女医ミサト
命の価値のわからぬ下衆は
拳でわからせるまで
どーもミサトです、兄と共々地球で死んでこの世界に転生してきました。
まあまわりには言ってないけどね、こんなの信じられるかどうかわからないし、寧ろ最強スペックに神様以上の力なんて言う能力を与えられて実にびっくりな第二の人生を送ってるわけよ、まあ魔法とか魔術とかなかなか見せる機会もないし使う機会もないけど、一応きちんと修行はしてますよ、ええ。
最初は兄の店を手伝ってたけど、料理とかそこらへんは兄の管轄だとわかり、治癒術式の方が私にはあっているなーとわかり医者不足らしかったのでとりあえず女医になる。こちらでは免許とか必要ないのねー、実技と知識だけしっかりすればなんとかなる。一応神様知識はあるけどきちんと本とかは読んで勉強はしている、なかなか同僚とも仲良く過ごしてるし我ながら良い異世界生活だわ。
シーランド町立病院
ミサトの診療室
「………今日は暇ね、ミサト」
目の前のナース服を身に纏う緋色のロングヘアーの美女がミサトに声をかける。
彼女の名前はリサ=ヘイミング………ミサトが女医として勤めはじめてから意気投合をし、友人となった職場の同僚である。ちなみにミサトと同程度の胸の大きさを誇りお互いEという数値を叩きだしており、けしからん二人組として病院では有名である。
「医者が暇なのはいいことさ、命に危険がないという事」
「それもそうねえ………まあ兄君が店持ってたらまあ妹は安心かしら?」
「どうだかねえ………まあ私は良い男でもいたらひっかけて所帯でも持ちたいとこだね」
「あら、患者さんなくわよ?」
「はは、しばらくは私のようなもの好きを嫁にする奴はいないだろ」
「貴女、鏡みたほうがいいわよ」
リサはクスクスと笑う。
「………暇は無くなったようだね」
ミサトは立ち上がる。
「そうね」
急に慌ただしくなる病院内を見るとリサとミサトは立ち上がる。
「ゼファーか」
「ミサトか」
急患についてきた顔見しりのゼファーを見ると
「要重度は?」
「50人ほど、蘇生措置はすでにすませてある」
「軽度は他の医者にまわしてくれ、重度は私が見る」
「了解した」
ゼファーとミサトはすぐに処置室に患者達を連れていく。
「新型の毒のようだな」
ミサトの問いにゼファーは声を返す。
「ああ、表面から火傷を起こし内臓も焼く新種の毒だ」
「処置は?」
ミサトは水と風の複合術式で体の細胞の活性を促しながら問いかける。
「一度細胞を壊死させた後、復元の術式をかけ毒素そのものを破壊した………だがこれでは回復に少し時間がかかる、臓腑も同じ手順だ」
ゼファーの言葉にミサトは頷くと
「では切開手術に切り替え毒素そのものを破壊する術式へ変えよう、この毒は闇属性に属するもののようだ、直接光属性と治癒属性の複合術をかける」
「………了解した」
「それからリサ、レイに体力のつく食事を用意させてこの患者はどうやら敗残兵みたいだ、事情を聞くにしても体力回復と治癒が先だ」
「了解したわ」
そういうとリサは頷いて手術室を後にした。
「………やれやれ、買い出しに来てみたら何なんでしょうかね」
中央広場で黒いマスクをつけた怪しい人間をレイはふみつけている。
「………うちの可愛い妹と妹の友人に何の用でしょうか?」
「………」
気絶している黒マスクを思い切り蹴り飛ばして兵士の詰め所へと吹き飛ばすと
「………まあエアリスは特別ですからね、わからなくはありませんが、兄としては許せません」
「………レイさん、なんかきな臭いぜ」
「そうだね、ジーク君」
レイは周りを見渡す。
「………ジーク君、モコモコとエアリスを家に連れて行ってもらえるかな?」
「………了解す」
そう言うとその場にいた二人と一匹は走り去っていった。
「………料理人にしてランクオーバー………人造生命体エアリスの現在の保護者………王族………複数の帝とも親交が深い………表沙汰になることはなく謎の人物として各国からマークされている」
