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第20話 P L E D G E
ソウル奪還作戦に先がけて大邱航空隊によるチョンジュ、スウォンを空爆し
大田を出撃した15中隊を含む半島派遣軍主力部隊はチョンジュ、スウォンは空爆のみにとどめ両都市の北韓軍を無視しソウルを目指す。
開戦当初に損傷したイージス艦を佐世保基地で修復し
護衛空母いぶき、同型艦そうりゅうを対馬海峡に派遣
護衛駆逐艦筑摩、球磨川、最上を21式特殊潜水艦、翼竜、祥竜と共に秘密裏に仁川沖へと回航させ
陸、海、空軍の主力を持ってソウル奪還作戦に挑む
攻略開始はイージス艦からの対地誘導ミサイルによる攻撃と仁川沖の翼竜、祥竜からのSMBMミサイルから始まり
護衛駆逐艦、筑摩、球磨川、最上の三隻が援護射撃をソウルに撃ち込み
チョンジュ、スウォンの空爆を終え補給を済ました大邱航空隊による空爆と続き
22式カノン砲、155ミリカノン砲等の砲撃
20式戦車80両、21式自走砲50台を投入
それに続いて派遣軍主力部隊がソウル市内へと突入
突然始まった日本側の攻撃に迎撃態勢の整わぬまま北韓軍は混乱に陥り
各方面で敗退を続け市内奥深くへと押し込まれて行く
北韓軍主力とも言えるユシン、ソンミン、ヤンジヌ隊は先の作戦で大打撃を受けたまま戦力の補充もままならず
ソウル奪還に現れた派遣軍に対し有効な反撃手段を打てず
平壌から開城へと南下したまま動けず
唯一、なんとか部隊を保持しているキムゲテ隊は栄州に在り
その栄州は派遣軍主力部隊とは別の海軍特殊陸戦部隊に包囲され動けない。
北韓軍の唯一の反撃手段はミサイルによる攻撃のみ
そのミサイルでさえ日本から揚陸したPAC3JS迎撃ミサイルとイージス艦の迎撃ミサイルによりソウル到達前に次々と撃墜され
ソウルに在った北韓軍部隊は孤立無援状態になりながらも派遣軍との戦闘を継続
水澤率いる黒装部隊は高機動戦闘を繰り広げながら南大門を目指す
水澤はいつものように突撃制圧銃と詩音からもらった日本刀を主力武器とし
榊達は新調したメインウェポンとしてロングレンジ標準器装備の20式カービン銃撃、高火力のAKR(アサルトキラーロケット弾)
狙撃手の川中は20式とM16SARIを融合させ改造した遠距離狙撃ライフル。
各隊員に20式歩兵銃と01式88mm迫撃砲や、対戦車用に01式和製ジャベリンと呼べる対戦車誘導弾を装備させ
扇を反したデルタ型の陣形で突き進んで行く
イージス艦や大邱航空部隊の空爆により北韓の主要な火砲は破壊され、重機関銃は水澤達のAKRにより沈黙し
ナイトホークの熱源サーチにより北韓軍の居場所は逐一地上軍に報告され
それを元に22式カノン砲のピンポイント砲撃と神州ステルス攻撃戦闘機による機銃掃射により駆逐されて行く
ナイトホークの報告は水澤達にも伝わり
姿の見えない敵をナイトホークの報告を元にAKRで攻撃して瓦礫の中に葬り
だんだんと南大門に近づいて行く
先のソウル奪還作戦中に降り注いだミサイルの雨の破壊から免れた中国式の大きな門が眼前に迫る
門の中、そして後ろに敵の姿がないことを確認し
ナイトホークがゆっくりホバリングしながら南大門上空から縄ばしごを地上に下ろし
水澤はその縄ばしごにつかまり南大門の上に登って行く
南大門の上に着いた水澤は半島統一旗を取り出し
戦闘継続中のソウルで南大門に半島統一旗が翻る
金糸髪を風になびかせ黒装の水澤がナンデムンの上に統一旗を掲げ
その瞬間、静寂がソウルを包む
不思議なほどに静まりかえりったソウル市内
北韓軍は先の戦闘で大打撃を受けたソンミンの通信に黒装部隊は侮ってはならないという言葉が抵抗していた残存部隊の戦意を失わせ
静寂から数分、青瓦台に白旗が上がる
『青瓦台に白旗が上がったぞ!!』と誰かが叫び
その声に歓声があちこちから上がる
作戦開始から2、3時間程度でソウル奪還は成し遂げられた。
「我が軍はソウルを奪還す!繰り返す、我が軍はソウルを奪還す!」
という報告が大邱司令部に通達され
山口参謀総長らは手を叩いて喜び
この奪還の知らせは、日本本国にも通達され
大田原統合幕僚長も参謀総長と同じように手を叩いて喜び
岸本総理に奪還の報が伝わり
官房長官より国民に向けて
ソウル奪還の報告が成された。
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ソウル奪還の知らせを受けたナユン、ツユ、サヤ達はカン大尉と祖国統一義勇軍と共にソウルへ向けて出発
