【5】 すれ違い
あの日以来、魔術部全員が集まることはなくなった。
部活の時間になって顔を見せても部室にいるのはシルディアル。でもシルディアルを見てしまうと、あの時のことを思い出してしまうから、私は彼のことを少しだけ避けていた。
それについてシルディアルはどうこういうことはない。
そしてルリアンも何故か部室に顔を出さなくなっていた。
授業には出ているだろうが、私は授業中、基本下を向いているので分からない。
ずっと前世のあの記憶を思い出してから、忘れられない。あの感覚を。今まで前世の記憶を思い出しても、ここまで感覚を思い出すということはなかった。
(それか強いトラウマは心に残りやすいのか‥)
あと、魔術に関わらなくなったからか、以前よりクラスの人が話しかけてくれるようになった。
話せるようになった。だけど、、、。
これって私?
せっかく転生したのに、好きだったものを誰にも邪魔されずにできるのに。
前世みたく魔物を倒すために魔術を使うわけじゃないのに。
魔術をやらなくなって。
普通に学校生活送って。
それって私が転生した意味あるのかな?
私、やりたいことするんじゃなかったの?
これじゃあ私じゃないよ。
でも…魔術は…もう人に向けたくない。
私はどうしたらよかったの?
「誰が・・教えてよ・・」
私はそう呟くと、ベッドで体を縮こませた。
今の私は弱い私だ。
* * * *
あの日以来フローレが話しかけてこなくなった。避けられている気がする。
そのせいで、あの時何があったのかもよくわからないままだ。(まぁ、ロルフには探らせているが)
「どうしたら、フローレが元気なるんだろう」
俺はフローレに笑っていて欲しいだけなのだが。
俺はそのことばかり考えながら歩いていたせいか、後ろに誰かが立っていたことに気づかなかった。
「やぁ。シルディアル君?」
急に声をかけられ、俺は後ろを振り向く。
「…お前誰だ?」
「さぁ?」
身長は170センチほど。若草色の髪色だ。
何となく無害そうな笑顔を向けてくるところが胡散臭い。
侍従服を着ているところから、誰かの従者なんだろうが・・。
俺が警戒心をマックスにして男を見ていると、男はなし出した。
「君に良いことを教えてあげようと思ってシルディアル君。いや、モルガ君?」
「…!!」
なんでこの男がその名前を知っているんだ?この世界の人には誰にも教えて事なかったのに。
「何で分かったって顔だね?まぁ見たのは僕の主人なんだけど。…まぁいいや。それでね、僕知ってるんだ。君のせいで君の大切な人が死んだてこと」
「それ‥は」
心臓がドクドクとうるさい、手から冷汗も出ている。
落ち着け。この人が全て知ってるわけじゃない。そうだ。落ち着け‥。
だが何故この男は俺の。俺の過去を知っているんだ?
「ねぇ。僕、このことフローレ嬢に話しちゃおっかな」
「・・!やめてくれ!!!」
俺は思わず大声でそう叫んでしまった。
でもそんなこと気にしてられない。
きっとフローレは俺のやったことを知れば幻滅するはずだ。
もう今のように話してくれなくなってしまう。
それだけは嫌なんだ。
せっかく平和な世界で、再び話をすることができてちるのだから、それだけは壊したくない。
ーー俺はフローレが9歳の時、前世を思い出したことを知っている。
その時はまだ俺は思い出してはいなかったが、フローレが前世を覚えているということは、この男が俺の過去の話をしたらきっとフローレは。
「・・・」
「あれ?黙っちゃうの?」
あぁ。ずっと黙ってたいよ。というか、ずっと黙ってるつもりだった。
でも話さなくちゃいけないこともわかっている。このままじゃフローレを騙しているということも。
(でも、それを話すのはお前じゃない。俺だ)
「・・どうしたら言わないでくれるんだ?」
「僕話の理解が早い子は好きだ。そうだね、魔術部のショーの中止が条件だ」
「!そ、それは・・」
魔術部のショーが中止。
フローレやクレーシー嬢が作り上げた物が中止?
なら俺はフローレに過去を話した方が?
だが・・。
「まぁまぁ、よく考えてみなって。どうせフローレ嬢もルリアン嬢も魔術部に来ていないんだろう?なら魔術部のショーは出来っこない。僕はただ念には念をと思って君に話しかけただけだし。、、、で?どうする?」
男はそういうとニヤニヤと笑い出した。
どうせ俺の答えが分かっているんだろう。
でもこの男の言う通り魔術部のショーは出来っこない。だってみんな部活にこねぇし、フローレだってあんなんだ。だから魔術部のショーはきっと出来ない。
出来ないと思い込んでいる自分も嫌だが、現状が全てを物語っている。
「・・・魔術部のショーを中止にする」
俺はそう言った。
男はその回答に満足したのか、俺が顔を上げた頃にはもういなかった。
「・・ごめん、みんな」
俺はそう誰もいない廊下でポツリと言った。
このことがきっかけかは分からないが、そこから魔術部の溝は深くなってった。
俺もフローレとも話さないし、クレーシー嬢なんて顔も見ない。
なんだが昔に戻ってしまった。
全てが無に帰ってしまった。
なんと10月のPVが1000を突破しました!(投稿して一か月で1000PVを超えるのは私の作品史上初めてです)なので一人で騒いでいました。
いつも読んでくれている皆さま本当にありがとうございます!!
* * * *
短いですが三章はこれで終了です(一話前でも書きましたが恐らく修正入ります。11月の頭には少し時間がとれるので加筆しようと思っています)次回からは15歳のフローレ達です。




