まだまだ森にて・・・
「一応、他のワープゲートの行先も調べてみた方が良いかな?」
「そうですわね、移動時間の短縮というのは、
大きなアドバンテージになりますわ。」
「じゃ、念のために用心して、
まず俺が覗いて見るから待っててくれるか?」
「うん、いいよ。」
「まず、これから・・・あれ、入れないぞ?」
「相手側が壊れているのでは、ありませんの?」
「なるほど、向こうが壊れてると入れない訳か、
じゃ分かり易いようにバッテン印を書いて置くか、
そうだ、さっきのゲートには『魔族の島』と書いて置こう。」
「アタイが書いといてやんよ。」
「そうか、じゃ次は・・・これもダメ・・・これもダメ、
やっぱり壊れている物が多いんだな。」
「そうですわね、
遺失したアーティファクトと言われてますから。」
「おっ!ここは入れるぞ、
何か、どこかの倉庫の中みたいだな、
ちょっと外を覗いてみるか・・・あれ、ここって!?」
俺は、神代の森に戻って、フローラに声を掛ける。
「フローラ、
このゲートって、エルフが一杯居る場所に繋がってるんだけど、
ちょっと見て貰えるか。」
「なんですって!
分かりましたわ、私が見てみますわ。」
暫くするとフローラが戻って来た。
「驚いた事に、私の故郷であるエルフの里でしたわ、
まさかエルフの里に繋がっているなんて、
これが誰かに知られたら、結界が用を成さなくなるところでしたわ、
族長である父に話して厳重に管理して貰うようにしましたわ。」
「里の人たちとは和解できたの?」
「ええ、気にしていたのは私だけで、
みんな、『もっと早く帰ってくれば良かったのに。』と言ってくれましたわ。」
「それは良かったな。」
「それで、少し母たちと話してきたいのですが、
みなさんも来ませんこと?
エルフの里限定の珍しいお菓子なども、ご馳走しますわよ。」
「行く行く!」
「行く。」
「ライさまは?」
「俺は、今んとこ腹減ってないんで、
ゲートの行先調べを続けているよ。」
「そうですか、
まあ、これで里には、いつでも行けますから、
また、ご案内いたしますわ。」
「ああ、その時は頼む。」
あれ程、行きたがっていたエルフの里に俺が行かないのを、
不思議に思うかも知れないが、
俺が好きなのは、苦労して辿り着く秘境なので、
エルフの里には、ゲートでは無くて、
自分で歩いて行きたいのだ。
「そんじゃゲート調べを続けるとするか、
これもダメ・・・これもダメ・・・おっ!ここは入れるぞ。」
俺は顔を突っ込んでみると、どこかの大きな浴室みたいで、
身長190センチを超えると思われる、
長身の獣人族の女性が全裸で、
筋肉のキレを確かめるようにポージングしていた。
「・・・・・」
眼が合った瞬間に、彼女が相当な実力者と分かったので、
面倒な事になる前にサッと頭を引っ込めた。
「やべ~、あんな強そうな人って、
こっちに来てから、初めて見たぜ。」
日本に居た頃は、俺が教わっていた古武道の先生が、
見た目は年寄りなんだけど、
眼が合っただけで、絶対に勝てないって分かるような人だったからな・・・
彼女の場合は負けないまでも、そうとう苦戦するって感じかな。
「これは、獣人領要注意と書いて置くか、
あとは・・・これもダメ・・・これもダメ・・・おっ!入れるぞ。」
顔を入れてみると、隠し部屋の中みたいで、
たくさんのビックサイズのドレスや、縦ロールのカツラなどが置いてあった。
「ここは、どこなんだろう?」
ガチャッ!
しばらく周囲を観察していると、
突然、隠し部屋の扉が開いた。
「むっ!何ヤツだ!?・・・おぬし、ライか?」
「はい、そうですが王様ですか?」
「いかにも、我はアルビナ王国のアトツーギだ!」
「いや、そんな女髪のカツラ被って、
フリフリのドレス姿で言われても・・・」
「しかしライよ、
いかにして我の趣味の部屋に入り込んだのだ?」
「はい、じつは・・・」
俺は事情を王様に説明した。
「なんと、神代の森に、そのようなアーティファクトが・・・」
「ええ、ほとんどが壊れていましたが、
その中の一つが、ここに繋がっていました。」
「なんと、宝物庫に死蔵されていた姿見を運び込んだのだが、
その様な貴重な物とは気が付かなんだ・・・」
ちなみに、王様が通れるか試してみたがダメだったので、
神代の森から来た場合だけ戻れる仕様らしい。
「行き来が出来れば、かなり便利なのだが残念だな、
まあ、それでも有用性がある事は間違いないな。」
「そうですね、厳重に警備されている王城に、
こんなに簡単に入れるのは問題ですけどね。」
「そうだな、向こう側のゲートは、
神代の森の結界内に、そのまま保管して置いたほうが良いな。」
「はい、分かりました。
それでは、俺はそろそろ向こうに帰ります。」
「うむ、ところでライよ、今日ここで目撃した事は秘密にするのだぞ。」
「分かってますよ王様、面白がって領主さまに話すなんて、
する筈が無いじゃないですか。」
「本当に分かっておるのか?
もし、この秘密が外部に漏れた場合は、
おぬしのお宝袋を、
シワが無くなるまでハンマーで叩いてやるから、そう思えよ・・・」
「はい!絶対に漏らしません!」
「うむ、分かれば良いのだ、それでは帰って良いぞ。」
「はい、失礼します。」
俺は、神代の森に戻った。
「よし、ここは、アルビナ王城と書いて置けば良いな。」




