみたいでめんどくさい

「いくら何でも不味いだろ」


 そんな梶の声を聞いて、ようやく僕も何か不味いのかもしれないと思う気持ちを抱いていた。


「良いんじゃない?教会騎士が魔獣を倒すのは国や冒険者への加勢として認められてるんだし、私たちは教会の依頼で動いてんの!グダグダ言われる筋合い無い」


 と、返す楠の声で、そうだと思い直したりしている。どちらが正しいのか僕にはよく分からない。ただ、脳筋さん曰く「加勢して文句言いう奴は居ない。教会依頼は他の奴らが先に戦っていれば、無条件でそいつらの成果として報酬は確約されている」って言ってたから、たぶん問題ないと思う。

 もし、脳筋さんの勝手な解釈だったとしたら、あの3人が止めてくれていたはずだから。


「だってよ、白川たちだろ?教会は良くてもあいつらが何言うか分かんねぇよ」


 と、それでも食いつく梶。楠はそんな心配は無用と何度も繰り返しているのだが、これで何度目だろう?


「まあ、良いんじゃない?高鉢は無事だったしねぇ~」


 といって栗原の腕が伸びてくる。僕は無駄な抵抗はしない。そして、こっちを睨む楠。


「そういう問題じゃないんだがな」


 と、栗原に抱きしめられた僕を見ながら言う梶。


「そんな心配したって、王国から抗議が来てないんだから、問題ないって」


 と、柏木も加わってくる。


「んな事言って、白川たちが攻めて来たらどうすんだ?」


 と、柏木にも食い下がる梶。


「お姫様と結婚したんでしょ?アイツ。魔物退治が終らないと、そんな暇もないんじゃない?」


 と、柏木も梶の懸念を軽くあしらってしまう。


 うん、別に横取りした訳じゃないから、白川も怒ってはいないと思う。不良って話は聞いたけど、カツアゲとかイジメの話は聞いたことが無い。不思議な事に、イジメている側を甚振ってるヤヴァイ奴って話を聞いた。それがイジメをエスカレートさせた話も聞いたけど、その後にイジメられてる奴を仲間に引き入れたとかいう話だった。

 加藤達が白川について行ったのも、きっとその話があったからだと思う。


 そんな考え事をしていると、栗原が僕に体重を掛けてくる。


「梶さあ、なんでそこまで白川警戒してんの?アイツって停学はあるけど、それで教頭や生徒指導と仲良くなったって不思議ちゃんだよ?」


 と、栗原が言う。


「それこそ何かあったんじゃねぇの?それから他の奴より基準が甘くなってたはずだ」


 と、梶もその事は知っているけど、なぜかは分からないらしい。


「ああ、それ、いじめられっ子助けたからだよ。イジメてた奴、顔が腫れ上がるくらい殴られてたって聞いたよ。いじめがひとつ消えたから教頭から感謝されてんじゃない?」


 という柏木。そうそう、そんな話を誰かから聞いた覚えがある。白川を「漫画みたいな奴」って言ってた気がする。


「病院送りにして見逃しとか、教頭甘すぎなんだよ」


 と、呆れる梶。でも、あれっていじめがバレるのが嫌で、白川にやられたって言わなかったからじゃなかったっけ?そう、言おうとして


「言わない方が良いよ」


 小声で栗原が僕に囁いた。見上げると彼女は微笑んでいた。


「ったく、お前らは」


 梶はそんな僕と栗原を見て呆れたように話を切り上げてくれたようだ。


 そして、梶が千葉や大池と共に虎さんたちと出発の打ち合わせを始めたところで、栗原がつぶやいた。


「病院行きになったのって、梶と同じ中学だった青山だっけ?本多のパシリだったらしいよ」


 と。


「ああ、そう言えば、梶って本多の幼馴染だっけ」


 と、隣で聞いていた柏木が付け加える。


 なるほど、僕と加藤に近い関係だったのか。加藤は中学からだけど、もし、立場が逆で、梶が赤石たちを助けて何か言っていたら、同じ様に騒いでいたかもしれない。せっかく異世界召喚されたっていうのに、高校の中の構図をそのまま持ち込まななくてもって思うんだけど。


「梶って赤石たちの話しは聞いてるはずだけど、どう思ってんだろ」


 と、楠が寄ってきて栗原を僕から引きはがす。


「ウワサ程度の受け止め方じゃない?ほら、あたしは白川とつるんでる米原(まい)とおな中だから、白川の話はみんなに結構はなしてるじゃん?」


 と、柏木が言う。ああ、そうか。僕が白川の話に詳しいのって柏木の影響だ。対して梶は本多っていルートから赤石側の話を聞いてるんだ。それが話が噛み合わない理由だったのかもしれない。


 まあ、それを言ったら僕らとも梶とも違う中学出身で、全く別のグループになる大池や千葉の場合、どうなんだろう?

 何だかややこしい話が僕らにも噴き出して来てる。赤石たち3人が他のメンバーやこの世界の人たちを捨て駒にして使捨ててるのも、そうした派閥みたいなものがあるからなのかもしれない。ちょっとよく分からないけれど。


「そう言えば、栗原ってこっち帰ってきてどこか行ったの?」


 そう、教会へ帰ってきた後、梶、千葉、大池は虎さんやメイドさんと組んで魔物討伐に向かう事が多い。僕は脳筋さんに連れられて行く状態で、楠が着いて来る。柏木はヒーラーだから教会騎士に着いて村々を廻ってるらしい。居残り組からも加わるとか。


「ん?地属性だから砦の修繕や改築に行ってるよ。だからなかなか会えない分、こうやって高鉢分を補給してるんじゃん」


 と、また抱き着いてきた。


「もう!めいは!!」


 また楠が引きはがしにかかる。


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