まだ城にて・・・
ザドス王と、
ブラッディー・ベア夫妻を加えた、
俺たち一行は、城の中庭に移動した。
「フローラ、
私の声を、城の内部に送れるか?」
「ええ、出来ますわよ、『声送』良いですわ。」
『ザドス城に居る反乱軍諸君、私は第3王女のエルザだ、
私は今、城の中庭に居る。
病が癒えた父と、
汚らしい奸計から解放されたブラッディー・ベアも一緒だ、
頭の弱い諸君らに、
分かり易く言うと元S級冒険者1名、S級冒険者4名、
A級冒険者1名、他にも優秀な冒険者が数名居る、
今から10分間だけ、ここで待っているから速やかに出て来たまえ、
もし出て来ない場合は殲滅に乗り込むから、心してくれたまえ。』
城の中では侯爵に組していた傭兵たちがパニックになっていた。
「ザドス王は不治の病じゃなかったのか!」
「ブラッディー・ベアが味方だと言うから話に乗ったんだぞ!」
「あんな化け物みたいな連中と戦えるはず無いだろ!」
「冗談じゃねえぜ、俺は逃げるぞ!」
「俺も!」
「俺もだ!」
「おや、そこに居るのは、
今まで威張り散らしていた傭兵の皆さんじゃないですか、
どこへ行くんですか?
我々、衛兵がたっぷりとお礼をしたいので、
ゆっくりして行って下さいよ。」
「「「「「ひい~!!」」」」」
「城の中を気配察知してみたら、
逃げようとした傭兵たちは、衛兵にボコボコにされてるようだな、
あと、侯爵たちらしき一行が30人ぐらいで、
ここに向かっているようだぜ。」
「ほう、逃げずに来るとは侯爵らしく無いな。」
「余程、味方の戦力に自信があるのでしょう。」
しばらく待つと侯爵たちが現われた。
「王よ、あなたは不治の病では無かったのか?」
「エルザが特効薬を持ってきてくれたから完治したとも。」
「ブラッディー・ベアよ、娘がどうなっても良いのか?」
「私の娘なら、
エルザ様の、お仲間が救出したぞ。」
「何!男爵どう言う事だ!」
「も、申し訳ありません侯爵さま、
昨夜、屋敷に賊が侵入して娘を連れ去ったのですが、
お叱りを受けると思い言い出せませんでした。」
「馬鹿者めっ!
後から発覚した方が、
余計に怒られるとは考えなかったのか!」
「も、申し訳ございません!」
「ふん、まあ良いわ、
私にはペスカトーレが居るからな、
ペスカトーレの黒魔法があれば、あんな連中は恐るるに足らぬわ!」
「そうですわ侯爵さま、私にお任せ下さいな。」
「あれが噂の美女ですのね、
確かに目を見張る美しさですわ。」
「本当ね、この世の者とは思えない美しさね・・・」
「なあ、パサラちゃん、あれってさ・・・」
パサラちゃんがコクコクと頷いている。
「やっぱり・・・
なあ、フローラたちが言ってる美人って、
侯爵の隣に立ってるヤツだよな?」
「そうですわよ、他に女性なんて居ないじゃありませんの。」
「そうか・・・
パサラちゃん、あいつの正体って暴けるかな?」
パサラちゃんはコクリと頷いて魔法を唱えた。
「『爆露』」
侯爵の隣に居る人物の足元でチュド~ン!と爆発が起こって、
モクモクと煙が上がった。
煙が晴れて来たら侯爵が叫び声を上げた。
「お前は誰だ!」
「誰ってペスカトーレですわ侯爵さま。」
「お前がペスカトーレの訳が無いだろ!」
どうやら、侯爵の目にも、
俺やパサラちゃんに見えていた通りに、
口紅を付けて、縦ロールのカツラを被って、
女物の服をパッツンパッツンに着込んだ、
小太りの中年魔族が見えている様だ。
「何と言う醜悪な姿ですの・・・」
フローラに続いてルクアもコメントする。
「ホントね、あんなのが、もし身内に居たら縁を切るわね。」
(アルビナ王、ビックニュースです!)
鑑定してみると、名前もペスカトーレではなくて、
デブルダークと表示されて居る。
「おい!デブルダークのオッサン、変装が解けてるぜ。」
「何故、その名を!?
お前、鑑定眼持ちなのか?
それに、私の黒魔法を解くことが出来るとは何者だ!?」
「『煉獄』」
パサラちゃんが唱えると、
デブルダークの足元に黒いタール状の粘液が広がって、
中から黒いタコ足のような触手が伸びて来て、
謎空間へと引きずり込んで行く。
「こっ、これは、まさか暗黒魔導なのか!?
遥か昔に失われたはずの術式を使える、あなた様は一体・・・」
デブルダークはズブズブと謎空間に沈んで行った。
「さて、侯爵よ、
頼みの綱の魔法使いは居なくなったようだが、
まだ何か奥の手があるのかね。」
「フッフッフッ、王よ・・・
もちろん降参しま~す。」
ヘナチョーコ侯爵はズサ~ッと土下座した。
余りの侯爵の変わり身の早さに唖然としていた、
ヒョローン男爵や、子飼いの傭兵たちも、
武装を解除して降参の意を示した。
それから、数日間は残党狩りや、
社会秩序の回復に掛かりきりだったが、
ある程度の落ち着きを見せたので、
俺たちは帰る事にした。
「さて、冒険者ライよ、
そなた等の今回の働きは非常に大きいぞ、
どうだ、我が国の貴族にならんか?」
「申し訳ありません王様、
俺は既にアルビナ王国にて爵位を賜っておりますし、
冒険者家業が合っていますので、謹んで御辞退させて頂きます。」
「ザドス王、ライを引き込もうとするのは止めて下さい。」
「ハハハハッ!ルクア殿、分かっておるよ、
心配せずとも、一応聞いてみたまでの事よ、
では、代わりに褒美として白金貨や宝石を送りたいがどうだ?」
「ルクアどうしようか?」
「まあ、『龍の涙』の代金として貰って置けば良いんじゃない。」
「そうか、
では王様、ありがたく頂戴いたします。」
「うむ、遠慮なく持っていくが良いぞ。」
「ライ殿、私もパーティーに加えて貰えないだろうか?」
「エルザさんの様な優秀な仲間が増えるのは大歓迎ですが、
ザドス王国から離れても宜しいのですか?」
「ああ、私は既に王位継承権を放棄した自由な身だ、
どこに行こうと問題は無い、
そうだろ?親父。」
「おう、ライ殿と一緒に居ると、色々と面白い事がありそうだからな、
私も王じゃなかったら一緒に行きたいぐらいだ、
エルザよ、私の分も存分に楽しんでくるが良いぞ。」
「と言うわけだ。」
「そうですか、
そう言う事なら歓迎します。
みんなも良いよな?」
「もちろんですわ。」
「大歓迎よ。」
「良い。」
「私も国に帰ったら、
父にお願いして、正式にパーティーに入れて貰おうかしら・・・」
「エルザが加わったなら、
アルビナ王も許可して下さいますんじゃありませんの。」
「そうよね、父はエルザに絶大な信頼を置いてるもんね。」
「へ~そうなんだ。」
「ええ、ライが持っている『友愛のメダル』を、
エルザも貰っているのよ。」
「おお、王様と同じ扱いをするってやつか。」
「そうよ、何回も私の命を救ってくれたから、
父にとっては、最も信頼が置ける人物なのよね。」
「なるほど、アルビナ王はルクアを可愛がっているからな。」
「ええ、だからエルザも一緒にお願いしてくれれば、
良いと言ってくれると思うの。」




