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転生魔術師令嬢は転生した未来で魔術の素晴らしさを広めたい!〜悪役令嬢になんで負けてられるか!〜  作者: 雪道 蒼細
一章 九歳の魔術師

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【3】 婚約者は魔術・・嫌い?

 「はぁーーっ。悪いフローレ。なんだか幻聴が聞こえて・・」


 シルディアルはそう言いながら腕組をし、私を見る。シルディアルの目は死んでいるが、そんなのどうでもいい。だって私が求めているのは魔術を学ぶ許可なのだから。


 「へぇ。それは大変ね、で、私は魔術を学びたいのよ。あと説得しなきゃいけないのはシルディアルの家だけなの。ねぇ?いいでしょ?」

 「・・・よ、よくねぇ!お前貴族が・・いや、人が魔術を学ぶってどういうことか分かってんのかよ!」


 シルディアルは机を右手でバンバンと叩いた。叩いた手が痛かったのか右手を引っ込め、左手で右手をさすっている。

 (そんなに怒んなくたって分かってるわよ)

 ・・この時代で人が魔術を学ぶということは、魔王や魔物と同類とみなされるということ。だから人は遊び半分でも魔術を学ぼうとしない。貴族だったら尚更だ。

 英雄だった魔術師でさえ敵扱いなのだ。人類を命がけで守ってくれた英雄でさえ・・

 

 「分かってるわよ!でも敵が使ってた攻撃手段ってだけでなんでダメって言われなきゃなんないの!?そしたら剣だって同じじゃない、剣を使って戦っていた魔物だっていたはずよ!」

 「それは人類が生み出した攻撃手段だからだろ。魔術は敵が生み出したって言われてる」

 「それは違うわよ!だって魔王支配より前から魔術は存在したじゃない!」

 「・・・・そうだけど」


 シルディアルは勢いを無くして、視線を私から床へ移した。

 魔術は魔王が生み出した攻撃手段だと今は言われているが、実際はそんなことない。魔術は魔王支配よりも前からずっと存在しているものだ。

 だが現代では魔王支配時期より前から生まれていた人たちがもう亡くなっており、事実とは違うことが多く伝わっていたりする。

 貴族などは歴史を学ぶので、魔術が前からあったものだと知ることができるが(それでも偏見はある)、平民の学校では歴史の授業があっても魔術までは触れないらしい。そのせいか平民の間では魔術は魔王が生み出したと認識されている。

 貴族より平民の方が多いので結局国民の半数以上はこの説を信じているのだ。貴族側も「それは誤った認識だ」と主張し続けるのに疲れたのか貴族までもが「魔王が魔術を生み出した」という認識が浸透しつつある。

 まぁこういう輩は社交界で笑われるが。


 「・・私本気で魔術を勉強したいの・・それに『水の精霊よ 心に溢れる 雨を今ここに』」


 私は魔術で水を作り出し、水を猫やリスなど動物の形に変える。これは前世で私が一番好きな魔術技術。水ならなんでも表現できる。もちろん土でも作れるが・・

 (土だと可愛さ半減するのよね。やっぱり透明な動物の方が可愛げあるというか・・)

 まぁこれは個人的な意見だが。



 「お前魔術・・うわっ!」

 


 シルディアルは驚いて椅子から転げ落ちていた。転げ落ちた時に頭を地面にぶつけたらしく、頭をおえていた。

 (うーん。そんなに驚くこと?)

 私は自分の指先に蝶を止まらせてシルディアルを見る。暇さえあれば作っていたため、蝶の細かい模様も水で再現している。



 (まぁ婚約者様はそんなのどうでもいいんだろうけど‥。‥‥あ…)

 最初は驚いていたシルディアルだったが、脅威性は無いと判断したのかリスを手のひらに乗せていた。  

 (え、待って。私の婚約者可愛い!)

 シルディアルはとても顔がいいため、何というかすごく絵になる。

 タイトルは『リスと戯れる貴公子』だ。うん。決定‥!


