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異世界食事処 [和楽]  作者: 作者不明
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魔王の娘の大冒険


どこの親も


娘はかわいいようで




黒い空に二つの月。紫色の瘴気が立ちこめる黒い大地に聳え立つ居城。通常の人間ならば立ちいる事のできないその居城の中で二人の男女が話していた。



一人はフルフェイスの黒い鎧を着た男。もう一人は妖艶な美しさを持つ二本角の美女。二人は最近人間界で開発された[てれび]なる映像娯楽を見ながらふと考えた。娘を従兄妹の元へと向かわせようと………。実はこの二人は魔界を統べる魔王とその嫁であり………クロノス王国の先代王に嫁いだのは嫁の妹………つまり義兄弟となる。そして先代とは長く闘いあい最後は友情を結び親友もなったのだ。よって魔族と人間の交流は盛んになり混血児もまた増大。差別意識はまだ拭えないまでも昔ほどひどくはなくなってはいる。それでも奴隷を裏で調達するものには厳罰をしいては粛清をしているが………話はそれたがこの二人が見ているのは[はじめてのおつかい]というもっともポピュラーな番組であり幼い子供達がいる家庭であるならば見ないものはいないという番組だ。



「なあ、メサラ」

「なあに、ジョナサン」

隣の妻………メサラ=リヴァイアサンに夫である魔王………ジョナサン=リヴァイアサンが声をかける。


「俺の思考と同じ事を考えているよな」


「そうね」


「ミュラーもジーニアス達に会いたがってるし」

「そうね、あの子も五つだしそろそろ一人で遠出できないとね」


二人の夫婦はくすりと笑った。



「おや………今日は何かの日ですか?」

レイは王都クロノスの市場に買い出しに来ると異様な盛り上がりに気づき行きつけの肉屋の店主に声をかける。


「レイちゃんしらねえの?今日はジーニアス王の従兄妹………ミュラー=リヴァイアサン姫がお一人で来るのよ」

「………ああ、確か魔族の」

ジーニアスに散々聞かされた可愛らしい魔族の姫………ジークの母親の姉の子でジーニアス兄妹が眼にいれても痛くないと溺愛している少女。最近ルビーと開発したカメラと映写機を渡したら狂喜乱舞していたな。スマートフォンもいち早く使いこなしてるし………我が国の王は機械にも強いらしい。テレビの開発図もルビーにあげたらすぐに試作品を作り商品化してしまったな。ルビーの才覚には恐れ入る。馴染みの肉屋の親父と話しながら買い物を済ませ保存空間にしまい次の店へと向かう。



「………嬢ちゃんなにしてんの?」



ミサトはたまたま王都に服を買いに商店街に来ると紫の肌の二本角の可愛らしい黒のドレスを着た少女に声をかけた。普段ならば少女に気をとめないのだが………王都にくれば魔族なんてざらにいるし………ただ少女の行動が余りにも気になったからだ。


「………蟻可愛い………ちっちゃい」


「………そうな、小さいな」


無表情に蟻の行列を見ながら少女は呟く。ミサトは余りのシュールな図柄になんとなく脱力して隣に座り込む。


「ここ、商店街の道だから他の人の邪魔になるからどっかいこうな」

「それは大変」

「良い子だ」

ミサトはにこやかに笑うと少女の手元にある紙を見ると質問を投げかける。


「おつかい?」


「そう………叔父様に会う前にパパとママのおつかい済ませるの」


「………見せてもらっていいか?」


「………うん」


「メイナードの店のプリン、これすぐそこだな………姉ちゃんと行くか」

「知らない人………じゃないからいいか」

「………ミサト………シーランドで女医してる、これでOKだろ」

「ミュラー=リヴァイアサン………おつかいしてる」

「よくできました」


そう言うと二人は連れ立って歩きだす。



「お嬢様!!じいは嬉しゅうございますぞ!!あそこまで御立派におつかいするとは!!」


物影に隠れた一人の老紳士が涙ながらにそっと見守っていると肩をトントンと叩かれ後ろを振り向くと憲兵が一人にこやかに笑っていた。


「幼女を怪しく見ていたのってお爺さん?」


「私は怪しくなぞありませぬ!!」


「皆最初は言うんだよね………調書取ろうか」


老人の叫び声が商店街に木霊する。


「先ほど怪しげなお爺さんがいましたがまあ通報していたので大丈夫でしょう」


レイは買い物を済ませ王都を散策しながらそう呟くとふむと頷きとある店へと足を向かわせた。友人の経営するスイーツ店だ。レイはどちらかというと東国の菓子の方が得意なのでよく足を運んではお互いの菓子の情報交換や試作をしている。和楽のスイーツはその友人との共同作が多い。友人の名前はメイナード=マリンド………水帝である。


「やあメイナード………今日は開店しているにしては人が少ないね」


「やあレイ………もうおやつ時も過ぎたからね」


にこやかな青い髪の優男風の美男子が応対してくれる。レイはいつもの軽口に肩を竦め手土産の自分で作ったラスクを渡す。


「レイのラスクはおいしいから嬉しいね………新作のプリンもできたから後で出そうか」


「それは嬉しい事だね………それより驚きのお客がいるみたいだな」


「そうだね………ミュラー姫と君の妹ちゃんだよ」


「それは珍しい取り組だ」


レイはにこやかにそう言うとミサトとミュラーに合流し、食事の出来るスペースに移動した。メイナードも新作のプリン………和菓子のあんこベースのプリンを出してくれたがさっぱりとした甘さで実によかった。レイもレシピを教えてもらい和楽でも作る事に決め、ミュラーの話を聞いたり、憲兵に捕まって釈放されたミュラーのじいやを引き連れたジーニアス兄妹を交えてお茶をした。たまにはこういうものもいいものだとレイは感じた。



「ミュラーちゃんは偉いな、ちゃんとおつかいもできる」


「………」


ミュラーは照れながら頭をかくとジーニアス達は感極まって撫でる。しかし今回はジーニアス達のセリフが全くないんだがそれはどうなのだろうか。まあ実に幸せそうだからいいか。それはそれで無事にミュラーのおつかいはなされて帰宅していった。じいやは無断でミュラーを見にいってたらしく減給されたらしい。過保護もほどほどにしないといけないようだ。ミサトはなんだかんだミュラーと仲良くなったらしく時折王都でメイナードのプリンを食べる姿が目撃されている。ちなみにミュラーが来る時ににぎやかだったのは先代がミュラーのおつかい記念といってお祭りにしたかららしい。


姪馬鹿もここまできたら尊敬に値する。



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