黒いローブを纏った仮面の男がレイに声をかける。
「ふむ、犯罪組織[武龍:]の諜報部隊[闇]か」
「………最重要抹殺対象確定!!」
「………料理人というのは悪党を捌くのも得意なんですよ?」
レイは冷ややかに微笑む。
「………(分が悪いな、この男すきがない上に戦闘能力は未知数………魔術を使用する形跡も魔法を使う形跡も記録上にはない………となると固有能力の線が濃厚)」
「思考していてよいんですか?」
レイはにこりと笑うと同時に手に脈打つ[何か]が現れた。
「!!!!!????」
黒いローブの男は叫び声も出せずにそのまま倒れた。
「………余り凄惨な場面は街の人や妹達には見せたくないですからね」
包丁を空間にしまうと同時に手をかざし死体を[消失]させた。
「………ふむ、やはり雑魚か………余り情報はないか」
「………見たことのない術ねえ」
「美人さんでも種は明かせませんよ」
レイはにこりと紫色の髪のどこか幼さの感じる可愛らしい女性に声をかけた。
胸元を露出させた豊満な胸とスタイルの良さはガイあたりが喜びそうだ。
「………御兄さん好みだから大人しくしてもらえるとうれしいわね」
「見たところそちらの組織の幹部とお見受けしても?」
「そうね………まあ一応首領かしらね」
「おや、ボス自ら」
「そうね………部下だけを戦地にって性に合わないのよ」
「ふむ、狙いは妹ですか?」
「そうね、科学文明の黄金期後期に造り出されたナノマシン群体殲滅型超兵器[EARIS]………彼女には計り知れない価値があるのよ」
レイはふむと頷くと
「残念ながら義理とはいえ家族なのでそう簡単には渡せませんね」
「………そっならいいわ………私は帰るし」
「おや、部下はもういいのですか?」
「いいわ、そいつ規約違反と組織から抜け出して好き勝手暴れ出そうとしてたんだもの………うちは真性の悪じゃないつもりだし………ああー組織改めて再編しないとだめかしらね、どう………貴方?」
「………まあ真性の悪ではないのは薄々感じられましたが御断りしますよ………ええと」
「ミモザよ………ミモザ=スナイプス………一応世界の脅威となる奴しか殺さないわよ………まあ結構ルールに触れたり闇ギルドとか闇世界にいるから結構大変な組織になってるけどねー」
ミモザはそういうと白い小瓶をレイに投げる。
「今の新種の毒はうちのバカが造り出したの………持ち出す前にワクチンは作成したからそれを飲ませれば平気よ、王都の方へは話はつけてあるわ」
ミモザはそう言って笑うとウインクする。
「今度は個人的に会いたいわね、[黒の料理人]」
「お客ならば歓迎ですよ」
「そうね、貴女の妹はこっちで保護する名目もあったんだけど必要ないみたいだし、貴方の名前は?」
「レイですよ」
「貴方と貴方の周りにいる人達には手出しさせないようにしておくわ、まあそれでもする奴は倒していいから、それと亡くなった人達への修繕費やケア費はこちらからするわ………ではまたね、レイ」
「ええ」
ミモザはそう言うと転移した。
「武龍か………あそこは比較的穏やかな組織のはずだが………まあ犯罪組織だけあって粗はあるか」
ワクチンを受け取りながらゼファーはふむと頷く。
「一応治療はひと段落したことだし、成分からしても問題はない………効用も実証されたし………後は数を増やすだけだ………」
今回の毒感染で死亡したのは推定500人………要重度が50人………重度が45人………軽度が200人………小さな港町にしては大規模なハザード事件となった。またエアリスの情報は機密扱いで本来ならば情報が渡る事はないはずなのだが武龍の構成員にどこで流れていたのか調査すると共にジーニアスはこの事件の事は他言無用とする厳命を出し、迅速な指示でこの事件を終息へと向かわせた。