 

 「・・・綺麗でしょ?魔術」

 「・・・・」



 シルディアルは無反応だ。聞こえているのか聞こえていないのかは分からないが、じっとリスを見ている。

 (むむ。反応が無いとは。もしかしたらもう一発見せた方がいいのかもしれない)

 私はさっきと同じ呪文を唱え、また水を作り出す。今回は水で何かを作るわけではなく、多くの水を出し虹を作った。

 あ。水浸しの心配はしなくていい、窓に向かって水を放ってるから。

 まぁ、もしかしたら庭師あたりから苦情が来るかもしれないが。

 そう言うことは今考えない。今重要なのはシルディアルの反応だ。

 (さてさて、シルディアルの反応は…?)

 私はちらりとシルディアルの方へと視線を向ける。


 「綺麗・・」


 シルディアルはそう呟いた。おぉやったあ!呟きだけど感想を入手した。だがその数秒後首を物凄い勢いで横に振った。


 「・・・いや・・俺は認めないぞ・・魔術を人間が。ーーってお前魔術の勉強の許可を求めにきてんのに、なんでもう魔術習得してんだよ!」


 正論である。だがこれに関しては仕方がない。だって前世の記憶をついさっき思い出したんだし・・。

 だがまぁ親&兄に知られては結構まずい。折角許可を貰ったのに取り消しにされる可能性がある。ここは口止めしておかねば。


 「シルディアル。これ秘密だからね?」

 「・・・・・」


 無言かい!せめて返事してよ!私は目尻を吊り上げシルディアルの顔に自分の顔を近づける。

 

 「秘密だよ?ーーというか許可だよ!お願い。私は魔術の素晴らしさを世界に広めたいんだ!シルディアルだって見たでしょ、魔術は攻撃のためだけに使われるわけじゃない。魔術が『綺麗』だって思える使い方もできるんだよ!」

 「・・・・ろよ」


 ーー?今シルディアルの口が動いた。顔が近いせいでシルディアルの表情が良く分からない。私は自分の椅子へ座りなおし、シルディアルの言葉を待つ。


 「俺にも・・ろよ」


 俺にもろよ?新しい挨拶だろうか・・。あーあぁ!分かった。これはちょっと早い中二病ですな?

 こういう年頃の男子って好きだよねぇ~。夜露死苦とかさ!


 「挨拶?今は挨拶じゃなくて許可を・・・」

 「違う!俺にも魔術を教えてくれ!」


 ・・今目の前の人物は何と言っただろうか。『俺にも魔術を教えてくれ!』そう言った気がする。聞き間違いではない・・!


 「えっ!それ本当!?シルディアルも魔術を勉強してくれるの?」


 驚きを通り越して感動である。まさかシルディアルが勉強したいと言い出すとは。これって私の魔術勉強の許可も取れたということでいいのだろうか?多分いいはず・・だ。

 

 「そうだよ・・・それに婚約者だけを社交界の笑いものにさせるわけにはいかないからな。俺だって同じ荷物を背負ってやるよ。やるんだろ?世界に魔術の素晴らしさを広めるってやつ」

 「うん!あ、でもシルディアルの両親は大丈夫なの?記憶違いだったらいいんだけど大の魔術嫌いで有名じゃなかったっけ?」


 本当に記憶違いならいいのだが、風の噂でそんなこと聞いたことがある気がする。特に夫人の方が。


 「それは・・そうだが。俺も頑張って説得するし・・それに・・・」

 「・・・?」


 急に私をじっと見てきた。何なんだろうか?私の顔は綺麗だけど、見つめるほど?・・・見つめるほどか・・。


 「な、なんでもねぇよ!じゃあな。今日は帰る」

 「え!もう?早くない?」


 シルディアルが来て多分だがまだ三十分程しか経ってない気がする。

 

 「帰るって言ったら帰るんだよ。それに魔術の件早い方がいいだろ?」


 (私の婚約者は男前だった・・さっき可愛いだなんて言ってごめんなさい!)


