夢幻の森の試練5
だがそうなると別の疑問が浮かんでくる。
それを最初に口にしたのはミザリィだ。
「じゃぁ私たちの力が成長して・・・って、そうなるとあっちも同じ様に成長するから、それは違うか。」
しかしすぐに自分の考えを否定していた。
するとシェイラが別の可能性に気づいたようだ。
「他の要因となると・・・まさか・・・この子たちが成長しているからですか!」
シェイラは自分が手に持つ武器、パートナーを見ながらそう考えたのだが、ナタリィには更に気づいたことがあるようだ。
「それもある。
でも相手のパートナーも成長はしている。
だけど相手のパートナーは、私たちのパートナーの成長速度に追いついていない。」
「じゃぁこの子たちの成長が私たちを助けてくれているから、何とか踏みとどまることができてるってこと?」
「たぶん。」
「でも何で私たちと違ってこの子たちは違うんだろ?」
「それはわからない。
だけどそこに、この試練をクリアするための鍵があると思う。」
そこまで聞いたシェイラが、今回の試練に対して、ある考えに思い至った。
「なるほど・・・そうなると、はじめからこの試練は私たちがクリアできる内容であったと言えますね。」
しかしミザリィは、そのシェイラが言った言葉の意味がわからず、すぐに聞き返してきた。
「えっ?・・・でも今私たちは防戦一方だよ?」
「確かに今は私たちの方が押されています。
しかしこのまま私たちが成長すれば、この子たちも合わせて成長していきます。
そうなればいずれ互いの力が拮抗し、最終的にはこちらが上まるでしょう。
時間をかければ、いつか力が逆転します。
それまで我慢すればいいのです。」
「それが本当なら、シェイラの言う通り我慢比べに勝てばいいと思うけど・・・」
ミザリィもシェイラが何を言いたいのか気づいたようで、根本的な解決になっていないことに言葉を詰まらせていた。
「ミザリィも気づいたようですね。
そうです、今回そうはいきません。」
「そう、シェイラの言う通り、今の私たちには時間が無い。
私たちの目的は試練をクリアすること。
だから最終的には確実な方法を取る必要もある。
だけどまだその判断をするのは早計。」
「だったらどうするの?」
シェイラはわずかな時間でいろいろな考えを巡らせてみたが、結局は最初の考えに戻ってきた。
「・・・やはりこの子たちを次の段階、第3段階に進化させるしかありませんね。」
「私もそれしかないと思う。」
ナタリィもシェイラの考えに同意しているので、ミザリィは焦りから軽く考えてしまった。
「なら早く進化してもらおうよ!」
ようやく試練をクリアするために何をすればいいのかわかり、ミザリィは思わずこのようなことを口走ってしまったのだが、すぐに2人から問題点を指摘された。
「ミザリィ、忘れたのですか?」
「これまで私たちがいろいろ試しても、この子たちは進化しなかった。」
2人の言葉でミザリィは、これまでいろいろと試行錯誤してみたものの、結局自分たちのパートナーが第3段階に進化することは無かったことを思い出したようだ。
「あっ・・・どうしよう・・・」
途端に落ち込んでしまったミザリィであったが、シェイラには思いついたことがあるようだ。
「ただこうも考えられます。
これまでは訓練中に第3段階への進化を試みようとしましたが、それでは足りないものがある、ということではないでしょうか。」
「足りないもの?」
「それって何なの?」
「ハッキリとはわかりませんが、おそらくは危機感や必死な想いなどといった、本当に追い詰められて切羽詰まった状況になっていないからではないかと。
そしてそれを乗り越えようとする、諦めない強い意志が今の私たちには決定的に足りないのではないか、そう思います。
思い出してください、ティリアとサラ、2人のパートナーが進化したときのことを。」
「確かにあのときのままでは、打つ手がなかった。」
「正直追い詰められてたよね。」
「そうです。
ですがティリアとサラだけは、諦めずに立ち向かおうとしていました。
その強い想いに2人のパートナーが応えた結果、第3段階への進化が起こったのではないでしょうか。」
「なるほど。」
「そう言われてみればそんな気がする。」
「もちろんパートナーが第3段階へ進化しても問題無い実力を、そのときの2人が既に身につけていたというのもあります。
そして今の私たちは、少なくともあのときのティリアとサラの実力に引けを取るとは思えません。」
「当然。」
「うん。」
「となれば、今の私たちに足りないのは強い意志だけです。
ただこの子たちを進化させようとは考えない方がいいでしょう。」
「何で?」
「どういうこと?」
「この試練は私たちが乗り越えなければいけないからです。
ですから、この子たちを進化させて乗り越えよう、などというという甘い考えは捨てるべきです。
これまで通り、あくまで私たちの力で試練をクリアする、という気持ちで挑むべきだと考えます。」
「でもそれだと今と変わらない。」
「そうだよ。」
「状況が変わらないなら変えればいいのです。
そしてこの子たちが進化しないのであれば、私たちが進化すればいいのです。
それくらいの強い意志が無ければ、この現状を打破することなどできません。」
「つまりシェイラは、起きないなら無理矢理にでも叩き起こす、ということ?」
「ときには荒療治も必要です。」
「シェイラにしては過激だね。」
「そもそも自分を相手にあれこれ探り合いをしても埒があきません。
ならばここはシンプルに、正面からぶつかり合うのもいいのではないかと。」
「エミルやマリス辺りが好きそうな考え。」
「あー・・・あの2人、よく防御を考えずに正面からぶつかり合ってるもんね。」
「あれは極端な例です。
あそこまで後先考えないで戦いに挑んでしまっては、身体がいくつあっても持ちません。
それにあれはマコト様やイーリスが傍にいて回復してくれるからこそできることです。
今の私たちの目的は、試練をクリアすることなのですから、あの2人と同じことは考えないでくださいね。」
「わかってる。」
「もちろんだよ。」
「とにかくまずは、この防戦一方の状況を変え、攻撃に転じましょう。
そうでなければ何も変わりません。」
「了解。」
「じゃぁ、いっくよーっ!」
3人は精霊神たちの攻撃を防ぎつつも攻撃に転じる隙を窺い、逆転に向けての行動を開始したのだった。




