第五話: 陸上海賊が動き出すのちょっと前 番外編的なやつだけど
汚らしい初仕事をこなしている間に、シグレとケビンの対談。
「なぁ、あの子すごくね?真っ二つだぞ? んで、報酬の話なんだが」
「ああ、精霊使いとなると値段は付けにくいわね。やけに目立つのよ、タイミング的には厳しくなるな」
「おいおい、長年の協力関係に免じてくれねぇか?水精霊も使えやがるぞ?最近この街は沸点へ進行しているし、タイミングつったら逆にバッチリと思わねぇか?」
「そうわね、確かに最近はやたらピリピリしているよなぁ。ケビンとしては報酬分が良ければ引退先も贅沢に選べるよな?」
「バレてたんかい、そうだよこの街はもうまっぴらごめんだ。まだ生きてるっちゅー事は許してくれたんか、相変わらずのメギツネだ」
「あら、褒めてもボーナスは出ないよ?まあ、確かにあの子の今後の活躍は期待できそうだね… 引退の話だけど、君のような人材は正直手放したくはないのよ?受付の子と仲がいい噂も偶に耳に入るわ。一層のこと、陸上海賊に入ってみたらどうだ?」
「それっていわゆる断られないオファーってやつかよぉ」
「さぁ、どうかしらね」
「チェッ やっぱりお前さんには裏のない話ってできねぇなぁ わぁったよ、新団員の獲得おめでとうなぁ」
「おめでたいのはそっちでしょう?副団長」
「って おいおいまじかよ、一生下っ端の扱いと思わせておいてフクダンかよ、どうしたんだ急に」
「ケビンの言う通りよ、沸点へ進行しているのよ、そして、タイミング的には逸材を手元に」
そう言いながらシグレが戸棚から赤黒二角帽子を取り出し、手でぱぱっと叩いてほこりをふっ飛ばし、ケビンに渡す
「げっ おニューをもらう価値ねーのか俺、てか元の持ち主は?」
「ないわよ、君の為に前から準備してもらったものよ」
「…そういう事にしておこう… んで、初仕事は?」
「あら、飲み込み早いよね」
「何年間釣り合う商売してったら、ある程度はなぁ」
「留守だよ、ちょっとぐらいの旅に出る事にした。あの子と二人っきりで」
「おいおいおい、初日で責任者になれってか?流石に展開ははやくねぇかよぉ」
「そうだね、ケビンじゃないと無理な頼みかしら」
「わぁったよやり通せばいいんだろ?」
「最悪の場合、10日以上になるけど、頑張ってね」
そう言いながらシグレがケビンに同じ赤黒の模様をしたコートをケビンに羽織る
だがそのコートに付いていたのは、ほこりではなくシグレの甘酸っぱい香りであった。仮にとは言え、初日でカシラを務める事になちまった。連中に否認されなきゃ良いけど…まぁ使い長いし、なにせよシグレ様の勅命だかんなぁ。