 「それはそう。・・・シルディアル!ありがとう」


 私はシルディアルを玄関まで送った後スキップをしながら自室へ戻った。

 

 (この後部屋に変える途中、母に見つかり一時間の説教を受けました)

 

 * * * *


 (まさかあいつが魔術を学びたいと言い出すとは・・・)

 少し、いやかなり驚いた。だって前のフローレは話すことが大好きだったが、周りから悪口を言われるのを嫌っていた。

 だから魔術という絶対に周りから否定的な言葉を言われるような物には絶対に自分からは近づこうとしていなかった。・・興味はあったかもしれないが、世間から悪く言われると言えば引き下がっていた気がする。

 (何がフローレを変えたんだろうな・・)

 どうせならきっかけが俺だったらいいのにと思ってしまう。

 (・・そんなこと考えるのは馬鹿らしいか・・)

 俺がフローレを変えたんだとしたら飛び跳ねるほど嬉しいが、そんなのは些細な幸せだ。俺が一番嬉しいのはフローレが楽しそうに毎日を過ごしていることだ。

 魔術を楽しそうに使っていたフローレを見てるのはなんだか楽しかった。でも素直に慣れなくてちゃんと「綺麗だった」と魔術について褒められなかったが・・・。

 (次回会うときの宿題は素直にフローレを褒めるだな。・・それよりも前に魔術を学ぶ許可を俺の両親から取るの方が大事だ。俺が頑張って説得すると言ったんだ。ちゃんと説得しなけれは)

 でも俺の両親は大の魔術嫌いで有名だ。特にお母様なんて『魔術』という言葉を口にしたら怒って話をしてくれなくなるほどに。

 一見説得は無理そうに見えるが俺には策がある。・・実は俺の両親は俺にめちゃくちゃ甘い。フローレとの婚約だって俺が両親に頼み込んだ結果なのだ。

 あの時はフローレに一目ぼれして・・って俺の話は今関係ないな。うん。

 ーーということで両親の俺への甘さを利用して今回も頼み込むつもりだ。成功するかは分からないが・・。

 俺は段々と見えてきた館を見て唾を飲み込んだ。

 

 * * * *


 「お父様、お母様。お話があります」


 俺は食事中、両親に話しかけた。食事前に話そうと思っていたが、色々と考えていたら食事が運ばれてきて食べる流れになってしまったのだ。

 ここで遮るのもな・・と思い頃合いを見計らって話しかけたということだ。


 「何だ?」

 「何かしらシル?」

 

 両親は不思議そうに俺を見てくる。

 (大丈夫だ。フローレに説得するって言っただろ。頑張れ俺!)


 「えっと・・・俺。ま、魔術を学びたいんです!お願いします学ばせてください!」

 「・・・シル・・それ・・本当?」

 「・・・・」


 お父様は無言のまま俺を見つめてきて、お母様は何とか出したと思われる小さな声を発し俺を見た。

 (やっぱりどんなに俺に甘い両親でも、すんなりとはいかないか)


 「今日フローレと会って、フローレが魔術を学びたいって言ったんだ。それの許可が欲しいって。その時にフローレの魔術を見て・・すごく綺麗だったんだ。その時のフローレがすごく輝いていた。俺はそんなフローレの笑顔を守りたいんだ。応援したいんだ!だからお願いします!」


 俺は椅子から立ち、両親に向かって頭を下げた。・・・フローレのあの笑顔は守りたい。だからここで俺が説得に失敗するわけにはいかない。

 沈黙が続く中、次の言葉を考えているとお父様が口を開いた。

 

 「分かった・・いいだろう」

 「!?あなた・・!」

 「私も好きな人のために何かをしたいっていう気持ちは分かる。・・・その気持ちは絶対に忘れるなよ」

 

 お父様は真剣な表情でそう言った。・・・お父様もお母様のために何かしたのだろうか。俺はお父様を見た後お母様を見た。


 「・・・ふん」

 

 お父様の言葉で何か思うところがあったのか耳を赤くしてそっぽを向いてしまった。お母様のあれは「好きにすれば」という表現である。=やってもいいということだ。

 

 「ありがとうございます!お父様、お母様!」

 「でも魔術を学ぶからには覚悟するんだな・・周りからの風当たりは強い。フローレ嬢をちゃんと守れ」

 

 それはもちろんだ。フローレは俺が絶対に守る。あの笑顔は絶対に・・


シルディアルの愛称はシル・アル・ディアです。ディアと呼ぶと二日は無視されます。気を付けましょう。


後、シルディアルのツンデレは母譲りです。

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