ミサトとレイであれば蘇生術や調剤も一瞬の内には出来るが二人の決めごととして蘇生や周りのできる事であれば極力自分達の能力は使わないと決めていた。それは基本的に自分達の持ちうる力は過ぎた力ときちんと考えているからだ。
容易く命を蘇生できるならば命の価値観は狂ってしまうし………あらゆる怪我や病を治す薬が出来れば命は金よりも軽くなるだろう………。勿論絶えず過ぎた力を扱う修行はしてはいるが………自分達や周りの強い心を持つ者であれば問題ではないが民衆や世間には無用な争いを産み出すきっかけにしかならないと考えている。
勿論人の出来る範囲で出来る事はやるが神如き力はなるべく使わないようにして、ミサトとレイはそれぞれの生きる道で生きている。
まあそれはさておき………レイは本来の仕事に戻る事にした。レイは転生した時点で………ヒトを活かす道に進むと決めていた。料理はまさしくその道として最適解とも言えるだろう。料理によって様々な人の力となり喜びとなる。レイとミサトは転生前はある暗殺組織に身を置いていた。
映画のようなチープな人生を二人でなぞるように生きていたのだ。二人のファミリーネームがないのは孤児だからだ。日系と名前と年齢以外はわからず幼い時にある組織に拾われ無手の技と銃技や刀技を教わりそのまま殺し屋となり………名も知られぬまま闇の中で二人は死んだ。それがいまや神の気まぐれで第二の命を生きている。今まで殺した運命に対して謝りはするものの………相手もなかなかの悪党だったので割り切る事にした。殺す技術を持つが故に生きる事の大事さもまた知っている。ミサトも似たような気持ちで医者となったのだろう。
自らに贖罪を科す事はしないまでも自分達は自分達で目の前の出来る幸せを護る事にした。勿論二人の地球での普通じゃない日常もまた彼らの楽観的な何かを助長しているのではあろうが。
まあそれはともかくレイは鍋を作る事にした。材料はキノコや魚に豚肉に野菜………地球産は手に入れる事は出来るがこちらの世界の住人ならばこちらの世界の食材が適していると判断したので体力回復と滋養強壮に効能がある食材を中心に煮る事にした。味はさっぱりめの塩風味の鍋。胃腸もやられている患者もいるので全体的に薄味にして柔らかくなるまで煮込む事にした。
「………これ王室御用達のキンググリードじゃないか?」
「ええ、強欲そうな王室でしか食べれないような最高品質のキノコです」
レイはにこりとゼファーに微笑み返す。
「………こちらは死ぬまで生き続ける死活鯛」
「ええ、死人すら生き返ると言われる滋養効果がありますね」
「………肉はドラゴンすら捕食する覇王豚の肉」
「瀕死状態でも一晩寝たら全快効果の希少種ですね」
「………他の食材も………白金貨1000枚は飛ぶな」
「命が救えるならば安いものです」
「………さすがはレイだな………後にも先にも私財を投入して活かす料理を作る奴は見たことがない」
ゼファーはやれやれと肩を竦める。
「………さーて、リサ終り」
「おつかれ………ミサト」
ミサトは手術着を脱いでそのまま手術室の前に座る。
「レイ君の発案した手術着凄いわよね………浄化の術式と回帰の術式を刻んで常に清潔保全をしてるんだもの、メスやナイフも同じように」
「あー私は術式関連は知識でしかないけどそれを作成するとなると相当な金と労力がかかるみたいね」
「それを無償にとかどんだけ出来てるのかしらね………貴女のお兄さん」
「まあ基本的に優しいんでしょ………野暮用あるから、後お願いね」
「りょーかい」
ミサトはそう言うとその場から姿を消した。
「ちょっとおいたが過ぎたわね」
黒いローブの男を蹴とばして倒れ伏すと
「まあレイから念話で聞いてるけれど組織から造反して一から何かをするつもりだったのかしら?妹と街を狙ったのはあれだったわね」
ミサトはにこりと笑うと
「拳で反省なさい」
極大の一撃が男へと見舞われ同時刻同じような風体の男達が弾き飛ばされた。