一方、南韓軍司令のソンジェはソウルが日本に奪われたと発表
だが、この発言がかえってソンジェへの不信感を民衆に抱かせ
南韓軍からも、民衆からも祖国統一義勇軍へ合流する者が増え
また、ソウル奪還を成し遂げた日本の半島派遣軍への信頼感がウォンジュ虐殺事件がなかったかのように増え
日本出身のナインスのメンバー湊崎紗椰ことサヤも英雄視されることとなった。
この動きを受け、それまでソンジェの行動を黙認して来た南韓国大統領はソンジェを司令官から解任し、祖国統一義勇軍の司令官のカン大尉に南韓軍司令官につけようとしたが、自分は祖国統一義勇軍の司令官であることを理由にカン大尉は断り
代わりの司令官として、異例とも言える措置を南韓大統領はとり
日本の半島派遣軍の実質的指揮官にあたる山口喜久参謀総長に南韓軍の指揮を頼み
山口参謀総長は、自身は断り、代わりに月島零参謀次官を南韓軍の臨時の指揮官として派遣
月島は、南韓軍に祖国統一義勇軍との協力と派遣軍との連携を指示し指揮権を南韓大統領に返上し
自身は補佐する立場をとった。
この山口参謀総長や月島の行動も南韓側から称賛され
大邱、大田に日本人居留区画と南韓人居留区画を隔てていた鉄条網と監視台が撤去され
日韓相互協力協定を格上げし日韓同盟への流れが出来て行く。
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祖国統一義勇軍と共に、ナユン、ツユ、サヤはソウルに到着し
在りし日のソウルとはかけ離れ変わり果てたソウルの姿に涙を流し
この地で亡くなった他のナインスのメンバーの名を涙声で呼びながら
地面に、ペタンと座り込み泣き続ける
『みんな、ただいま。。。』
お帰りなさいという返事は聞こえない
だけど、ナユン、ツユ、サヤの心の中に居るメンバー達は笑って出迎えてくれてたはずだ。
『カン大尉、ソウルを貴官ら祖国統一義勇軍に返還する。』
『影平大佐、確かに受け取りました。』
『この地は貴官らの土地であり、今はこの有り様だが首都には違いない。しっかりと守ってくれよ。』
『はっ!影平大佐殿!』
「義勇軍諸君!我々はようやく首都ソウルへと帰ってこれた。それも半島派遣軍の力があってこそである!
半島派遣軍より返還された我が国の首都ソウルを我々は守り、そして半島派遣軍と共に北韓を打倒し、祖国統一を成し遂げ、民族分断の歴史に幕をおろさなければならない
祖国統一義勇軍よ、あと少しで、この戦争は終わるだろう
こののちは、派遣軍と共に越境作戦を開始する!諸君!共に行こうではないか!!」
カン大尉の激に空気が振動するかのように祖国統一義勇軍の兵士達の声が響き渡る
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『ナユン、ツユ、サヤ、泣いてばかりでどうする。泣いていたら、他のナインスのメンバーが悲しむぞ。』
『オッパ。。。』
『泣きたい時は泣いても良いけど、今は笑顔を見せてあげる時だと思う。』
『安莉さん。。。』
『いつもの元気はどこにいった?ナユン、ツユ、サヤ!忘れるな、お前達の中に居るメンバーのことを、その笑顔を忘れんな
お前達が笑顔で居れば、お前達の中に居るメンバーもいつも笑ってくれてるはずだ。』
『オッパァ~。』
そう言って三人は立ち上がり水澤に飛び付く
『痛いっての。』
『大田でも同じようなことがあったような?でも、今日だけは許してあげる。』と安莉はにこやかに言い
『いや、助けろよ。。』と水澤が言うと
『ん?何?聞こえない。』と安莉は悪戯っぽく言い
水澤はナユン、ツユ、サヤの頭を撫でながら
『まったく仕方ない妹共だ。』と苦笑いをした。
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ソウル奪還を成し遂げた派遣軍は祖国統一義勇軍にソウルを返還し、その返還式典がおごそかに行われている。
壇上にナユン、サヤ、ツユ達が立ち
『今日という日を迎えられたのは、オッパ達のおかげです
あの日、オッパに出会った日にオッパが言った言葉
北とか南とか関係なく同じ人間だと言う言葉が私達に新たな道を見せてくれました。
今は、まだ相反する者として対立している南韓国と北韓国が統一され、ひとつになった時
もう二度と同じようなことが繰り返されないようにオッパの言葉を伝え、その言葉の通りの半島に世界になるようにしていかなければならないと私達は思います。』
『オッパ、ソウルを取り戻してくれて本当にありがとう。』
