第216話_【葵】気持ちを伝える
「よく聞こえなかった?なんて言ったの?」
光一がしつこく、あたしに聞いてくる。
「......」
顔が熱くなるのが分かった。
思わず光一に背を向ける。
「葵」
光一はミニテーブルを回り込んで、そばに寄ってきた。
背を向けて体育座りしてる、あたしの顔をのぞきこむ。
「光一は前に言ってた。
あたしが......その......その気になったら言ってほしいって」
光一は黙ってあたしを見つめている。
「その気になったって言ったんだ!」
目をぎゅっとつぶって、言った。
こんなこと言わされるなんて、恥ずかしかった。
でも言わないと、彼には通じない。
光一はあたしの気持ちには鈍感だった。
あたしがどんなに光一のことを想っているか。
彼は分かってない。
彼には、言わないと伝わらないんだ。
「......」
あたしの言葉を聞いた光一はしばらく黙っていたけど
「あぁっ」
と声を上げた。
「えっ、ほんとに?」
と言いながら、またあたしの顔をのぞきこんだ。
光一は体育座りするあたしを後ろから包み込むように抱きしめた。
「葵......すごい好き」
耳元で囁いてくる。
「ちょっと待ってて」
光一は急に立ち上がると、押し入れを開けた。
そして、布団を引きずり出すと、畳の上に敷きはじめた。
「ムードもなにも無いよなぁ。
ごめんね。
でも畳の上じゃ、葵の体が痛むと嫌だし」
そんな事を言いながら、シーツを広げ、せっせと敷布団にセットしている。
「ちゃんとゴムも持ってる。
いつでも準備はできてたんだ」
そう言いながら、ゴソゴソとカバンからなにかを取り出している。
カーテンを締めると、暖房をつけはじめた。
あたしは光一を見上げる。
ドキドキが止まらない。
「でも、葵、無理すること無いよ。
葵のこと抱けなくたって好きな気持は変わらないし......。
それだけが全てじゃないし」
光一はしゃがみこんで、あたしの前髪に触れると、額に優しくなでつけた。
なぜか涙が目に溜まった。
ブンブンと首を横に振る。
「したいって言ってるんだ。
何度も言わせないで欲しい」
「うん......。俺もすごくしたい」
光一は正面からあたしを抱きしめた。
はげしくキスをすると、首筋や耳にもキスをする。
あたしは彼にしがみついた。
そのまま畳に押し倒される。
あたしの着ているセーターの下に光一の手が差し込まれた。
「ねぇ......。
布団の上でするんじゃないの?」
あたしが震える声で聞くと、光一は目を見開いた。
「そうだった」
光一はあたしを抱き上げて、布団へと運ぶ。
ちょっと固い敷ふとんの上に、そっと降ろされた。
「葵、背中とか痛くない?
その敷布団、うすっぺらで固いんだ。
安かったから」
あたしは首を横にふる。
「すごい好き」
光一があたしの頭をなでる。
光一があたしの着ているセーターを脱がす。
下に着ているシャツも。
どんどん剥がされていく。
「寒くない?」
下着だけになったあたしに、光一が聞く。
「だいじょうぶだ」
あたしは答える。
下着姿のあたしを眺める彼の視線を感じる。
すごく恥ずかしい。
この下着も脱がされてしまうんだろう。
「見るな」
といって顔を背けた。
「めちゃくちゃ可愛い。
葵、可愛い」
光一はあたしの身体に触れた。
「あっ......んっ」
身体がのけぞる。
思わず変な声が出る。
震えが走る。
そんなあたしの様子を、光一がたまに見つめる。
「可愛い」
「お......おかしくなりそう」
「おかしくなって欲しい」
光一の手とあたしの手がぎゅっと絡み合う。
彼のあらい呼吸が首筋にかかる。
「光一......すごい好き」
あたしは彼の首にしがみついた。




