ep.20 ep.19の続き
チャイムが鳴る前にもう一人あたりくらい聴き取りをしておきたいところだが、これといってこれまでクラス内で接点がある生徒もっと狭義的にいえば友達と呼べる間柄の生徒はいないのだ。
だからといってもそれを盾に情報を得られなかったと月見里に報告すれば、〈そんな甘い考えでやっているのかバカ者〉とでも言われて一蹴されるのが落ちだろう。
少なくともバカの二文字を言われないためにもここは孤軍奮闘で荒波の中をを潜っていく必用性がありそうだ。
ともなれば次に狙いをつけるならば誰になるのだろうか。
クラスを見渡すと数人の男子が手持ち無沙汰で、顔を伏せて寝ている振りかはどうかは傍からでは分からないが、孤立が集団ができるているとにぽっかりとその空間だけ穴が空いているようで異様に目立つ。
それ以外はしょうもない談笑で笑いをかさらっては周りがケラケラとほくそ笑んでいる。
孤立している彼らがクラスの情報に明るいもとは思えないが、少なくとも彼らのような第三勢力―――集団で群れる男女の中でも四十川側と対四十川側とも属さない。ある種クラスからのけ者になったもの―――とでも呼称する孤立した生徒からしてみれば、四十川という少女がどんなも人物だったのかを紐解いて行く必要がある。
かくいう僕もその勢力とも言えない。その部類に入った身としては四十川は良くも悪くもできた人間と捉えていた。
疎ましいと思うこともあれば、彼女おかげでいろいろと円滑に回してくれる存在でクラスに貢献しているのを外目からして見てみるとしみじみと思うのだ。そんな工合で彼女は僕たちには干渉せずにクラスをまとめる存在。俗に言う委員長的な存在なのだ。
だからといって怪訝な存在ではないのだ。だけれども、それを良しとしない人はいなかっただろうと断言はできない。
そんなことを思っていたら、後ろから声をかけられて振り向くと、その声の主は名前と顔が曖昧に紐付けられている。
あたふたと頭の中で情報を整理ていると「退いて」のいがまれているような視線に僕は萎縮して通路を退いた。そして、思い題した。彼らが我がクラスの一派である一軍女子であることを。
四十川がクラスのモデルであり、委員会であるならば、彼女たちはリードを失った野良犬同然。家主を失って番犬が守る家さえも分からずに、そこら中に吠えまわっているようなものだ。それがある種彼女たちの気丈の現れなのかも知れないが、そうであってもケンケンとしているのはやはり許しがたい。
ホームルームが終わる頃には日差しが傾いて目元を直撃するほどまでに落ちてくる。そうなると半ば担任の話よりかは眩しい太陽に目がチカチカとし始めて、そっちの対処に気が向いてしまうこともしばしばある。
そんな中で、担任が「来週から中間テストです」とそう流布するように話す。
僕は一瞬にして担任の方へと再び気が向く。
一週間前は学習期間と呼ばれて、部活動禁止と職員室の立ち入りが禁止される。まさに生徒・教員がテスト体勢に入るわけだが、流布と言ってもすでに範囲と呼ばれるものはほとんど授業内で明かされているために、学習期間などあってないようなものである。
僕は事件を調べる傍ら、勉強をしていたと言っても比肩できる人間がいないというか。そういった話をする仲がいないために僕の知能レベルが一体どのへんを推移しているのかなどわかるわけでもなく。無闇に範囲と呼ばれた場所を勉強しているが、他はもっと違う教材を使っているのだろうかなどと疑心暗鬼に陥りながらも、耳に挟む「ノー勉」だとか、「早々に寝落ちしちゃった」という怠惰な常套句にどこか安堵してしまっている。
さすがに、この期間になれば一部の生徒はピリピリとした静電気のようなパルスを発している。そのために僕はその磁気に触れれないように、活動は一旦中止にしよう。
月見里への報告もなしだ。いくら優秀生といっても彼も一生徒であり、学ぶ側の人間だ。互いにそれくらいの学習に向けるための余白を残してやらねばならない。
この期間に入ると一部の生徒が教室に居残りを始める。特段集中してやっている素振りはないのだが、それでも互恵関係のように彼らにとっては有意義な時間であるからこそ、その場に残っているのだろう。
僕も何かしら共通空間を少人数で共有することで、特異ながらも交流が持てると少し期待したのだが、その勉強をしているという雰囲気だけで、女子は集中でも切れたのか喋りだすし、男子は常にふざけ合っている。そんな上辺だけの彼らの勉強意識に辟易してしまい。翌日には居残りをするくらいなら帰るという意思を選んだ。
そんなこんなもありながらも、中間テストを向かえると良くも悪くも、緊張で少し体のソワソワが止まらない。
言ってしまえば、自信がない。いくら勉強しても忘れることはざらにあるし、緊張で問題をミスることだってありうる。そう考えると過分に頭がムダに活発的働く、有意性の指向ならいいのだが、そういったときに限ってくだらないことが頭を逡巡して集中力というものを極度に下げてくる。
僕は頭を掻きながらも問題と悪戦苦闘に、試行錯誤を繰り返すなかで気づけばチャイムがなってしまったなんていうことが何回が起きた。それが余計あとのプレッシャーを助長させる。
いくら考えたところで、後の祭りであることは変わりないが周りがどれくらい点数を取っているかのか。赤点は回避できているのか。そんなことが僕に緊張を駆り立てるのだ。
ああ、憂鬱だと思い、鬱々とした感情を晴らすように窓から外を一望する。
フワフワと浮かぶ飛行機の排気ガスが線を引いて青空を断ち切るように、飛行機から出された雲はその主体から乖離して長く永く跡が残っている。
―――僕もあの飛行機雲のように忌々しい抑圧から開放されたい。




