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転生魔術師令嬢は転生した未来で魔術の素晴らしさを広めたい!〜悪役令嬢になんで負けてられるか!〜  作者: 雪道 蒼細
一章 九歳の魔術師

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【4】 魔術を学ぼう 

 「ーってなわけで、許可はとれたぜ」


 早朝に私の部屋に忍び込んで来たシルディアルは得意気にそう言った。まさかの一日で許可を取ってきてくれるとは・・。仕事早すぎない?私の婚約者。

 でもさ・・仕事早いのは良いんだけど淑女の部屋に朝一で入るのはさすがに無いと思うんだよね。私が起きてたから良かったけど、これで寝顔とか見られていたら恥ずかしさで死んじゃう。着替え中なら枕で攻撃していた自信がある。


 「色々言いたいことがあるけど・・早かったね許可とるの。ひとまずありがとう」

 「まぁな。何でも早い方がいいからな」


 それはそうだけども。・・・でもどうしたものか。私も昨日お父様に魔術の勉強についてお願いしたので、頼んだ魔術本は届いてないのだ。

 そもそも魔術本は魔王支配が終わったすぐ後に禁書として大半はどこかに埋められたらしく、入手不可能なのだ。燃やさなかったのは魔術本には結界が張ってあったため燃やせなかったらしい。

 ーーということで私が頼んで取り寄せているものは書店で奥底に眠っていた魔術本だ。もう学ぶ人もいないからということで安値で買えたらしいが、届くのにかなり時間がかかるとのこと。

 早く届いても来週だろうと言われた。でもせっかく来てくれたのに何もせずに帰すのもな・・許可取ってきてくれたんだし。


 「うーん・・・お礼としてはなんだけど私流で良ければ魔術を少し教えられるけど・・どうする?」

 「えっ・・教えてくれるのか!」


 おぉ。意外とやる気である。婚約者にこんな顔をされちゃあ断るのもちょっと。


 ーーということなので私は首を縦に振り、庭へシルディアルを連れてきた。さすがに室内で魔術を使うと失敗したときまずい。壁壊したりとか、家を燃やすとかしたら魔術を学ぶ機会なんて永遠に来ないだろう。それはさすがに嫌だ。

 

 「じゃあ・・まず、風をふかせて。そよ風程度の弱い風。呪文は『精霊よ 我が身に 快い風を吹かせん』ね」

 「急にやるのか!?」


 おかしい?でも前世で師匠に教わってた時最初に教わったのって風の魔術だった気がする。師匠、弟弟子にも同じことさせてたし。それに「魔術はなんとなく勘でできるのじゃ!」っていつも言っていたし‥。

 

 「・・分かった。じゃあやるぞ?し、失敗しても笑うなよ!」

 「はいはい笑わないわよ」


 さすがに人の失敗を笑うほど性根は腐ってない。それに魔術は失敗してこそ上手くなる。実験と同じね。ファイト!シルディアル!

 心の中でシルディアルに声援を送っていると彼は呪文を唱え始めた。


 「『精霊よ 我が身に 快い風を吹かせん』」

 「おぉ!成功・・・ってキャ!」


 私は思わず捲れそうになったスカートを手で押さえた。

 (ーーっなんでそよ風が強風になってんのよ!)

 そう。今シルディアルが呪文を唱え出現した風はそよ風ではなく強風だったのだ。通常は相当な魔力を込めない限り弱い魔術が強い魔術になることなんてないんだが・・(私ですら頑張って魔力を込めても強風にはならないと思う。せいぜい「少し風強いかも?」程度」)

 あれ?もしかしてシルディアルかなり魔力量ある?前世の私は魔力量が五百ぐらいだった。

 弱い魔術を強くできるなら八百ぐらいはあるんじゃ・・?


