【5】 前世と本と
シルディアルと魔術の練習を始めて早十日。今日はどんなことをしようかと考えているとお父様に呼ばれた。
「話とは何ですかお父様?」
「話というわけではないんだがフローレに頼まれていた本が届いたんだ。ほら、あそこに山積みになっている物だ」
「へ?山積み。・・!?」
私はお父様が指を指した方を見て固まった。だってパッと見二百冊を超える本がそこにはあったのだから。
(お父様・・本当に各国から集めてきてくれたのね・・)
私は一冊手に取り中のページをめくった。少し破れていたり、文字が読みにくい箇所もあるが全く読めないわけではない。きっとこの本の持ち主たちは本を大事にしていたのだろう。
本は持ち主の努力や性格を表す。何回も読み込んでボロボロでも大切にしていればずっと読める。だが努力家でも本を雑に扱えば本はすぐにダメになってしまう。
「ありがとう!お父様。これで魔術の勉強ができる!」
「そうか。ではこの本はフローレの部屋に運んでおくよう使用人に言っておく。確かフローレの部屋に使っていない本棚があっただろう。そこへ魔術の本をしまうといい」
そう言ってお父様は「仕事に戻る」と言い書斎へ行ってしまった。ーーーそれにしても
(やっとやっと魔術本を読むことができる!)
それだけで私の心は満たされる。だって大まかな魔術を教えたり学び直したりすることは前世の記憶から可能だけどやっぱり大体じゃダメなのだ。
私が苦手としていた分野とかは全く思い出せないもん。だから魔術本が来てくれたらもっと魔術の勉強が捗る。
(後三年待って学園入学後から勉強するでもいいんだけど、学園では魔術を布教したいし)
やっぱり魔術を広めるためには早めに学ぶしかないのだ。私はぎゅっと拳を握り本の山を見た。
--そう言えば今日ってシルディアル来てるのかな?
あれから毎日のようにシルディアルは家に来ている。「勉強は大丈夫なの?」と聞いたことはあるが本人曰く「優秀だから大丈夫」だそうだ。いやぁ天才肌っていいね。私なんていつも合格点ギリギリなのに・・・。
ゲフンゲフン私の話はおいておいて・・。シルディアルの才能は魔術でも発揮されている。魔力が高いと話した次の日からシルディアルは私に怪我をさせないように必死に魔術の勉強をし魔力調整ができるようになっていた。
さすがに二日でできるようになった時には私も驚いた。でもそんな天才のシルディアルでも細かい魔術を使うのは苦手らしく、私が好きな水を操って動物などを作ることはまだ出来ていない。
逆に攻撃魔術とか技術をあまり必要としない分野の魔術はすぐに覚えていた。
(これじゃあ私なんてすぐに追い越されちゃいそう。・・なんか前世を思い出すな)
前世でも後から師匠に弟子入りした弟弟子は何でもできた。私が苦戦した魔術を一瞬で使えるようになってちょっと嫉妬したっけ。
才能があったのか努力をした結果なのか・・どちらかは分からないがあいつは出世して王族の護衛をする護衛魔術師になっていた。あいつが護衛魔術師だったころ私は魔王軍に対抗する魔術師に選ばれて・・・。あいつと会ったのも私が戦場へ行く少し前か。
(あいつ強かったし生き残ったのかな。生きてるといいな・・私は別人に生まれ変わったけど会いに行きたい。会いに行って私があんたの姉弟子だったフィステニアだよ!って言って驚かせて・・)
驚かせたら・・どうしよう。それで終わりかも。
「・・・こんなこと考えるくらいなら早く魔術本を読みこんで魔術について勉強しよう。そうだ!小さい時好きだったあの魔術の呪文知りたいんだった!なんて言うんだったっけなぁ」
お父様が運ばせとくように使用人に言っておくとは言っていたけど少しくらいなら私で持つことができるし持って行ってしまおうと思い上から三冊ほどを腕に抱えた。
「・・・意外と重い」
本三冊とはこんなにも重いものだっただろうか。
と少し悩んだが、原因はすぐに判明した。
(’あ・・そうだ今私九歳だ。十六歳とは体格が違う)
なら重くても仕方がないかと思ったが、ふと目の前にあった鏡を見て気づいてしまった。
「…」
・・・あれ?
あまり変わらないように見えるのは私だけだろうか。前世の頃もこんな感じの体格だったような気がした。確か前世の身長は百四十九。今の身長は百四十。
「・・・九センチか・・・」
今世では身長が百五十センチを超えますようにと願い私は自室へと本を運んだ。
* * * *
(今思ったけど重い本を運んで身長縮んでないよね・・?)
さっき前世の身長のことを思い出してから、すごく神経質になっている気がする。気にしすぎはいけないと分かっているが気になるものは気になるのである。
(まぁこれ以上悩んでいても仕方ないし。もう気にしないけど)
それに私には本を読むという楽しみがあるのだから。
私は椅子に座って本を開いた。最初に開いたのは魔術の仕組みが書いてある本だ。
『魔力は空気中のプレアという物質と人の体内にある魔力の器が共鳴することで魔力が発生する。そして〜〜〜』
一ページまた一ページとページをめくっていくが何故だろう。とてつもなく瞼が重い。せっかく本を読んでいるんだからと思い頬をつねるがそれでも眠気が飛んでかない。
やばい・・寝る。
「・・むにゃ」
ーーー結局一ページも進まずにフローレは眠りについたのでした。
前世のフローレは身長が低く胸が無かったため今世では身長と共に胸も育てたいそうです。
フローレは興味のある分野の本なら寝ませんが興味がない分野の本だとすぐに寝ます。(一度読んだことある本でも寝ます)