『ソウル奪還を成し遂げたのは派遣軍だが、その派遣軍を支持し味方になってくれたナユン、ツユ、サヤ、カン大尉率いる祖国統一義勇軍のおかげだよ。』
『オッパ、派遣軍の皆さん、本当にどうもありがとうございました!』
『ナユン、ツユ、サヤ!両手を前に出してくれ。』と水澤が言うと
『水澤さんからの贈り物があるから早く。』と安莉が三人に両手出すように促す
三人は不思議そうな顔をしながらも水澤の前に両手を差し出す
『俺達は、この後すぐソウルを発ちピョンヤンへと向かう。
今はまだ不確かな未来かも知れない
だけど、ナユン、ツユ、サヤの手のひらの中に希望という名の未来を渡しておく。
しっかり握って、決して離すんじゃねぇぞ!そして、〝この戦争が終わったら、本当に光り輝く未来〟をナユン、ツユ、サヤ、そして〝半島に暮らす全ての人に渡すことを誓う!〟』と言ってナユン、ツユ、サヤの手のひらに自身の手のひらを重ねながら言い
『戦争が終わるまで大事に持ってなきゃダメだよ。』と安莉とまりあがナユン達に言い
ナユン、サヤ、ツユは頷き『大切にする。』と答えた。
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式典が終了しソウル奪還祝賀会が行われている
まるで戦争が終わったような騒ぎの祝賀会場から聞こえてくる歓声や笑い声を聞きながら
水澤は宴席を離れ、自身の座乗車である特殊戦闘装甲車の上に、あぐらをかいて座りながらタバコを吸っていた。
水澤の姿がないことに気づいたナユンは水澤を探し外へ出る
会場前に整然と並んでいる派遣軍の車列の方にナユンは歩いて行き
特殊戦闘装甲車の上に居る水澤を見つけ
『オッパ、何してるの?』
『ナユンか、会場の空気が肌に合わないから、外の空気を吸いに出て来ただけだよ。』
『タバコ吸ってても外の空気わかるの?』
『サヤや伊藤じゃないんだから、いちいち細かいことに突っ込むなよ。』
『わかった。』とナユンは言って一度会場に戻り
再び戻って来て自分も水澤の居る特殊戦闘装甲車のサイドにあるハシゴを使い水澤の隣に座って
『オッパ、どうぞ。』と言いグラスを渡し『マッコリ美味しいよ。』と言いグラスに注ぎ飲むように促す
水澤は半島に来てから、ずっとアルコールは避けて来たが、一杯ぐらいなら良いかと思い飲み干し
『戦場で飲む酒は、こんな味がするんだな。』
『こんな味?』
『すごく美味いってことさ。』
『美味しい良かった。』と言ってナユンもマッコリを飲み
水澤は『少し冷えるな。』と言い
ナユンと共に特殊戦闘装甲車内に乗りこみ
酒を酌み交わしながら、ナユンからナインスのことや、これまでの日々のこと等を聞き
ナユンは水澤に九州でのことを聞き水澤は九州でのことを話し
互いに話をしながら夜が過ぎて行く。
『ずっとこうして居られたら良いのに...。』とナユンは呟くように言った。
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一夜明け、北韓本国への侵攻を派遣軍と祖国統一義勇軍は開始する。
出撃前、水澤はナユン、ツユ、サヤに
『今一度約束し誓う〝 この戦争が終わったら、本当に光り輝く未来を必ずその手に渡す〟から待っていろ!』
ナユン、ツユ、サヤは大きく頷き
『オッパ!そして派遣の皆さん、祖国統一義勇軍のみんな、必ず勝って帰って来てね!』
『おおー!!』と祖国統一義勇軍兵士は答え
派遣軍主力部隊の指揮官の影平大佐は三人に敬礼し
『さあ行くぞ!派遣軍!!』と号令を出し
派遣軍と祖国統一義勇軍は北韓本国へと進軍を開始した。
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約束は果たされた約束だけが約束のうちに入る、果たされなかった約束は、ただの嘘でしかない。
そして、誓いもまた果たされた誓いだけが誓いのうちに入る
果たされなかった誓いは嘘になる。
この日、ナユン、ツユ。サヤらに誓った未来への誓いを果たす為、水澤達は戦争終結に向けて動き始め
未来を切り開く戦いに臨む水澤達の運命はどうなるのか?
命運をかけた最期の戦いが刻一刻と迫りつつあった。
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最終話 この汚れた世界に愛を注いで。 へと
ーーつづくーー
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