 「えっと・・失敗か?これ・・」

 

 失敗したと思っているシルディアルはかなり焦っている。(まぁ弱い魔術を出す予定だったので半分くらいは失敗だが)どうしたらいいのか分からず意味もなく立ち上がったりしゃがんだりを繰り返している状態だ。

 こういう時婚約者なら「落ち着いて。大丈夫だから」とでも言えばいいのだろうが目の前ですごい魔術を見たせいで興奮している。

 あの魔術を応用したらあの実験が・・、いやその前にあの論文を書くことが・・!?など科学者みたいな脳になってしまっていた。別に前世は科学者でもなんでもなかったが、前世の両親が科学者だったから、それが移ったのだろう。

 こうなってしまった脳を戻すには暴力を振るってもらえれば正気に戻ることが可能なのだが、シルディアルがそれを知る由もなく・・


 結局小一時間は魔術の研究のことについてずっと考えていたフローレなのであった。


 * * * *

 

 「・・・ごめんシルディアル。ちょっと興奮しちゃって・・」


 結局正気に戻ったのは返事をしない私に痺れを切らし私の靴を思いっきりシルディアルの靴に踏みつぶされた時だった。

 

 「まったく・・論文やら研究やらがしたいなら俺が帰った後にしてくれ」

 「ごめんって・・あ。それでねさっきの魔術についてなんだけど、結論から言えば半分成功半分失敗かな。ただシルディアルの魔力量が私の想像していた量より多くて・・。多いと弱い魔術でも強くなる時があるんだ」

 

 威力計算などがされている魔法陣を呪文として詠唱しているのが魔術師なので、出力が変わることはほぼ無いが例外はある。仕方がない。


 「そうなのか。それってよくあることなのか?魔術の威力が強くなるって」

 「無いよ!」


 あってたまるもんですか!


 「普通は無いよ・・でも弱い魔術でもこうなるなら、これから強い魔術を学ぶとき気を付けた方がいいかもね。まぁ魔力の調整ができるようになったら問題は無いだろうけど」

 「魔力の調整か・・それってどうやってやるんだ?魔術を学んでいれば身に付くものなのか?」

 「そうだね。基礎的な弱い魔術を学んでいれば気が付いたら魔力の調節ができるようになってるよ」


 私もそうだったしね。基本的な弱い魔術を学んでいれば、だんだんと使い方が分かってくる。

 言葉では説明しにくいが、『一つを磨けばおのずと他のこともできるようになる』みたいなやつである。

 でもそれがシルディアルにとってはショックだったらしく落ち込んでいた。

 (それもそうか・・急にあんな力が使えるようになって、威力の調整もすぐには身につかないと分かれば怖いよね)


 「あのさ・・フローレ。俺・・」

 「ん?」


 慰めようと思ったがシルディアルが何かを言おうとしていたので私は開きかけた口を閉じた。


 「俺。フローレが魔術のことについて言うまで魔術は怖いもんだと思ってた。今だって初めて使った魔術で強い魔術が出て怖い。だけど、それでも俺は魔術を知れて良かったと思ってる。だってこの

失敗だって魔術を学ぼうって思ったから知れた失敗だから。次どうやったら失敗せずに魔術を出せるかとか考えるのが少しだけ楽しいんだ・・。だからその何が言いたいかというと・・魔術について知る機会をくれてありがとうフローレ」

 「シルディアル」


 真っすぐな目でそう言ったシルディアルから私は目を逸らした。別に気まずくなって目を逸らしたんじゃない気恥ずかしさからだ。

 だって魔術について知る機会をくれてありがとうなんて言われたことないんだもん。前世でだって魔術で誰かを殺して感謝されていた。

 魔術そのもので感謝されたことなんてなかったから。

 だからお礼を言うのはこちらの方だ。


 「こちらこそ。ありがとうシルディアル」

 



平均の魔力量は三百(魔術師でない人も込み。でも魔力が無い人は入っていない)

魔術師の平均は四百。

八百はめちゃくちゃ多いです。ちなみに歴代で一番多かった魔力量は九四二です。

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